![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/96626011/rectangle_large_type_2_79c82475ab027747f8be6cc22d058f4d.jpg?width=800)
大増殖天使のキス
スポーツをしていると、特定のプレーに関して、突然「何かを掴んだ」瞬間が訪れる。
私たちはそれを「天使のキス」と呼ぶ。天使のキスをものにできた選手は大きく成長できる。
春高バレーの府予選で初戦敗退した私達は失意の中練習していた。
初戦敗退したのにも関わらず今までと同じような練習。改善は見られない。
来年も再来年も初戦で負けるのだろうな、と憂鬱な気持ちで練習に参加していた。
しかし、そんな私の気持ちとは裏腹に体は良く動いた。
苦手なストレートスパイクが面白いように決まる。二段トスは百発百中で、サーブもいつもより格段に落ちた。
偶然かと思い何度も試してみたが、その度に上手くいった。
これは天使のキスだ。天使のキスが私の元へ来たのだ。しかもこんなにたくさん!
高揚した気持ちを抑えきれず何度もスパイクを打った。休憩もせずにサーブを打った。
本選出場も夢じゃない。本気でそう思った。
現実というものは非情なもので、寝て起きたらすべて忘れていた。天使は気まぐれなのだろう、二度と私の元へは来なかった。(437字)
田原にかさん主催の「毎週ショートショートnote」に参加させていただきました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?