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山あり谷あり茗荷谷




1月某日。写真仲間のつぶやきで展示会の情報を知った。



上白石萌歌さんの写真展。
「かぜとわたしはうつろう」

スポンサードはKodakで、フィルム写真の展示であるらしい。

特設サイトにはこんな言葉が綴られていた。

風が吹くと 分厚い雲も 一瞬にして過ぎ去る。
わたしたちの 心のなかの景色も あっけなくうつろう。

そんな刹那的な気持ちの ひとつひとつを 大切に拾い集めた。
フィルムにしかできない ”焼き付ける”を信じて。

上白石萌歌

「かぜとわたしはうつろう」特設サイトより引用




この言葉の先に、どんな表現が待っているのだろうと期待が膨らむ。


会期は今日を含めてあと3日。
開場時間は18時までで、退勤後には間に合わない。

しかし会場の住所を見ると、職場から行けそうな距離だった。

早速Googleマップを開き、道程を確認。
昼休みに行って帰ってこれそうだと判断し、行くことに決めた。
その思考時間約5分の出来事である。






展示は生ものである。とつくづく感じている。

写真展については、グループ展に参加したことがある。

展示には、会場選びから写真の選定、額装や展示の並びの検討、集客のための広報活動、設営、そして当日の在郎から撤収まで......
展示を開催するに至るまでには、一人だったら面倒だと降参してしまいそうになるくらい、やることがたくさんある。
そして当たり前にお金もかかる。


そんな大波小波を経て、展示ができていることを知った。
私の場合、当たり前のことでも、経験しないと、なかなかに実感できなかった。


そんな荒波を超えて、表現したい人たちの思いを見れるのが展示である。すごいことだ。愛と情熱がなければ決してできないことだと思う。

なのでそれ以降、行きたいと心が動いた先には行ける範囲で足を運びたいと思っている。



さて、12時になり会社の折り畳み自転車を借りて出発する。

首からは相棒のX-S10をぶらさげて。

新宿区と文京区の堺目、江戸川橋から茗荷谷に向かう。
Googleマップのルートがなぜか大回りで、より近道できそうな道を進んでみたら地図には見えない果てしない坂が続いていた。

ようやくそこで、Googleマップは、坂の緩やかな道を示していてくれたのかもしれなかったことに気が付いた。

これがおすすめされた自転車ルート
ナビを無視して選んだルート



遠回りすれば避けられるかもしれなかったが、地下鉄や電車での移動では感じることのできなかった東京のでこぼこを立体的に感じれたのがちょっと嬉しくて、そのまま坂道を登りきると、きもちのいい下り坂が続き、丸の内線の高架下を潜る。

下り坂を下りながら見えた景色が良くて、片手でシャッターを切った。



昼休みでにぎわう茗荷谷駅周辺を通り過ぎ、無事に会場へ到着。


会場は入場待ちの列ができていた。
さっき入ったんですけど...と言いもう一度並ぶお客さんもいた。

階段を上り中に入ると、大きな写真が飾られていた。

写真とともに、伊藤紺さんの(短歌)も大きく展示されている
写真と同じ質量で、「ことば」が並んでいるのが良かった。

野口花梨の写真に写る萌歌さんと八木莉可子さんの愉しそうな写真や、うつくしい表情の数々は
表現を生業としているからなのか、そもそも上手だから俳優になったのか
素敵なものばかりだった。

萌歌さんが撮った写真=本人が映っていない写真なのか?そこが分からず
ただただ三人に流れるあたたかい空気や、湿度を感じていた。




湿度と言えば、
展示されている写真の撮影日は雨が降っていたようだった。

雨でも、室内でもフラッシュを焚かずに綺麗に撮れるんだったな、と
失敗することを恐れて晴れている日ばかり写真にとっていた自分には新鮮だった


展示数はあまりなく、もっともっと展示写真を見たかったけど、
ZINEが販売されていたので、お土産に購入した。



ZINEもまた、リズムがよく、じっくり写真と向き合うことができた。
ざらりとした手触りと、糸綴じ製本のあたたかさ。

素敵なお顔だな、可愛いな。きれいだな。
しあわせな時間だったんだな。
うつくしい人を見ることで得られる養分があるなと思った。




会社への帰り道、坂道だらけの道中をほくほくの気持ちで進んだ。

勢いでいったお土産にいろんなものを持ち帰れた日だった。





写真について学び始めてまもなく3年になる。
その学びをひとつひとつ実践できているかというと、首肯はできないかもしれない。

展示をするような写真を撮れてもいないし、
たくさんの知らない人に自分の世界を開いていく喜びについてはまだあまり関心がない自分がいる。
(人のを見るのは好きだ)

でも、それだけが写真のたのしみではないことも知っている。


あまり自分に期待せずに、
カメラとともにこれからも日々を綴っていこう。

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