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刃物専門編集者の憂鬱 その17「レポート:オールニッポンナイフショー2024 編」


こんにちは。「編集者&ライターときどき作家」の服部夏生と申します。
肩書きそのままに、いろいろな仕事をさせていただいているのですが、ちょっと珍しい「刃物専門編集者」としての日々を、あれこれ書いていこうと思います。

国内有数の規模のショーです

 3月2日、3日に開催されたのに、ここでご紹介するまで、ずいぶん間が空いてしまった。申し訳ない。
オールニッポンナイフショーは、国内でも有数の規模を誇るナイフショー。
 毎年3月に神戸で開催されており、近年は「KIITOホール」で開催されている。
 このKIITOホール、神戸・三宮の海側にある旧生糸検査所を改修した、デザイン都市・神戸の拠点施設である「デザイン・クリエイティブセンター神戸」内の施設であり、外観も内観も実に洒落ている。

神戸の中心地、三宮からもほど近いところにあります

 ホールは天井が高いことも相まって、開放感があるので、長時間いてもストレスを感じないところがすごく、いいのである。

生糸検査所をリノベーションした会場は、開放感があって居心地がいい

 ありがたいことにお声がけいただいて、前回からこのショーにホビージャパンの看板でブースを出させていただいている。

ご連絡が遅くなってご迷惑おかけしていますが、今年も何冊か出版する予定です

 今回も本を販売させていただいている合間を縫って、ブースを回らさせていただいた。どなたの作品も素晴らしかったが、あまりの数と各ブースの充実ぶりで、全てを回ってご紹介することはできなかった。
 興味を持った方は、ぜひ、現地で見学していただきたい。

お話を伺った順にご紹介していきます

佐治打刃物  越前武生そして日本を代表する鍛造ナイフ作家、佐治武士さん(右から二人目)と野村和生さん(右端)を中心に国内外で高く評価を受ける刃物工房。今回も速攻、売り切れ!!


上田康正さん 三木カスタムナイフギルドの一員としても活動するナイフ作家。昨年はお隣で何かとお世話になりました。

素材のユニークさを活かした作品。端正なデザインだから素材の特徴も際立つ


市川志郎さん(I川商店) 進境著しいナイフ作家。人気も急上昇中の注目株で、今回も多くの人たちが彼のブースを囲んでいた。

ハンティングでの経験を活かしたモデルの数々はデザインと機能が高いレベルで共存する


永尾かね駒製作所 兵庫県三木市で肥後守(ひごのかみ)を作り続けている唯一の工房。近年は海外からの注目も増えている。

シンプルかつ使いやすい肥後守の特徴を活かしつつ、時代に合わせたモデルも積極的に発表


真坂洋之さん(SDT-WORKS) 人気作家はアクセサリー中心に展開。2日間とも来場者たちからの注目を集めていた。

小型アクセサリーの長所を活かした独創的なデザインと装飾。性別や年齢を問わず楽しめる


毛利沙羅さん(右)舞音さん(Pagos Craft) 鍛造刃物や小物、ハンドメイドジュエリーを制作している工房も参加した。

沙羅さんは鍛造刃物を自作する。洗練されたデザインは使いやすさも兼ね備える


近藤周平さん(24季 Stabilized Wood Works) 木材に樹脂を含浸させたスタビライズドウッドを制作する工房として人気急上昇中!!

加工すると唯一無二の模様が出てくる。ハンドル材として人気。材を使った万年筆なども好評だ


石崎祐也さん(ISZ KNIVES) 使いやすさを追求したナイフを作りだす新進作家のひとり。理想の1本を追求する姿勢が好印象。

素材も使い分けている。用途や好み、人の数だけ理想のナイフがあることを実感させる作品


古藤好視さん フリクションフォールダーの名手。人気で入手困難な作家だが、ショーではスペシャルモデルが登場することも。

ブラックパールをハンドルにあしらったモデル。シルエットなどのバリエーションも多い


開始直後のKIKU KNIVESブース。大人気
ベストナイフ in ショーのコンテストで選ばれた作品の作者たち。左から西川徹さん、藤原弘登さん、九鬼隆一さん(最優秀賞)、本間通旦さん、永井伸廣さん。おめでとうございます。


2日目も盛況でした

澤口 勉さん ナイフにとどまらず、ペンなどの小物類も手がける作家。各地のクラフトショーなどにも積極的に参加しているそう。

アーリーアメリカンの雰囲気に和のテイストも感じられる。独自性の高い作品が人気だ


市川雷也さん メーカーに勤めながらオリジナルのナイフ作りもしている。ディテールにも気を配った作品は、幅広い層に支持される。

破綻のないラインで構成されたモデル、汎用性の高さで、さまざまな場面で愛用できそうな1本


鳩野憲志朗さん(右:鳩の刃物工房堀江徳至さん(堀江漆工) 越前武生の打刃物職人・鳩野さんと漆製品を手がける堀江さん。コラボ作品も展示していた。

「五盟進」のコラボ包丁。越前打刃物ならではの品質の良さと鯖江市の漆工の伝統技術が融合。注目ブランドだ


左が三泉株式会社社長のPENG HENGHUI(ホウ コウキ)さん 、中が副社長GENG JIXING(コウ イセン)さん。右は王さん。

王涵(Wang Han)さん(右)と三泉株式会社 各地のナイフショーに精力的に参加する王さん。今回はアクセサリーなどを意欲的に扱う三泉株式会社も出展。

ナイフをはじめとする芸術的な作品が話題を呼ぶ王さん。ショーごとにコンセプトの異なる意欲作を展示することでも知られる
三泉株式会社も独創性の高いアクセ類で注目を集めた


西田大祐さん(西田刃物 熊本県南関町に工房を構える鍛冶、西田さん。伝統的な鍛冶の製法を学び独立。確かな技術をベースにした刃物で知られる作家だ。

日本の伝統的な「本割込」で作られたナイフや包丁は丈夫かつ汎用性が高い


「神戸のミリタリー&ナイフショップでガン雑誌などの通販でもおなじみです。オールニッポンナイフショーのチラシも店舗で配布していただいています」と運営の雅刀さんも推しのお店だ。

イカリヤ 1956年から営業を続けてきた神戸のナイフショップも参加!! 代表の中川真備さん(右)自らブースに立つ。神戸の繁華街にある元町店(中央区元町通4-1-1)には貴重なモデルも数多く揃う。神戸を訪れた際は足を運んでみたい。


黒澤次夫さん 魚を昆虫をはじめとする「生き物」をモチーフにした作品で国内外で高く評価されているベテランの作家。

根付を連想させるデザインとアイデアをナイフに組み込み独自の世界を作り出している


堀居賢司さん 京都ナイフショーの主催としてもすっかりお馴染みになった堀居さん。漆芸家としての顔を持ち作風も幅広い。

チタンの独特の雰囲気をクラシカルなフォールダーに融合させた意欲作(中央)が目を引いた


広島県の「仁方やすり」のメーカー・ワタオカさんも出展。手仕事で目を切ったモデルも置かれていた。仁方のやすりに携わる方にお話を伺えるのは、とても貴重。個人的にものすごく盛り上がりました。


片山雄太さん(片山打刃物) 越前打刃物の担い手として包丁などを手がけながら、アーティスティックな作品も手がける作家。

デザインは大きく異なるが、いずれも手のひらへの収まり方がよく考えられている


秋友祥造さん(左:秋友義彦鍛造所)RED ORCAのブランドでも知られる土佐の打刃物工房も参加。美しい刃物の数々が人気を呼んでいた。

美しい刃文が浮かぶ包丁。柄の素材選びも相まって持つ楽しみも味わえる逸品となっている


靍田雅彦さん アメリカンスタイルのシースナイフを中心に印象的な作品を生み出している作家も参加。迫力ある作品が注目を集めた。

ボウイナイフの数々は握りやすく、手の感触も心地よい。ぜひ実物を手にしてもらいたい


本間通旦さん 今回のコンテストで優秀賞を受賞したベテランのナイフ作家。その端正な作品は、ベテランならではの円熟と瑞々しさが共存している。まさにマスターピース。


上村健太郎さん(上村鍛造所) 土佐打刃物の伝統を引き継ぐ鍛冶。RED ORCAとのコラボ作も手がけるなど現代に即した作品づくりにも取り組む。

「炎(HOMURA)」ブランドで意欲的かつ実用性にも優れたアウトドアナイフを手がける


松田菊男さん(KIKU KNIVES) 毎回、長蛇の列ができる人気作家、さん(左)。ご子息の昌之さん(右)と山下刃物店の山下善啓さんと一緒に。

菊さんのモデルはもとより、昌之さんのオリジナルモデル(上)の数々も大人気だった


寺田忠生さん(アトリエトマス) 刃物の街、岐阜県関市で打刃物からステンレスの刃物まで手がけるファクトリー。オリジナルモデルも多い。

日常生活からキャンプなどにまで汎用性の高いモデル。ハンドルを外して洗えるのも嬉しい


九鬼隆一さん 独創的なアイデアとそれを具現化するテクニックで、多くの人たちを魅了する作家。今回もショーのコンテストで最優秀賞を受賞!!

ハンドルがトルソーになっているナイフ。アートとしての美しさにユーモアが加わった作品


2日間のショーの最後には会場で寄付を募った年初の能登半島地震への義援金が、輪島市在住の田崎淳さんに渡された


おわりに

 1日で回り切るのはちょっと大変なくらい大勢の出展者。しかも他ではなかなかお会いできない方もいらっしゃる上に、どなたのクオリティも高い。会場が神戸の市街地にあることも相まって、2日間とも大勢の来場者で賑わった。
 何年もかけて、ここまでの規模に育ててきた三木カスタムナイフギルドの皆さんのご尽力には、頭が下がるばかりである。

 2025年は、3月1日(土)の1日だけ、三宮駅からも歩いて行ける「神戸サンボーホール」(神戸市中央区浜辺通 5-1-32)で開催の予定とのこと。
 出展、観覧、気になっている方は、ぜひホームページなどで情報をチェックしていただきたい。

 このショーの模様は、毎年恒例の『ナイフダイジェスト(仮題)』でも紹介させていただく予定である。詳細が決まり次第、ご連絡させていただきたい。

 そして『番外編』では、このショーの運営に力を注いできた雅刀さんの工房を訪ねたレポートをご紹介したい。


空いた時間で神戸の住宅街にある野球場を見学してきました


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