東京封鎖ルポ

※この記事は、新型コロナウイルスの蔓延によりイタリア等で取られている強制力を持つ外出規制が行われた場合の東京を想定した「フィクション」です。


令和二年四月●日。

予てから自粛要請が出されている東京・新宿は人が疎らであった。

徐にTwitterを開き、トレンドを眺めると「感染者数500人超」の文字があった。東京都内のみの感染者数である。きっと三連休中の感染者が出てきたのであろう。

そんな時、アルタのテレビが都知事の緊急会見に切り替わった。もはや会見も日常茶飯事になり、どうせまた「『三つの密』を回避せよ」とでも言うのだろうと思っていた。しかし、どうも今日はいつもと違うらしい。

「えー、新型コロナウイルスの感染者は都内だけで587人となりました。単刀直入に申し上げますと、最早自粛要請だけでは感染者数の増加を止めることは不可能です。この後、総理から記者会見があるかと思いますが、23区のロックダウン、都市封鎖を実施致します。」

【都市封鎖】というフリップを掲げ、フラッシュが焚かれている映像が流れ、周囲がざわつく。

新宿駅東口のみどりの窓口には多くの人が並び、松本行きの「あずさ」や甲府行きの「かいじ」の切符を買い求め、都心から逃げようとしていた。改札には多くの人が押し寄せ、怒号が飛び交っていた。

人がめっきり少なくなった京王線に乗り、自宅へ戻りテレビをつけると、丁度総理の会見が始まったところであった。

「特措法を近いうちに再改正し、23区への出入りを実質的に禁止、必要最低限の施設以外の営業を同じく禁止致します。」

当初、命令ではなく要請と言っていたにも関わらず、結局こうなるのか。

スーパーには長蛇の列、米もパンも冷凍食品も何もかもが売り切れてしまっている。まるでニュースで見ていたイタリアのようである。


2日後。

首都高速道路は全面封鎖、鉄道路線は23区まで入ることができず、各線は市部の駅止まりか運転見合せ。山手線や東京メトロ・都営地下鉄各線は全て運転見合せとなった。国道や都道では検問が実施され、人々を追い返していた。

NHKは特番等を中止し、全て大阪局からの特別報道に切り替えられ、延々と都知事・総理大臣の会見を繰り返し流していた。NHK・民放でも最早テレビで都内の映像が流れることもない。そもそも撮る人が居ないのである。

いつも通りの生活に戻るにはいつになるのか。二週間前の自分たちに言いたい、「家から出るな」と。

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