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【臨床心理士監修】カウンセリングの上手な活用法

1. カウンセリングとは


カウンセリングと聞くと、何か精神的な病気になった際に行われる治療法を思い浮かべる方が多いかもしれません。カウンセリングとは、「専門の訓練を受けた専門家(日本の場合は臨床心理士など)が援助の必要がある人(クライアント)に対して、問題解決を支援すること心理的な問題や悩みについての原因追及とそれを除去するための援助を行うこと」ですから、実はもっと身近なモノなのです。なんとなくハードルが高いと思われることの多い、カウンセリングの実情とその効用をご紹介します。

どういう時に行うものなのか
カウンセリングの導入は、医療・保健分野だけでなく、教育分野や福祉分野、司法分野、さらには労働分野と多岐にわたります。労働分野に注目すると、企業内相談室、企業内健康管理センター、地域産業保健センター、公立職業安定所(ハローワーク)、障害者職業センターなどで行われます。このような企業内あるいは公的機関のほかにも、カウンセリングを専門に行う会社の相談窓口やNPO法人の電話相談窓口などもあります。

いずれも共通しているのは、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の臨床心理士の資格や国家資格の公認心理師の資格を持ったプロフェッショナルのカウンセラーがカウンセリングをするということで、品質としては非常に信頼のできるものだと言えます。

ハードルが高い
とはいっても、「カウンセリングはハードルが高い!」と思う方は多いでしょう。それは、カウンセリングに対する漠然としたイメージであったり、あるいは利用時に発生する金銭的・時間的なコストが理由かもしれません。「そこのところ、実際はどうなの?」という皆さんの疑問をカウンセラーに聞いていきたいと思います。

カウンセリングって、病気の人が受けるものでしょ?

-カウンセリングはどのような人が受けるのでしょうか?

病気の人に限らず、誰でも受けられます。
その人が抱える健康度はカウンセリングを受けることが出来るか否かに関係はありません。また当事者でなくとも、メンタル不調を患う方のご家族などの周囲の人が当事者に対してどう対応すればよいかを聞きに来られる場合もあります。他にも、なにかモヤモヤと悩みがあるときにカウンセリングを受けに来て、一通り話し相談することで、すっきりとしてまた頑張れるようになるという方もいらっしゃいます。そういう方の場合は継続的にカウンセリングを行うというよりは、悩みを吐き出す場として活用されています。

カウンセリングのコストは?

-価格はどれくらいですか?

自費でのカウンセリングは50分~90分、1回5000円~15000円ぐらいまで幅広くあります。カウンセリングは保険対象外であることに加え、カウンセリングを行うことができる人が少なく、市場が狭いため、価格が高くなってしまいます。さらにカウンセリングは継続的に行っていく場合も多いので、「一回分の値段×回数分」などといった形で多額のお金がかかる場合もあります。一方で、公共の相談機関や社内の相談窓口・EAPは自己負担なく利用できる場合もあります。
-期間や頻度はどれくらいですか?

期間や頻度については、取り扱うテーマによりますが、短期で解決(1~数回)できるものから、長期的なテーマだと数年かかる場合もあります。

継続して長期的なテーマをカウンセリングで扱っていく場合には、年単位で継続される方もいらっしゃいます。長期的な利用の場合は、目の前の課題を解決していくための相談というより、吐き出せる場所をもつ、心理的な安全や自分を振り返る場所、などの位置づけでご利用されている方もいらっしゃいます。

一方で、目の前の課題について解決するために一緒に検討したり、対処法を提案したりする場としては短期で利用される方もいらっしゃいます。たとえば、「上司とのコミュニケーションについて、アサーションスキルを学びたい」とか「仕事のストレス対処でできることはないか」「ネガティブに考えがちなので、考えの癖を知りたい」などはいずれも比較的短期で扱えるテーマと思われます。

その他にも即時の相談というカウンセリング形式もあります。その場で単発の相談です。これは公共機関の「こころの電話相談」や「ホットライン」などが当てはまります。ワンタイムで「今聞いてほしい」「今吐き出したい」「誰かに相談して一旦落ち着きたい」といった場合に利用されることが多いです。

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時間もお金もかかるのに、カウンセリングを受けるメリットはあるのでしょうか?

-カウンセリングを受けるメリットは何ですか?

この質問はよくカウンセリングを受けに来られる方からも投げかけられる質問です。答えとしては、「第3者に自分の気持ちや考え、悩みを言語化することにより、自分自身が整理できる」「対話を通して、自分の悩みが焦点化する、気づきを得る」「カタルシス(自分の悩みを分かってもらえる、共感し、受容してもらう)」「問題解決の仕方や、対処の仕方を自身のパターン以外を知ることができる」ことがカウンセリングのメリットとなります。

しかしカウンセラーとしては、そのような質問を投げかけるご相談者の気持ちを汲み取ることが大切になってきます。カウンセリングに対する構えやその構えに隠れているご相談者本人の気持ちに気が付くことでその後のカウンセリングの糸口を引き出します。

「どうせ話しても解決しないだろう」と思っていたけれど、自分が気づけていなかった点に気づく方や、「アドバイスがほしい」と相談したが、まず話を聞いてくれて受け止めてくれたことで気が楽になった、
と言う方もいらっしゃいます。

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2. カウンセリングを受けるには

では実際にカウンセリングを受けようと思ったときにはどうすればいいのでしょうか。どこにカウンセリングを受けに行けばいいのか?沢山あるけれど、違いは一体何なのか?カウンセラーの方に伺っていきたいと思います。

多種多様なカウンセラー窓口

-カウンセリング窓口の種類を教えてください。その上で使い分けや選び方などは、どのようにすればいいでしょうか?

大まかには医療機関併設のカウンセリング、公共機関のカウンセリング、社内の相談窓口、社外のEAP、私設のカウンセリング機関という種類があります。各機関の特徴を説明します。公共機関は地域のリソースが豊富なため、地域の情報提供をしてもらえます。医療機関は主治医との連携がスムーズにできるため、既に治療をはじめている場合に良いと思います。社内の相談窓口は社内での連携が必要な場合有効だと言えます。このような特徴をもとに、ご自身の相談内容にあった窓口を検討してみてください。

カウンセラーの選び方

-カウンセラーは選べるのでしょうか?

事前の情報収集でより相談内容に適したカウンセラーにかかることが出来ます。カウンセリングの効果を最大にするには、カウンセラーの選び方も大切な視点の一つですので、情報収集はしっかり行いましょう。カウンセラーのバックグラウンド、アプローチの仕方などによって、カウンセリングの進め方は大きく異なります。カウンセラーの特徴はカウンセリングを行う機関のHPに掲載されています。特に治療法に希望がある場合はそれを基準に選び、治療法に希望がない場合には、複数のカウンセラーがいるところで相談すると、ご自身の悩みの領域を得意とするカウンセラーが選択できるでしょう。

予約の取りやすさを考慮したうえで、事前の情報収集を行い、ご自身の相談内容に対して強みがあるカウンセラーを選ぶと良いでしょう。

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会社の窓口
働いている方だと、最も身近なのは社内の相談窓口ではないでしょうか。しかし、社内となると、自分の相談内容が誰かに知られてしまったり、噂を立てられやしないか心配という方も多いと思います。実際のところどうなのか、カウンセラーの方に聞いてみました。

ー会社内の窓口で相談した場合、上司や同僚に利用した事実や相談内容が知られてしまうことはありませんか?

カウンセラーには守秘義務がありますので、相談内容や履歴が第三者に知られることはありません。カウンセラーの守秘義務は公認心理師法で定められています。しかし、産業保健スタッフなど会社の方からの勧めで相談された場合、紹介者には相談に至ったことがご本人同意のもとお伝えする場合があります。また、本人が上司などと連携してほしいと希望する場合には、了承の上情報共有されることがありますが、いずれの場合も本人の了承なしに無断で外部と情報が共有されることはありません。


3. 良いカウンセリングにするために


お金も時間も割いてカウンセリングをするなら、せっかくなら最大の効果を引き出したいですよね。よりよいカウンセリング環境を作るために、相談者ができることは何でしょうか?事前の準備はした方が良いのでしょうか?また、少し聞きづらいことですが、カウンセラーと合わないと思ったときにどうすれば良いか、カウンセラーを変えてもらえるのかを聞きました。

カウンセリングの事前準備

ーカウンセリングに行く前にしておいたほうが良いことはありますか?

初回のカウンセリングでは、なにでお困りかを必ず聞きますので、来談経緯や、現在困っていること、相談したいこと、カウンセリングを通して何を改善していくのか、をまとめておくと良いと思います。初回50分ほど(30分や90分の場合もあります)で聞き取れることには限りがありますので、事前に話をまとめておいていただけるとカウンセラーの方でスムーズに方針を考えることが出来ます。勿論、話すことが難しい場合には、メモを持ってきていただいても構いません。

また、ご家族同伴(親子夫婦)の場合には、同伴者の方がお話する場合もあるかと思いますが、ご本人が何に困っているか聞く場合もありますし、同伴者の方が説明している内容に納得しているかを確認しながら進めていきます。同伴者の意見はあくまで同伴者の意見としてそれぞれの意向や気持ちを考慮しながら進めていきますので、安心してください。

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相性が悪いと思ったとき

ーカウンセラーとの相性が悪いと感じた時にはカウンセラーを変えてもいいですか?

こちらも、比較的よくあるご要望です。勿論、合わないと感じた時に変えるのは自由ですが、カウンセラーとしてはその理由を重視します。特に相談内容にあわせてカウンセラーが対応する場合、どういうところから相性が悪いと感じたのか、その理由が大事になることがあります。

例えば、そもそものカウンセリングアプローチが違う場合や、カウンセラーの性別、年代が自分と合わないと感じることも理由の一つです。
一方で「わかってもらえなかったから」「気の利いたこと返してくれない」はクライアントの対人関係が反映されている場合があります。これはカウンセラーの変更ではなかなか解決しないことが多いです。

できれば不満を感じた際、「なぜ不満を感じたか」についてカウンセラーと話し合ってみてください。そのこと自体がカウンセリングのテーマになることもあるのです。
カウンセラーがクライアントの課題に迫る(心理的直面化と言います)につれて、抵抗感や拒否感を示すこともありますが、カウンセラーとしてはその課題にクライアントとともに向き合っていくことになります。

カウンセラーから皆さんに

カウンセリングは、ちょっとした悩みやモヤモヤを相談し解決していただくことに是非活用していただきたいと思っています。

しかし、一方でカウンセリングの利用が好ましくない場合もあります。カウンセリングはこころを深く扱うものですので、主治医がいる方は必ず主治医の先生の同意を得てから行いましょう。

是非カウンセリングを身近なものと捉えてご自身にあった活用をしていただければと思います。

4. まとめ


カウンセリングを少しでも身近なものに感じて頂けたらと思います。自分一人で抱え込んでしまう前に、誰かに相談したいという時に、是非カウンセリングを活用してみてください。


監修者紹介

梅田 典子
ピースマインド株式会社
コンサルティング部 臨床心理士・精神保健福祉士・公認心理師
大学院修了後、臨床心理士として教育、医療領域において研鑽に励む。教育現場では5年間スクールカウンセラー業務に従事。その後の医療領域では約10年間、精神科病院にて個別のカウンセリングとグループセラピーを行う。ピースマインド株式会社入社後はEAPコンサルタントとして、従業員や管理職のメンタルヘルス向上のための相談業務に従事している。


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