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“傾聴”からはじめよう | 専門家に聞く、部下からの信頼を獲得する秘訣

カウンセリングというと、精神的な不調に対するアプローチの手段として見られることが多いですが、カウンセリングは人と人とのコミュニケーションの中で用いられる技法ですので、ビジネスシーンにおいても活用できる考え方や概念があります。

今回はカウンセリングのコアとなる考え方と、管理職の方々が業務の中でそれをどのように活用できるか・どのように学習できるかについて、ピースマインドのコンサルタント(臨床心理士・公認心理師)に話を聞きました。

本記事の監修者紹介

藤岡桐子
ピースマインド株式会社 コンサルティング部
国際EAPコンサルタント・公認心理師・臨床心理士

大学・大学院で臨床心理学を学ぶ。大学院修了後の約7年、心療内科クリニックにてカウンセリング、心理検査に携わる。また、中学校のスクールカウンセラーとして約6年勤務し、個人カウンセリング、教員・地域へのコンサルテーション業務に従事。現在、ピースマインド株式会社において、EAP契約企業・団体の従業員と家族を対象としたカウンセリング、コンサルテーションを担当。パフォーマンスに関する問題、休復職関連相談など、生産性向上を目指した産業分野の相談業務に従事し、人事・管理職へのコンサルテーションにも多く対応している。また、EAPスーパーバイザーとして、社内コンサルタントの育成にも関わっている。


1. 管理職が使えるカウンセリングの基本姿勢


そもそもカウンセリングとは何か?

カウンセリングは本来、カウンセラーがメンタル不調者などを対象に、その状態や不調の原因を明らかにするために行う専門的な対話方法です。しかし、現在ではその基本姿勢である”傾聴”の姿勢が職場での上司と部下の関係性を良好にするために有効な姿勢として認知され、注目されています。


管理者が活かせるカウンセリングの姿勢 “傾聴”

 ”傾聴”の姿勢がどのようなものなのか、ピースマインドのコンサルタント(臨床心理士・公認心理師)に話を聞きました。

ー “傾聴”の姿勢とは何ですか?

傾聴の姿勢とは、カウンセリングの基本姿勢です。普段人の話を聞くときには、意図に沿った回答を引き出すために聞くということが多いですが、傾聴の場合は「話し手が話したいことを話せるようにすること」を重視します。カウンセラーにとっては「カール・ロジャーズの3原則」は基本的な姿勢・考え方とされています。

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ー 管理職の方が”傾聴”をするときに押さえておくべきポイントはありますか?

普段の事務連絡や業務報告のなかで傾聴を取り入れることは難しいかもしれませんが、部下がいつもと様子が違うと感じた時や、部下の不安を聞き取るときに用いると非常に効果的です。


2. 日常的な場面:成績が振るわない、意気消沈している

では具体的に”傾聴”はどのような状況で力を発揮するのでしょうか。


部下の状況を把握することが必要

管理職の皆さんにとって、部下やチームの状態を良好に保つことは最も大切な役割の1つだと思います。チームの全員がその能力を発揮し、最大の成果をあげるためには、管理職が部下の状況を把握していることが重要です。そのために有効なのが1on1ミーティングによる信頼関係の構築です。


1on1ミーティングを実施する

1on1ミーティングとは、定期的にチームのメンバーそれぞれと1対1で面談を行うことです。現在の業務についてどのような不安を感じているのか、それにどう対処することが出来るのか、どのようにサポートして、何を目標に努力させるのかという事を定期的な面談の場で共有し、部下の成長に向けて伴走します。このようなミーティングは単に部下の状況を把握するだけではなく、お互いの信頼関係を構築し、部下の成長を促進することにつながります。

このとき心に留める必要があるのが、”傾聴”の姿勢です。部下と上司の関係だと、上司はつい「こうやればいいんだよ」と答えを出してしまい、部下は「自分が不安なのはそこではないのに」と不満を募らせることがあります。

”傾聴”の姿勢で部下の意見にじっくり耳を傾け、その部下が自分の力で問題を乗り越えることを後押しすることで、部下の自信と成長につながり、チームが良い雰囲気になっていくでしょう。

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3. 緊急事態の場面:会社に来ない、遅刻する、何かあったのか?

時に「部下の顔色や身だしなみがいつもと違う」「こんな遅刻する人ではなかったのに」「凡ミスが増えた」ということもあります。明らかに部下の様子がおかしいと感じたら、すぐに対処しましょう。まずは部下の話を聴き、状況や問題の生じている要因となりそうな事の理解に努めましょう。背景に部下の心身的不調や個人的問題がありそうだと想定されたら、産業医や外部のEAP(従業員支援プログラム)相談窓口を紹介するなど専門家に繋げる方法もあります。

では、部下の相談にのるときに、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。部下に対する聞き取りのポイントについて聞いていきます。

ー 部下の異変を感じたときに、本人にどうやって聞けばよいのですか?

部下の異変を感じ取ったら、出来るだけ早めに声をかけることが重要です。まずは部下を観察して具体的にどのような異変があるのかを明確にします。その上で、部下に接触を取り、相手のプライバシーが守られる場で話を聞きましょう。

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【図1】 部下の異変に気が付く(出典:ピースマインド  ラインケア研修資料)

ー 部下が聞き取りを嫌がった場合にはどうすればいいでしょう?

聞き取りを嫌がる部下に無理やり聞くのはやめましょう。まずは普段の様子が今までと違っていて業務に支障をきたしていること、それについて心配していることを伝えましょう。異変の原因が上司に相談しづらい事柄の場合もあるので、外部のEAP窓口を紹介することも1つの手段になります。

ー 聞き取った内容を基に何をどう判断すればよいのですか?

まずは部下といつまでにどう改善してほしいのか、を共有しましょう。また部下の抱えている問題が、職場環境の改善によって解消される類のものである場合には、許可を取った上で人事部や上司と相談して対処することが必要です。

4. 部下との接し方Q&A

最後に部下と接する上で、管理職の方からよく受けるご相談の内容について聞きました。

ー 部下が大したことではないのによく質問をしてきます。どう対応すれば良いですか?

”大したことではない”というのは、あくまで上司からの判断になります。部下にとっては「あとで突っ込まれないように聞いておかなければ」「いつもあとで修正されるから、先に聞きたい」と感じる”大したこと”かもしれません。しかし、上司からすれば「そんなの勝手にしてくれていいのに」と思うこともあるでしょう。このような場合は、一度上司と部下の間で擦り合わせをすることが必要です。「こういうことは自分で判断してやってほしいが、こういうことは一度確認をとってから進めて欲しい」という線引きをお互いに共有することで、双方にモヤモヤすることが少なくなるでしょう。

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ー 1on1ミーティングの時間が取れません。代わりにできることはありますか?

1on1ミーティングで行うようなコミュニケーションは、部下と上司がお互いに円滑に業務を進めていく上で必要になります。中長期的な目標を設定し、その進捗を確認しながら現在や今後の仕事について話し合うことは、多くの企業で当たり前になっていることでしょう。しかし、その頻度が多すぎたり、長時間かけすぎたり、無計画であったりすると、「時間が取れない」「労力のわりに効果が少ない」と感じるかもしれません。1on1ミーティングをなぜ実施するのか、に立ち返って効果的なミーティングができるようにしましょう。

5. まとめ

今回は管理職の方が活用できるカウンセリングの基本姿勢である“傾聴”について、お伝えしました。部下のことを心配に思ったとき「最近任せっきりだけど大丈夫かな」と感じたら、“傾聴”の姿勢で部下とコミュニケーションを取ってみてください。

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