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上司に言えない!でもわかってほしい... 部下の秘密の悩み

本記事の監修者紹介

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1. 人事担当に持ち込まれる上司への不満

上司に直接ではなく、人事担当者に持ち込まれる不満というのは案外多いものです。なぜ直接言わないのか、と思うかもしれませんが、それは「上司との関係性を悪化させて、評価を下げたくない」「チームの雰囲気を壊したくない」などの部下なりの思いがあってのことです。

これらの不満は、
・ハラスメント
・給与・労働時間・評価などの処遇
・部下の育成
と大きく3つに分けられます。今回はその中でも「ハラスメント」と「部下の育成に関する不満」を取り上げていきます。


言語道断、ハラスメントは厳禁

2020年6月に施行された労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の改正により企業には職場のハラスメント対策を強化することが益々求められるようになりました。日頃から部下とのコミュニケーションをとり、信頼関係を構築しておくことも勿論重要ですが、時々自分の行動にハラスメントにあたるものがないか確認することも大切です。


グレーゾーンな行為

上記のハラスメント要項にあてはまっていなくても、相手の感じ方次第でハラスメントと捉えられてもおかしくない言動も在ります。例えば、相談を受けたときに顔も見ないまま「後にしろ」などと追い返してしまったり、「またか」など口走ってしまうことです。多くは、日頃のコミュニケーションで習慣となっていて気が付かないようなことです。

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 【図1】職場におけるパワーハラスメントの要素と典型的な事例(※1)


上司のパフォーマンス・行動に関する悩み

「上司の能力に適性がない」というのは、上司が今までに経験してきたことと、配属された部署がミスマッチだという場合や上司より部下の方が”できる”場合を指していると言えます。部下からすれば「全然違う畑から上司が来てもやりずらい」「上司に相談するより自分で勝手にやった方が効率的」ということなのかもしれませんが、そんなことはありません。

例えば、部下との会話の際に「それは具体的にどういうことか説明してもらえますか?」と声をかけることで、部下自身も自分のやっていたことを俯瞰して見直すことが出来ます。このように部下の成長を上司が支えることで、自立性のあるチームを作ることができます。

「自分は違う畑だから」「自分より部下の方が良くできるから」と部下に任せっきりにしたり、尻込みする必要はありません。きちんと部下のやっていることに目を配り、部下の良き相談役になることで、部下は成長していきます。自分よりも意欲的で能力のある部下を持つことは決して悪い事ではないのです。


上司の役割を果たしていない

では「上司の役割を果たしていない」とはどういうことでしょうか。明らかにだらしがない上司だったら納得できます。しかし、部下を持つ上司や管理職の方というのは皆さん非常に優秀なプレーヤーだった方です。そんな彼らが怠けているわけでもないのに、役割を果たしていないと言われる原因は、部下のマネジメントに専念できていない点にあります。

「部下に指示をしてやらせるよりも、自分でやった方が早いから自分でやってしまう」といった事は、特に管理職一年目の方に多く見られます。一見効率を考えた故の行動のように思えますが、管理職はあくまで部下のマネジメントが仕事ですので、仕事は部下に任せるようにしましょう。管理職がプレーヤーになっている間、部下の方々は上司からの指示やフィードバックが得られずに困っている可能性があります。


上司からの指導やフィードバックが不足している

「上司からの指導やフィードバックが不足している」と部下が感じる原因の1つは、上司がプレーヤーになってしまっていることにありますが、それ以外にも一対一のコミュニケーションが不足していることが原因の場合があります。

そのような場合には1on1ミーティングなどを設置し、部下ひとりひとりの進捗を確認し、何が不安で何をしてほしいかを聴き取り、課題解決をサポートすることが必要です。

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上司のコミュニケーションの取り方に不満がある

一日をふりかえると、「そういえばあの部下と今日一日一言もしゃべっていないな…」なんてことはないですか?上司に認められたいと思って仕事をする部下も多くいますし、そのような部下は仕事ぶりだけではなくて、部下の存在自体も認めて欲しいと思っています。

チームの一員として、部下として、ひとりの人間として認めていることを示すには、日常的な挨拶や声かけ、雑談が重要です。何か少し話をしてみることを習慣づけてはいかがでしょうか。


2. 管理職が思うほど部下は不満ではない...?


上司への尊敬

ここまで部下から寄せられた上司への不満の数々を見てきましたが、必ずしも部下は上司に不満ばかりを抱いているわけではありません。部下の事を気遣う言動や、仕事に打ち込む姿、責任感があり時に厳しく叱るというような仕事や部下に対して真摯な姿勢を持つ上司は自ずから尊敬されます。


上司の役割の変化

しかし、自分では”理想の上司”であろうとしているのにも関わらず、あまり上手くいっていないなと感じる方もいらっしゃるかもしれません。気を付けるべきことは、時代の変化とともに、組織の在り方も変わり、上司の役割も変わってきているということです。


3. 理想の上司、部下、チームの関係


前時代的な組織

長く日本の経済成長を支えてきた従来の大規模な企業組織は官僚主義的であり、決められたやり方で決められた仕事を行うことが求められました。より効率の良いやり方を追い求める現在とは違い、無駄に思える仕事でも仕事である限りはやる、という姿勢が当たり前でした。従って、上司の仕事の中で業務改善に割く時間は現在よりも大幅に短かったといえます。さらに、部下に与える仕事も決められたやり方でやってもらうわけですから、一方方向的な指導が主な役割でした。そのような状況では、管理職は単に目標設定を行い、その目標を達成するために尻を叩くような役割だったと言えます。
しかしながら、2005年ごろから管理職の役割変化が謳われるようになり、組織としての機能を最大限に引き出すためのマネジメント業務が重視されるようになりました。(※2)

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いま求められるのは自律的な組織

現在求められているのは自律的な組織の形です。がむしゃらに働くよりも、ワークライフバランスを維持し、多様な人材を育成・マネジメントすることが必要です。理想の上司像は、多様な人材をマネジメントすることのできる柔軟性と親しみやすさを兼ね備えた人物像となります。

そのため部下は、背中を見せて部下を引っ張る上司よりも、部下の相談に親身になって聞いてサポートしてくれる伴走者のような上司を理想だと思っています。このような認識のズレは、いつの時代でも少しずつ生じてくるものですし、それに合わせる必要があるというわけでもありません。

しかし、認識のズレを無視することによって、知らぬ間に人の尊厳を傷つけてしまうことがあります。管理職である上司は、部下との価値観や視点には異なる部分もあるということを忘れずに、真摯に向き合うことが重要です。

まとめ

管理職である上司の方々は、部下が自分をどう思っているのかが気になり始めると際限がないですよね。気にすること自体は、相手の立場や価値観を知ろうとすることなので、決して悪い事ではありません。しかし、気にしすぎてしまうと嫌になってしまったり、時に落ち込むこともあるでしょう。

管理職が部下の視点を気にする上で最も大切なのは、その違いを知った時に自分と異なる価値観を否定せずに尊重する姿勢をとることです。また、普段の言動が、相手にとっては非常識な事である場合もあるので注意が必要です。

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監修者プロフィール

後藤麻友 ごとうまゆ
ピースマインド株式会社 コンサルティング部 統括マネージャー兼スーパーバイザー 公認心理師 臨床心理士 国際EAPコンサルタント
臨床心理学の修士号を取得後、ピースマインド株式会社に入社。EAPコンサルタントとしての臨床業務の傍ら、研究、研修、サービス開発にも従事。現在は、主にコンサルタントのマネジメントや育成支援を行っている。


出典

※1: 職場におけるパワーハラスメントの要素と典型的な事例:『あかるい職場応援団 「ハラスメント基本情報」ハラスメントの類型と種類』,最終閲覧日2020/10/20
※2:日本総研コラム「研究員のココロ」鈴木正一,『社員の不満と管理職の役割変化』,最終閲覧日2020/10/20

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