見出し画像

実力も運のうち サンデル教授に学ぶ運を上げる企業の選択とは

努力と才能で、人は誰でも成功できるのでしょうか。

どんなに劣悪な環境で育っても、両親や周囲の人間がどんな属性であっても、人種や性別、出自によらず、本人が「能力を磨く努力を怠らなければ、誰でも成功できる」という考え方は、『能力主義』と言われています。

努力すれば誰にでも成功するチャンスがある平等な世界は、人種差別やLGBTQ差別が横行する不平等な世界と対比する形で紹介されることが多いのではないでしょうか。黒人だから、女性だから出世できないのではなく、能力や成果で評価されるのが「平等」だ、と言う考え方です。

でも逆に言うと、成功しない原因は、本人が努力を怠った、あるいは努力の程度が不足していたからだ、と言う考え方でもあります。

1. 努力できるかは「遺伝子」で決まる

ハーバード大学教授のマイケル・サンデル氏は、著書「実力も運のうち」の中で、「努力できる遺伝子」の存在に言及しています。つまり、容姿や身体能力、出自や両親の経済状況と同じく、本人が「努力できる」かどうかも「遺伝子の有無」で決まってることなんだと。

結構衝撃的ですよね😅親が選べないように、遺伝子は本人の努力ではどうにもなりません。つまり、成功するかどうかは「運」次第、と言うことです。

人より多くの資産を形成できたり、社会的地位を得ることできたのは、本人の努力も含めて「ラッキー」だっただけ。偶然の神秘がなかったら、「アンラッキー」なことに貧乏で社会的地位が低い人に、自分もなっていたかもしれない可能性は常にあるんだと。

だから、冒頭の質問に関しては、「努力と才能も運次第」▷成功は運次第!と言うことになりますね。

2. 「仕事ができる人」と「できない人」の分断

転じて、企業の持続的成長は、従業員ひとり一人の成長の賜物です。

個人の成長を支援するために、教育・能力開発の機会を充実させたり、優秀な成績を残した人を表彰し、報酬で報いるなど、企業は様々な制度整備をしています。

成長に向けた努力をスタートしやすい、あるいは、継続しやすい環境整備、ともいえますね。

しかし、サンデル教授の主張からすると、これだけでは不十分だと言うことになります。努力できる人は、そもそも努力できる遺伝子を持っているから「能力開発」ができるのであって、それを前提とした制度設計は分断を呼ぶ。

つまり、能力主義の世界における、仕事ができない人=努力できない人と、仕事ができる人=努力出来る人の分断です。なんとなく、心当たりがありますよね😅

組織は、優秀な上位2割、平均的中位人材が6割、下位2割の比率に分かれると言う、2:6:2の法則の根底にも通じる思想があるように思います。なんとなく、上位2割の層を自覚する人は下位2割を軽視するイメージがあり、また下位2割を自覚する人は自己肯定感が低く卑屈になる傾向があるイメージがあります。

意識的にも無意識的にも、クラス分けは分断を呼びます。では分断すると、何が良くないのか。結果的に、成長できなくなるんです。

3. 変化が大きい社会だからこそ、「多様性」が成長の鍵

現在、世の中は変化が大きく、不確実性が高く、たくさんの事情が複雑に絡み合っていて、曖昧なことが多くなってきて、予測困難な時代と言われています(いわゆるVUCAの時代!)。

将来の見通しが立ちやすい世の中だったら、優秀な人がつくった最短で成功する戦術を従業員全員が全力で実行する!例外は認めない!!とい進め方で、右肩上がり成長が達成できたのでしょう(昭和の時代の成功ですね)。

他方、将来の見通しが立ちづらい、変化が大きい現代にあって、企業を持続的に成長させようと思ったら、単一の方法で成功を目指すのはリスクが高いんですね。

会社が目指すターゲットまで、直線的なシナリオにおけるPDCAサイクルを描く場合、将来の変化に経営戦略が即応できなかったり、将来の見立て・予測を改めてつくる際、水掛け論が続いたり。

不確実であり、それゆえ可能性もある未来の場合、向かう先にあるビジョンを共有したうえで、複数のシナリオを用意して、将来の変化に柔軟に対応する経営をあらかじめ選択しておいた方が建設的、ということです。

つまり、企業として「こっちに行こう」と言う方向性は共有しつつ、「どうやって行こう」と言う手段・戦術は、できるだけ様々なケースを想定して多様な方法があったほうが、迷わず前進できる=持続的に成長できそうです。

多様な方法を用意するためには、多様な考えをぶつけあって、複数の選択肢にまとめていく必要があります。

能力主義の世界でいう「仕事ができる人」たちだけの考えをまとめても、「優秀な戦術」が一つできるだけであって、(もちろんそれは素晴らしいことなのですが)、多様な戦術の確保にはつながらない。

もちろん、「優秀な戦術を複数作ればいいじゃないか!」と言われそうなのですが、複数作っても「根本思想が同じ」戦術である可能性が高く、一つの前提が崩れると全て崩れてダメになってしまうリスクを孕んでいます。

根本的に思想や思考回路、前提が異なるメンバーが集まって、議論をし、本当の意味で幅広の選択肢を準備できる企業が、これからの社会において、持続可能な成長が実現できる企業であると言えるでしょう。

4. 【考察】サンデル教授に学ぶ 運を上げる企業の選択とは

成功も失敗も「運次第」なのであれば、その運を上げる選択をいかにできるかが、これからの企業の勝負どころになります。企業の選択肢として、考えうる取り組みを三つに整理しました。

(1)全ての仕事に感謝する機会をつくる
例えば、クリエイティブやイノベーションの要素がある仕事は、「その人でなければできない」仕事のように思われ、定型的に繰り返し行われる仕事より優秀な人材が取り組む仕事であると扱われる場面が多いように思われます。

しかし、サラリーマンが所属する企業において、その人でなければできないクリエイティブな仕事はどれだけの割合を占めるのでしょうか。

企業は、役割分担で構成されており、全ての仕事に価値があります。仕事の内容で暗黙の優劣をつける「身内意識」は、人間ですし、否定せず、お互いの仕事・労働に対する純粋な感謝を伝え合ったり、分かち合う場を作ることが重要かと思います。

(2)評価の判断軸を増やす
業績や能力開発といった能力主義的な評価だけで完結させない評価制度も、検討の余地があります。

例えば、いつも笑顔で周囲に接し、その人の周りは「幸せ度」が上がるのだとしたら、それは立派な組織貢献です。気が利く、目配りができる、親切である、といった従来の評価制度では対象外になる「善」の行動に光を当てるような評価や奨励制度が望まれます。

(3)ONーOFF両方できる場所をつくる
最後は、企業の執務空間に、休憩・安らぎ・リラックスできる、OFFになる場を設けることです。

神経科学に関する研究によると、クリエイティブなひらめきのうち、職場での仕事中に起こるものはわずか16%に過ぎないそうです。

人は休憩中に閃くんですね。何気ない雑談から生まれるインスピレーションに、何度救われたかわかりません。人の休憩をお手伝いするのに長けている人も、いるかもしれません。

5. まとめ

以上をまとめると、ダイバーシティ(多様性)を認め合って仕事ができる環境整備が、成長の鍵になると言うことですね。他にも、企業の方向性やパーパス(共通のゴール、存在理由)を設定する、部門を超えた対話の機会をつくるなど、細かくたくさん考えられるトピックですね!

違いを理解しながら、対話を重ね、より良い選択肢を自由にアウトプットできるような、機会と場をつくり、制度や環境で支えていく。

そんな企業になれるよう、そしてそんな企業の輪が広がるよう、今日も精進していこうと思います!連休明け、もう金曜日ですね😄早い笑

元気に運を上げていきましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?