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わたしが「ADHD」に気づいた本

季節は春、それは何の変哲もない外回り営業からの帰り道だった。社用車の割り当てがない日だったため電車移動、なんとなく営業所に戻りたくない一心で、5分だけのつもりで駅の書店にふらっと立ち寄った。

いつものクセで、本屋さんの棚の端から順に視線を動かしていく。特に目を引くものはないかな…と思いかけたところで、平積みされていた本の、よく目立つ赤い帯の煽り文に目が吸い寄せられる。

片づけられない・遅刻・忘れ物
先延ばし・気が散る・ミス…

えっ自分じゃん。いつの間にインタビュー受けたのかな?

あらためて本のタイトルを見ると、「私って、ADHD脳!?」とある。ADHDというと、「小さい子どもの発達障害」「特別な支援が必要」といったイメージが浮かぶ。しかしこの本の表紙イラストは、書類を抱えてちょっと困った表情をした20代くらいの女性で、子どもの本ではないらしい。尚更自分のことを指している気がした。

パラパラと読んだ「はじめに」の章も「あなたの困りごとは、脳のクセが原因かもしれません」と優しく諭してくれている。今までドタバタと失敗の多かった自分を、優しく全肯定されているような気がした。

その次の漫画パートの主人公も、既視感がありすぎるキャラクター設定だった。小さい頃から「すごいね」と褒められ、学校の成績も良くてリーダーを任される立場だったのに、現在は色々なことが上手くいかない。雑なわりに完璧主義で、なにかと周囲に迷惑をかけがち。スケジュールが立てられなくて、ギリギリになってエンジンがかかる……

これは詳しく知らねばなるまい、と、隣にあった「ADHD脳」を少し詳しく解説した本(どちらも著者は司馬理英子先生だ)も一緒に手に取り、一直線にレジへ向かった。

私は現在、出版業界の片隅で仕事をしているのだが(先の本の主人公もそうだ)、活字で満たされた本が大好きだからこそ、このような「漫画でわかる〜」と題された本をどこか避けていた節があった。どうせ読むなら情報量の多い本がいい、と。

しかし今回わたしを変えるきっかけになったのは、漫画と文章が半々の、読みやすさに重点を置いた本だった。だからこそよく売れるのだと思うし、専門書への架け橋になるのは間違いない。

この記事を読んでくださっている方は、少なからずADHDに関心がある人だと思うので、機会があればぜひ読んでいただきたい(出版社の回し者のようになってしまったが、私自身は大和出版さんとは何の関係もない)。

自分を知ることは、自分を変えることへの大きな一歩だ。

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