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『ボジョレー』か『ボージョレ』か毎年困る“Beaujolais nouveau”

ハロウィーン/ハロウィンとならんで、秋になると文章を書く人達を悩ませる言葉の代表格が“Beaujolais nouveau”です。

言うまでもなくフランスのBeaujolais地方で作られる新酒ワインのことで、毎年11月の第3木曜日が解禁日となっています。

img_赤ワインいらすとや

この言葉、カタカナではいろんな表記が存在していて、何種類も目にします。

大まかに言うと前半の"Beaujolais"「ボジョレー」「ボージョレ」「ボジョレ」の3種類。後半の"nouveau"「ヌーボー」か「ヌーヴォー」の2種類が多いと思います。この組み合わせだと6種類の表記が存在することになりますね。

まずは前半の"Beaujolais"について。

フランス語では、2つ以上の文字で1つの母音を表すことがたくさんあります。

"Beaujolais"の場合だと、"eau"で日本語の「オ」に近い母音、"ai"で日本語の「エ」に近い母音を表しています。ここまではあまり異論がないと思います。

ヨーロッパの言語は、日本語と母音の長短の概念が少し違っています。

日本語は「母音が長いか短いか」で別の単語になります。「ジョキョ」(除去)と「ジョキョー」(助教)と「ジョーキョー」(状況、上京)といった具合です。

一方、フランス語や英語では、短母音と長母音の区別も一部にありますが、短い母音を長く発音しても別の単語にはならず、一般にアクセントのある母音が長めに発音されます。(「アクセント」のあり方も、日本語とは違っているわけですが…。)

そして、フランス語では基本的に単語の最後の音節にアクセントがあります。したがって、"Beaujolais"では"ai"の部分にアクセントがあり、この「エ」の部分が長く発音されます。

さらに、複数の文字で書かれていると、長く伸ばしたくなる心理も働きます。
そうすると「ボージョレー」と両方の母音を伸ばした表記になるわけですが、さすがにそれは抵抗があるため、「ボジョレー」「ボージョレ」のどちらからに落ち着くのだと思います。

一方、後半の"nouveau"(「新しい」という形容詞)について。

母音の長さよりも「ヴ」を使うかどうか、つまり「ヌーボー」「ヌーヴォー」のどちらなのか、が問題となります。

"v"は元々の日本語にはない発音なので、長年、表記が混乱してきました。

メディアでは現在もなるべく「ヴ」は使わないようにしています。"violin"は「バイオリン」ですし、"veteran"は「ベテラン」ですね。

ということで、前述のようにおおまかには6種類の表記があり得るわけですが、これだけみんながそれぞれの書き方をしていると、『統一』は無理だし来年もまた迷ったり困ったりするんだろうなあ、と思うわけです。

ちなみに共同通信社の「記者ハンドブック」では「ボージョレ・ヌーボー」となっていて、大手メディアはこの表記が多いようです。


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