ショートドラマ「核のごみ~5万年後の君たちへ~」④(完)

※この作品はフィクションです

―――2×××年
     霞が関・食堂
幕内「終わりっていうのは、あっけないもんだなあ」
原田「ひどい話だよな」

     ……原田回想……
青木「ピラミッドは、いいアイデアだと思いますけどねぇ」
幕内「税金を使って許されますかね」
近藤「これから5万年かかる話なんだ。岡田総理だって名が残る」
原田「名が残るって……原発の再稼働も、地元と話をつけたのも、何代も前の総理でしょう」
近藤「構造の問題だな。都合の悪いことは前例踏襲。マニュフェストの端っこにしか載らないし、注目もされない。5万年先に核のごみの名前を残すには、ピラミッドくらい作らなければ」
青木「このまま原発を続けていくなら、キャパシティーを越えるかもしれませんよね。二つ目のピラミッドなんて話も出てくるかもしれません」
幕内「日本に二つもピラミッドはいらない!……いや、一つもいらない!」
金田「ネガティブな情報というのは隠蔽されがちです。どうでしょう、5万年後の世代に向けたタイムカプセルというのは」
幕内「開けても、出てくるのはごみですよ!」
青木「映画はどうでしょう。ゴジラだって水爆実験から生まれた怪物で、問題提起をしています。いまだにクロサワ映画は見られているわけですし……」
幕内「それは民間でお願いしますよ」
     会議室に佐藤が入ってくる
佐藤「会議の途中で済まないが、皆さん聞いてください」
佐藤「緊急事態により、このプロジェクトはいったん休止です。官僚の皆さんは急いで所属先に戻ってください」
     ……原田回想終わり……

幕内「お、さっそく記事が出てるぞ」
原田「タスクフォースのことはまだマスコミに公表してないだろう」
幕内「総理の方だよ」
     幕内、スマホを差し出す「岡田総理、不倫」の見出し
幕内「やっぱり恋愛結婚は時代遅れだよなあ」
原田「けどさ、総理の不倫で5万年の話が止まるか?」
幕内「分かってないなあ。5万年もかかるから止まるんだよ。都合の悪いことは、次の総理に任せようってな」
原田「マスコミも年に数回同じような記事を書くくらいで、普段は不祥事の話ばかりだもんな」
幕内「それも必要なんだって。そんなことよりさ、お前もそろそろ次のパートナー見つけたら?」
原田「ああ……AIの婚活アプリ入れたんだけど、マッチングしなくてさ」
幕内「もう一回恋愛してみたら?水川さんとかどうよ」
原田「お前、さっき時代遅れって言っただろ?それに職場で恋愛なんてリスクしかない」
幕内「科学の力で0.1%でもリスクを減らすって、水川さんも言ってたもんな」
原田「それ、核のごみの話だろ?」
幕内「なんでも同じだって。というかさ、マッチングしないって、なんか設定間違ってない?相性何%で通知くるように設定してんの?」
原田「ああ……結婚は急いでないし、とりあえず100%にしてるけど」
幕内「ばか、それじゃあ一生マッチングしないって。貸してみ」
     幕内、奪い取るように原田のスマホを奪う
幕内「人間二人で相性が100%なんてことないの。水川さんも100%はありえないって言ってたでしょ」
原田「だからそれは……まあ、なんでも同じか」
幕内「このアプリは99%が最小なの。まあ、80%台まで下げるのが普通だけど、とりあえず99%にしておいてやるよ。ほら」
     原田にスマホを差し出す。同時に、通知音
幕内「お、さっそく通知きてるじゃん。99%でマッチングすることなんて、宝くじに当たるようなも……」
     スマホの画面をのぞき込む二人
原田・幕内「嘘だろ……」
     スマホ画面のマッチング相手の名前と顔が出てくる
原田「水川さん……」

連載終わり

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