ショートドラマ「核のごみ~5万年後の君たちへ~」①
※この作品はフィクションです
―――2×××年 日本
長い廊下を歩くスーツの男、二人。
原田「ツイてないよなぁ」
幕内「そんなことないって。総理直轄のチームだぞ?うまくいけば出世コースだ」
原田「そうは言っても、厄介ごとの押し付けだろ?」
幕内「でもお前、柴田さんから頼まれたんだろ?悪い話じゃないって」
原田「どうかなあ……」
……原田 回想……
経済産業省 エネルギー担当室と書かれたオフィス
柴田「原田。ちょっといいか」
原田「どうしたんですか、柴田室長」
柴田、パソコンの画面でディズニーランドの案内を見せる
柴田「今度家族でディズニーランドに行くんだけど、新しくできたアトラクションってどれだ?」
原田、ため息をつく
原田「そんなことで呼び出さないでください」
柴田「お前、ディズニー好きだっただろ」
原田「好きだったのは元カノです。それに、新しくなったのはアトラクションじゃなくてショーですよ」
柴田「そうだったか。でも、相性がいいから付き合ったんだろ?」
原田、目を背けながら
原田「大学の、同じ研究室だったんです」
柴田、目を丸くする
柴田「へえ、恋愛して付き合ったのか」
原田「もうこりごりです。趣味も価値観も合わないし」
柴田「最近は珍しいもんな。ちょっとうらやましいけど」
原田「室長もアプリで結婚されたんでしたよね」
柴田「そうそう。今ほど精度は高くないけどね」
柴田、壁に貼ってある総理のポスターに目をやる
柴田「そういえば、岡田総理は恋愛結婚だったよな」
原田「そういや、選挙後のインタビューでそんなことを言ってた気がしますね」
柴田「あれも売りにしてたんだよ。“少子化対策も多様性だ”ってな」
原田「へえ……」
柴田「あれで焦っているんだよ。久々の男性総理だから。この前も……」
原田「あの、もういいですか」
柴田「ああ、そうだな。悪い」
原田、背を向けて自席に戻ろうとする
柴田「そうだ、原田」
原田、振り返る
柴田「お前、来週から別のチームに入ってもらうから」
……原田、回想終わり……
原田と幕内、廊下の角を曲がる
原田「期待されているって感じはしなかったな」
幕内「柴田さんは他の省庁からも一目置かれる切れ者だって話だぞ。その人に気に入られているんだから、出世コース間違いないな。」
原田「どうだろうな」
幕内「お、ここだ」
会議室の前に張り紙「総理直轄タスクフォース 『核のごみ保存委員会』」
二人、その張り紙を眺めながら
幕内「『ごみ』なのに保存っていうのも、違和感があるな」
原田「ごみ処理係が出世コースとは思えないけど」
幕内「そういうなって。出世は気から」
幕内、原田の背中を叩きながら二人で会議室に入る
①終わり
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