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土竜 《畑日記169 2019/04/12》

もぐら。

枯れ枝切りに陶酔してたら、
右手中指に「感触」を感じたんだよね。


ちいさい、
黒いかたまり。

大きさはネズミだけど、
風格が違う。


もくらだ。

子もぐらが触れたんだ。


一瞬、自分が何を感じたか
わからなかったんだ。

「なんだ?」てのが先にきて、
私の感情をかき消していった。

「なんだ?」→ もぐらか!
てのがわかったら、


こんな、よく見ると幼くてかわいい、かたまりが、
どうしたんだろう? て思ったよ。

私の心の中にも、黒いかたまりがあるのに、
それを無視して、

「大自然の畏怖」に耳をかたむけようとしてた。

スーパーに並ぶ鶏肉も死骸でしょ?
それと変わらないのに、どうしておびえるの?

て、

自分に言い聞かせようとする

道徳心まんまんの
ほんとはビビリな自分がいた。


私は、もぐらを埋めようと思った。

道徳心まんまんな私は、
「もぐらへの敬意」とか言うだろうな。

ほんとうの私は、
「気持ち悪いと感じたから」だ。

私が触れるぶんにはいいけど、
息子がみつけて遊びだしたら
いやだな、って思ったんだ。

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「気持ち悪いと感じてごめんね」ていう
かっこつけた想いが駆け抜けたけど、

たぶんそれ、嘘だね。


気持ち悪いものは
気持ち悪いでいいんだ。

ていうことに気付くまで、
15分ばかし作業しながら
私は私の内側を掘る。

土竜のように。

・・・

6月に入ると毛虫が大量発生する。

それも「大自然だなぁ」と
微笑ましく見ていられるほど
達観していない。

そんな毛虫のように
ウジャウジャと小さな自分が


いい。

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単純作業のなかに、
自己の内面を掘り起こされるから、
好きだなぁ。

農作業はこわくて好きだ。


なによりこわいのは
土竜でもなく毛虫でもない。

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土竜に土をかぶすついでに、
くわで畝回りを掘る。

畑に到着したときは億劫だった
この作業も、自分からやると楽しい。

土竜の死骸があった場所は、
ほどよく根がはって、
ふかふかの土だった。


そんなことを肌で感じながら。


暑くなってきたので上着をぬぐ。
川辺で道具を洗うとき、
涼しくて。

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涼しい風が来たりやんだり。
どこから来たのだろうと見ると、
「根」が生い茂っていた。

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