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【プチ映画評】機動警察パトレイバー2 the Movie

間違いなく、アニメ映画史に残る名作。反戦を訴える映画として受けとめる人もいるし、全く違う解釈をする人もいる。
それほど奥が深く、完成度が高いと言えるだろう。また押井守監督の得意とする、聖書からの引用や暗号も多く、その考察も含めて面白い。

本作最大の意義は、本来誰も気にとめない「当たり前の平和」への疑問を観客に問いかけた点だ。ストーリーは自衛隊の決起によって起こる戦争と政治劇を描いており、日本社会をかなり皮肉り、警鐘を鳴らしている。今から30年も前に行われたこの問題提起は、今現在にも通ずる所があるだろう。

また、鳥の群れや水面反射、魚眼レンズをはじめ、本作には多種多様なモチーフ・効果が盛り込まれており、平和と戦争、正義と不正義の境目の曖昧さを美麗に演出している。緩急のつけ方はやはり上手で、そこに川井憲次氏の音楽が加わって独特の情緒を醸し出している。

作画の面でも、今敏監督、沖浦啓之監督ら、現在では伝説級のアニメーターが多数参加している為か、大変レベルが高い。すべての切っ掛けとなったベイブリッジ爆破のシーンも、演出も含めて異様に力が入っている。

唯一、勿体ないのは、娯楽性の欠落である。本当に笑い処がないのだ。一応ギャグシーン(刺さる人には刺さる系の)は入っているが、ストーリー自体が重いので一般ウケはしないだろう。最後もバッドなのかハッピーなのかよく分からないまま終結する。

だがそれでもなお「機動警察パトレイバー2 the Movie」は美しい。むしろ娯楽性を捨てたからこそ、芸術作品として完成したとも言えるかもしれない。ちなみに、前作「機動警察パトレイバー the Movie」も結構お勧めだ。こちらは非常に作風が明るく、純粋にエンターテイメント作品として楽しめる名作。押井さん、正直言ってかなり極端である。

追記

一部で押井守監督ブームが巻き起こっている。監督の実写映画に「紅い眼鏡」という作品があるのだが、今月初頭にそのリマスター化の為のクラファンが開始された。ところが驚くべき事に、たった一日で目標金額である1000万円が集まってしまったのだ。

その後も支援額はうなぎ上りで、現在は3000万円もの額になった。この件には監督も企画者も驚愕しているらしく、豪華特典を近々追加する為に根回し中との事。同時進行で「天使のたまご(原作・脚本・監督:押井守)」のリマスター化も着々と進んでいる。

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