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小売のプラットフォーム

こんにちは、コーイチです。
今回は、「より効率的に、より少ないリスクで、非常に望ましい立地に出店する」ことを支援している、アメリカで急成長している小売のプラットフォーム「Leap」を見ていき、このようなビジネスモデルは、今後日本でも展開されていくのか考えたいと思います。

1.Leapとは

(出典:Leap youtubeより)

 ブランドが小売の実店舗を作るには、専門家のチームを必要とします。
 かつて、ブランドが数十店舗から数百店舗を展開する時代には、不動産、建築、法律、ビジュアルマーチャンダイジング、商品企画、オペレーション、セールスなどの専門家をフルタイムで雇用することが可能でした。
 しかし、今日のD2C(Direct to Consumer)*ブランドが数店舗しか出店しない場合、あるいは何店舗出店するかわからない場合は、専門家のチームを丸ごと雇うことは困難で、
経験の浅いスタッフが何とかするか、単発のコンサルタントが専門知識のギャップを埋めるか、といった選択肢にとどまっていました。

*D2C(Direct to Consumer):メーカーやブランドが自ら
  企画・製造した商品を、従来のように問屋や小売業者を
  介さずに、自社のECサイトを使って直接(Direct)消費
  者(Consumer)に販売する仕組み
 
 「Leap」は、ブランドの実店舗展開のライフサイクル全体をカバーするフルサービスのプラットフォームを提供しており、リースとそれに伴う財政的なコミットメントを所有するだけでなく、スタッフの配置、体験型のデザイン、技術統合、さらには日々の運営に至るまで、すべてをカバーしています。
 「Leap」は、設立から1年未満で、1号店の開設と、300万ドルのシードラウンド*を終了しました。

*シードラウンド:スタートアップが行う初めての資金調達 
         ラウンド

 コロナ禍により、一時的に全店舗を閉鎖せざるを得なかったにもかかわらず、コロナが衰退し、経済が回復し始めると、「Leap」のプラットフォームの真のパワーがより明らかになり、2021年に、更に1500万ドルの資金を調達しました。
 また、2022年1月に、5000万ドルの資金を調達し、3月には店舗網をさらに国内5市場に拡大することを発表しました。

 これによりブランドは、ボストン、コロンバス、グリニッジ、フィラデルフィア、ワシントンDCのプレミアムロケーションに、「Leap」のプラットフォームを通じてオムニチャネルの小売店を初めて展開することができるようになりました。
 「Leap」は、プラットフォーム・システムと運営能力への投資を続けながら、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、フロリダ南部、ダラス、オースティン、スコッツデール、サンフランシスコなど既存の全市場で店舗網を拡大し続けています。
 現在、「Leap」は2000万人以上の顧客を登録し、「グッドライフ」、「マックウェルドン」、「ナーダム」、「サムシングネイビー」、「サードラブ」など数十のブランドのために55の小売店を運営しており、今後も新しいD2C店舗をオープンする予定となっています。

2.Leapの仕組み

(出典:Leap youtubeより)

 「Leap」は、D2Cブランドと物件所有者の間に入り、かつ店舗運営を代行するサービスです。
 立地が良く、条件の良い物件を予め「Leap」が抑えており、リースの契約はじめ初期投資にかかるコストや手間は、全て「Leap」が行います。
 D2Cブランドは長期、または短期で「Leap」と契約し、「Leap」が持つ物件をマンスリーでレンタルできるというもので、加えて、ストアオペレーションやカスタマーサービスもすべて「Leap」が行うというサービスとなります。

ブランドが提供することは、主に以下の3点で
 ①ブランドの看板と商品説明やブランドストーリーの準備
 ②月額の店舗オペレーション費用の支払い
 ③売上のコミッションパーセントの支払い

「Leap」が提供することは、主に以下の5点となります。
 ①好立地のロケーション
 ②ストアーデザインとデベロップメント
 ③日々の店舗オペレーションとマネジメント
 ④Leapのオムニチャネルテクノロジーの提供
 ⑤店舗でのデータとインサイトの提供

 このサービスの実現により、店舗は初期でかかる費用とリスクを下げ、スピード感をもって店舗をスタート出来、ブランド認知度を向上させ新規顧客を獲得すると共に、店舗での売上獲得を目指せるようになります。

 「Leap」の共同創業者兼共同CEOであるアミッシュ・トリアは、「ブランドは、従来のリスクや参入障壁、負債を負うことなく、ブランドを構築し顧客を獲得するために、完全没入型の小売店を通じて成長しようとしています」と語り、「当社のプラットフォーム・アプローチは、小売の未来で、認定されたブランドは、多額の先行投資や、不動産、リース、店舗デザイン、人材配置、テクノロジーに社内リソースを割くことなく、実店舗での戦略を拡大できるようになりました。」と述べました。

 「Leap」のプラットフォームは、店舗、ロケーション、ブランドのネットワークにおける何百万ものデータを基に構築され、独自のアルゴリズムと地域市場の専門知識を使用し、ブランドの成長と顧客獲得を促進する、モダンで没入感のある小売店舗を展開することを可能にしています。
 「Leap」はブランドにとって実店舗の生産性を高め、ブランドはeコマースと連動した店舗をより迅速に、コストとリスクを大幅に削減しながら展開することができます。

3.Leapの魅力

(出典:Leap youtubeより)

 「Leap」は、DNVB*の実店舗運営を損益の単一項目として簡素化し、小売戦略よりもブランド構築やサプライチェーンに集中できるようにするとともに、迅速な事業拡大を可能にします。

 *DNVB:Webを介してストーリーテリングの手法で商品
     の販売を行う、インターネット時代のブランド

 「Leap」の最も魅力的な点の一つは、複合的な利点が生じ始めていることです。
「Leap」の店舗が市場に加わるごとに、
  a) 売上高あたりのOPEX(資本的支出)の低下
  b) 1平方フィートあたりのGMV(流通取引総額)の上昇
  c) 将来の店舗に関する信頼区間の改善
  (参入ブランドの店舗パフォーマンスを予測する能力の    
   関数として測定)
が生じ、低コスト、高収益、低リスクは、経済性の向上につながります。
 他の小売業者や「WeWork」のような資産集約型のビジネスでは、一般的にこの数値は逆の方向に向かいます。

 また、ブランドは「Leap」に実店舗でのビジネスを100%任せているだけでなく、場合によっては、「Leap」のビジネスがそのブランド独自のD2Cチャネルを上回ることもあります。

 「Leap」は、テクノロジー、店舗管理、不動産の専門知識を統合し、小売業者がより迅速かつ効率的に店舗を開設できるよう支援しており、人気ブランドが「Leap」を利用することで、販売チームや経営資源、その他の運営ツールを備えた店舗を「わずかな時間」でオープンすることができます。

 これらに加えて、「Leap」は小売業の地主、デベロッパー、仲介業者と協力して、小売市場全体やショッピングセンターを構築することも行っていたり、ニューヨークのブリーカーストリートやカリフォルニア州ベニスのアボットキニー大通りのように、互いに隣接する店舗を同じブロックに配置することで、地域および国内のスケールメリットを生み出し、ブランドが買い物客とより迅速に接触できるようにし、結果として販売実績が向上するようにしています。
 更に、「Leap」は家主と直接契約を結ぶことで、ブランドと家主のリスクを同様に軽減しています。

4.最後に

(出典:Leap youtubeより)

 小売業者は、店舗がデジタル・プラットフォームの延長線上ではなく、むしろその逆となるように、実店舗を消費者にとっての体験とすることに、ますます重点を置くようになっています。
 アメリカの傾向によると、ほとんどすべての人がオンラインで買い物をしているにもかかわらず、最も接続性の高い消費者でも 54% が最近実店舗で小売製品を購入したと回答しています。

 「Leap」は、自社ブランドを立ち上げるのではなく、ソフトウェアと実店舗でのサービスの販売を選択することで、事実上「as-a-service*」小売プラットフォームとして機能しています。

*as-a-service:主に製造業が製品の販売から製品機能のサー
   ビスとしての提供へと提供する価値を変更し、顧客の
   コストダウンを図るとともに製品販売に関する競合と
   の製品競争から離脱し、収益性の向上を目指すビジネ
   スモデル

 この「as-a-service」戦略は、小売の分野ではすでに静かに人気が高まっており、Internet of Thingsのガジェットを販売する「b8ta」のような企業などもあります。
*「b8ta」は、アメリカでは既に事業停止していますが、日本では、新店舗を拡大していっています。

 デジタルで生まれた若いD2Cブランドの大手が、限界CPO*を見つけるために「as-a-service」企業に頼るようになると、ブランドが活動するプラットフォームとしての地位を確立するために戦う新しい新興企業の台頭を見ることができるかもしれません。
*限界CPO:これ以上1件の受注にコストをかけると、コスト
      費用によって採算割れしてしまう指標

 過去10年間がオンライン小売によって定義されたとすれば、次の10年間はリテールの「as-a-service」によって定義される可能性があるかもしれませんね。

 日本では、先述した「b8ta」の他に、渋谷パルコとスマートメディアが協業し、スマートメディアがキュレーションしたD2Cブランドや商品を実際に見て体験できるスペース「no-ma」を、渋谷スペイン坂にオープンしました。

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(出典:retailguideより)

 「no-ma」も「b8ta」に似たような店舗ですが、「Leap」のようなサービスをする企業はまだないかと思います。
 商品を製作せず、店舗開発と運営のプロフェッショナルサービス。
 近い将来には、このようなサービスを行う企業が出てくるかと思います。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。 
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