変化・変形する家具
こんにちは、コーイチです。
今回は、元祖「人をダメにするソファ」をアメリカで販売している「Lovesac」という企業を見ていき、日本の家具業界の状況と数種類の家具だけでこれだけの収益を出せるような企業が日本にも出てくるのか考えていきたいと思います。
1. Lovesacとは
(出典:Lovesac youtubeより)
The Lovesac Companyは、コネチカット州スタンフォードを拠点とし、独自の「Designed for Life®」アプローチにより、ユニークで高品質な家具をデザイン、製造、販売するテクノロジー企業です。
現在の製品は、特許取得済みの『Sactionals』と呼ばれるモジュール式のソファ、『Sacs』と呼ばれるプレミアム・フォーム・ビーンバッグ・チェア*、そしてそれらに付随するホーム・デコレーション・アクセサリーで構成されています。
*ビーンバッグ・チェア:やわらかい袋に、豆や穀類などを詰めたもの。
イノベーションはLovesacのデザイン哲学の中心であり、主力製品はすべて実用新案のライセンスによって保護されています。
Lovesacの製品は、主にオンライン(www.lovesac.com)で直接販売されていますが、ショールームや、第三者の小売業者によるショップ・イン・ショップやポップアップ・ショップなど、消費者が直接触れることのできる場所でも販売されています。
収益の大半は、『Sactionals』から生み出されています。
『Sactionals』は『シート』と『サイド』で構成されるソファで、様々な色や生地の『シート』と『サイド』を提供しており、顧客はそれらから自分の好みに合わせて、好きなように組み合わせて商品を購入することができます。
また、飲み物のホールダー、足パッド、枕、テーブル等の、主力商品に取り付けるアクセサリーなども提供しています。
2. Lovesacの始まり
(出典:Lovesac youtubeより)
1995年頃、世の中にあるクッションの大半は、袋の中に豆を詰めたものでした。
創業者のショーン・ネルソンは、そのクッションの使い心地に不満を覚え、18歳の頃から実家の地下室でクッションの研究を始めました。
ネルソンは当時の恋人と一緒に巨大な素材を切り出し、そこに柔らかいものを詰め込みました。
最初のLoveSacの商品を社交パーティに持ち込んだところ、すぐに友人たちからLoveSacを買いたいという問い合わせが相次ぎました。
また、LoveSac社の3人のオーナーの1人で、U.S.A.でスペイン語を専攻していたクリスチャン・ヤンケもこの頃から参加し、Deseret Industries社に行って15ドルのミシンを買い、ネルソンらと一緒に2つのLoveSacを作りましたが、すぐに売れてしまいました。
その状況を見て、彼らは中小企業のライセンスを取得することを決め、LDS宗教研究所で昼食をとっていたジェームス・ハイドに、ネルソンから「ちょっと、会社のアイデアがあるんだけど」と声をかけたということです。
マーケティングを専攻していたハイドは、すぐにネルソンとヤンケのもとにジェネラルマネージャーとして赴任し、1998年にLovesacを設立しました。
ネルソンと彼の新しい仲間たちは、ネルソンの家の地下室で初期のLoveSacsのパターンを作りました。
大きなビニールやベルベットの中には、座る人に合わせて簡単に変形するメモリーフォームが詰められています。
デザインに自信が持てるようになると、彼らはユニオンビルにブースを設け、大学生たちに「ダサい家具の代わりになるもの」をアピールしました。その後、Mayfest(現在のRedfest)やその他の地元のフェスティバルにも出店しました。
そのころは、スプレーでロゴを描いたボロボロの大きなバンで配達したりして、ブレイクするまでの数年間をやりくりしていました。
その後、2001年にLovesacは10代を対象とした衣料小売業者から1万2000点ものクッションを受注することに成功し、翌2002年にはミルウォーキーにショールームをオープンしました。
2005年、シリコンバレーの起業家たちの間でLovesacのクッションが大流行し、Fox TVのリアリティショー「The Rebel Billionaire」で優勝しました。
その時、審査員であるヴァージン・グループの会長リチャード・ブランソンから100万ドルを獲得したということです。
その結果を受け、2008年にはLovesacのクッションがアメリカの映画館で導入され始めました。
そして2018年6月25日にナスダックに新規上場し、Lovesacは現在、アメリカ国内で72ものショールームを展開しています。
3.製品の特長
Lovesacが展開する製品は『Sactionals』『Sacs』『アクセサリー』の大きく三つのカテゴリーからなります。
①Sactionals
(出典:Lovesac youtubeより)
一つ目は、主力製品であるSactionalsです。
Sactionalsは、部品を組み合わせることでいかようにも変形することができるソファーです。
Sactionalsの部品は、大きく「シート」と「サイド」の二つから成り立っており、これらの組み合わせ次第でいろんな形に変えることができます。
また、このソファーは洗濯可能となっており、飲み物をこぼしても心配ありません。
基本的な利用ケースに備えたセット販売をベースとしており、価格は1,600ドルから5,656ドル程度で、ターゲット層は年収10万ドル以上、24歳から45歳までをターゲットにしているとのことです。
②Sacs
(出典:Lovesac youtubeより)
二つ目の看板製品はSacsです。
Sacsは巨大なクッションで、どのような形にも変形することができ、「世界一快適なクッション」を標榜しています。
日本でも「人をダメにするソファ」が色々なメーカーから出ていますが、その元祖とも言えるのがLovesacのSacsです。
大きなSacsは最大4人を収容することができ、こちらも洗濯することができます。
また、元のボリュームの8分の1のサイズにまで縮小することが可能となっており、収納スペースの節約にも繋がります。
価格は520ドルから1,040ドルほどとなっています。
③アクセサリーなど
(出典:Lovesac youtubeより)
Lovesacはソファーに関連したアクセサリーの販売も行なっています。
その他の製品としては、ソファーの脇に設置するドリンクホルダー、サラウンドサウンドシステムなどがあります。
主力製品であるSactionalsの売上は7,256万ドルほどあり、全体の売上の71%ほどを占めており、Sacsの売上は2,685万ドルほどで、全体の26%ほどとなっています。
4.コロナ禍での対応
(出典:list23.comより)
Lovesacは、シアトルとワシントンD.C.エリアで「Mobile Concierge」を開始しました。
「Mobile Concierge」とは移動式ショールームのことで、顧客の自宅を訪問し、顧客に合わせてカスタマイズされたショッピング体験を提供するというものです。
コロナ禍の昨年、ショールームやバーチャル予約、Facebookのライブデモを追加して以来、「Mobile Concierge」は、Lovesacが顧客にリーチし、ブランドと製品を共有するための新しい方法を見つけることへのコミットメントを示す最新の例ということです。
Mobile Conciergeでは、Sactionalsがどのように機能するかのライブデモンストレーション、Lovesacの最新の製品イノベーション、Sactionalsの様々な詰め物の種類の体験、様々なファブリックカバーのオプションに触れ、自分のスペースやスタイルにぴったり合うSactionalsのセットアップをデザインすることができます。
顧客は、Lovesacのアソシエイトと一緒に商品を購入し、最短1~2週間で自宅に商品が届きます。
LovesacのCEOで創業者のネルソンは、「混雑したショッピングセンターや限られた駐車場でのストレスから解放され、お客様が製品を購入できる新しい方法を作りたいと考え、お客様のご自宅にショールームをお届けし、1対1のオーダーメイドのショッピングを楽しんでいただくことにしました。」と語っています。
Mobile Conciergeは完全に機能するショールームで、顧客は購入する前に、拡大する製品ラインを見たり、新しい革新的な製品を試したり、Total Comfortの効果を実感したりすることができます。
また、Mobile Conciergeは、長期的な視点に立った製品やプログラムを通じて顧客との長期的な関係を築くことに重点を置いています。
Lovesacは、Mobile Conciergeの他の市場の調査を続けており、2021年の下半期に追加の市場でこのサービスを展開する予定とのことです。
5.最後に
(出典:Lovesac youtubeより)
家具の小売業としては、非常に少ないアイテムながら、その製品アイデアや販売手法で短期間で成長したLovesac。
今四半期の純売上高は、56.1%増加し、Mobile Conciergeとキオスクを含むショールーム、インターネットの売上高、ポップアップショップ、ショップインショップなどのその他により、売上高は、非常に好調だったということです。
日本ではまだ未発売ですので、ebayのセカイモン経由でしか購入出来ませんが、いずれは普通に販売されるかと思います。
日本でもコロナ禍により、外出自粛を余儀なくされたことから在宅時間が増え、家庭内の日用品など生活雑貨やインテリア用品、家の中を整理する収納家具などの売り上げが大きく伸びました。
家具・インテリア製造小売最大手のニトリや、北欧家具のイケア、生活雑貨の無印良品などは、一通りのアイテムが手ごろな値段で買い揃えることが可能なため、売り上げが好調だったようです。
また、D2C業態として「LOWYA」ブランドを展開するベガコーポレーションも、前年を大幅に上回る業績を確保しました。
しかし、コロナ禍で家具・インテリアの買い替え需要は増加したものの、客足の多くは低価格帯家具を購入しており、こうしたラインナップに勝る大手やEC専門店と小規模店で業績の二極化がより鮮明となっています。
また、低価格帯家具メーカーは、家具のみではほとんど利益が出ないため、周辺商品や日用雑貨などで利益を出すようにしています。
Lovesacの家具の特徴は、フレキシブル性、拡張性、シンプルという点かと思います。
特に拡張性を持った家具はほとんどないので、このようなアップデート出来る家具は良い着眼点かと思います。
少し高くても、長く使えて、アップデートできるものはいいですよね。
日本の長く続くデフレが解消しない限り、家具の売れ筋は現在と変わらないかと思いますが、いずれ日本でもLovesacのような、独創的な家具や販売方法を行うメーカーが出てくるのかと思います。
今回も最後まで見ていただき、ありがとうございました。 よろしければスキ、フォロー、サポートのほどよろしくお願いいたします。
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