見出し画像

未来をかたちに

こんにちは、コーイチです。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
さて今回は、個人的にも好きな家電メーカーで、「自由な心で夢見た未来を、技術の力で実現し、人々の役に立つ」というミッションのもと、これまでにない製品を提供している「バルミューダ」が初の旗艦店を作ったので、あらためて「バルミューダ」のものづくりの歴史やこだわりなどについて考えていきたいと思います。

1. バルミューダの始まり

画像1

 バルミューダの創業者である寺尾氏は、1990年に高校を中退し、わずかな着替えと本と筆記具、ウォークマンを入れた鞄ひとつで地中海沿岸を一年間放浪する旅に出ました。
 スペインの大地をバスや徒歩で移動しながら、「豊かさとは何か」を自問自答し、「最小限ですませるには最良の道具が必要である」とこの時に学びました。

 日本に帰国し、音楽活動に専念したものの、音楽の夢は実らず、寺尾氏は初めて挫折をしました。やりきるだけやった音楽から次の行動を考えたとき、楽曲制作のために使っていたコンピューターやデスクチェアを通して、「日常の道具の大切さ」を意識するようになっていました。

 オランダのデザイン誌のデザイナーの積極的な提案や力強い活動の様子を紹介する記事に大いに鼓舞され、「自分の手で、より良い道具を作りたい」とデザインや製品開発を独学する日々が始まりました。
 まず始めたのは、秋葉原の電気街に足しげく通い、素材の特色や製品の構造を関係者に尋ね、工業製品や製造に関する専門用語をひとつひとつ吸収することでした。

 その後、人から聞いた専門用語をもとに、電話帳で調べた50社以上の関連の工場に連絡をとって訪ね、相手にされぬことも多いなか、思いに応えてくれた工場もありました。
 金属切削加工を専門とする東小金井の会社に作業場を借り、素材を手にとりながら学んでいき、ヤスリ掛けから始めて加工機械の使い方を習得、金属加工、組み立て作業を通して、製造方法はもちろんデザインの重要点も探究する日々となりました。
 さらにCADを覚え、Macのノートパソコンの冷却台で、キーボードの打ちにくさも解決する斜めの台の製品をデザインしました。
 2003年、ロゴや専用ウェブサイトも自らデザイン、製品の販売をスタートさせます。
これがバルミューダ製品第一弾となる「X-Base」となります。
 デザインはすべて独学、小さな部品ひとつに始まり、求めるものを確実に作りあげる過程を習得していったうえで、寺尾ひとりでスタートし、バルミューダは誕生しました。

2. 試行錯誤と倒産の危機

画像2

 2003年のパソコン冷却台「X-Base」を発表後、ニュースサイトで取り上げられ、その紹介から1時間もしないうちに最初の注文が入ってきました。
 予想以上の反響を追い風として、さらにコンピューターやデスク回りの製品開発を進めていきました。

 その後、工場に製作を依頼したパーツを寺尾自ら組み立て仕上げた、ハンドメイドの製品が、2004年発売のLEDデスクライト、「Highwire」となります。
 続いて2008年に開発したデスクライト「Airline」は、バルミューダで金型を用いた量産製品の第一弾となりました。
 一般的なデスクライトに比べると高額でしたが、インテリアショップでの取り扱いがなされ、専門家の評価も得て、順調なスタートを切ることができました。

 この時、社員は寺尾氏を含んでわずか3名という小さな企業で、「求めていた究極のデスクライト」を実現できたことの醍醐味、そして満足感と自分たちが作った製品に人々が興味をもってくれ、使ってくれる嬉しさを実感していました。
 しかし、その状況は2008年末に起きたリーマンショックにより、一変しました。
「このとき、もっと多くの人にバルミューダの製品を使ってもらいたい。必要とされる物でなければ、多くの人に使ってもらうことはできない。必要だと思ってもらう物でないとならないのだ。」と考えたということです。

3.次なるステージへ

                (出典:dotonlinestore youtubeより)

 倒産の危機を前にして「何が重要なのか」と悩んだ寺尾氏は、「ここで倒れるのなら、作りたかった製品の開発をしよう」と決意し、以前から関心を持っていた扇風機づくりを始めました。
 寺尾氏の頭には地球温暖化とエネルギーの問題があり、次の時代の新しい良い扇風機が必要なのではないかと考えていました。
 「扇風機の価値とは『涼しさ』ですが、扇風機の風に長時間あたっていると気持が悪くなる。窓から入ってくる風で感じる『心地よい涼しさ』を、扇風機で作り出せないものかと考えていました。」

 様々な専門書から空気抵抗の少ない翼面形状を学ぶことはできたものの、「自然界と同じ風」を作る術はどこにも載っていないため、自然の風の研究から始めようと、風速計を手に、自然の風のデータを集めることも試みました。
 突破口となったのは、以前から通っていた町工場で、職人さんが扇風機の風を工場の壁にあて、風が壁にぶつかることで風の渦が壊れ、面となって跳ね返り、自然の風に近い状態になっていたことでした。
 また、ある日のテレビ番組で大勢の子どもたちによる「30人31脚」を目にし、「歩調の速い子は遅い子に引っぱられる。流体でも同様のことが起こるのではないだろうか...」と考えました。

「回転速度の異なる風を隣りあわせで発進させることで、速い風は遅い風に引っぱられ、ぶつかりあうのではないか?」。その考えから全く新しい二重構造の羽根を考案、数十種類の羽根を試作し、それらの動きを細かく検証したり、舞台用のスモークマシンでの、風の流れを探る実験も行いました。

こうして2010年4月、独自の新技術「グリーンファンテクノロジー」を搭載した「GreenFan」がついに完成しました。
 「風の質」を根本から変えだけでなく、DCブラシレス・デジタルモーターによって最弱運転時の消費電力は4ワット(当時)とし、新開発のこのサイレントモーターで運転音もわずか13デシベルに抑えた、かつてなかった扇風機となりました。
 「GreenFan」発表後、「消費電力を抑えながら『心地よい涼しさ』を得る方法」として、多くの人々が新しい扇風機の魅力を感じてくれました。3万円台とそれまでの扇風機では考えられない価格であったにも関わらず、販売を始めた2010年度、そして翌年度と、予定していた台数を完売する結果となりました。

 アイデアから始まり、かつてなかった製品の企画に積極的に取り組んでいく。クリエイティブとテクノロジーで「より良く生きるための道具」を目ざすバルミューダの製品開発は、さらなる空調家電の開発に向かいました。
 空気清浄機「AirEngine」を発表した2012年以降、バルミューダではエンジニアチームを増強してきました。現在はエンジニアが数十人に増え、社員の半数になっています。

 2013年には、着脱式のタンクをなくし、やかん等で直接給水ができる加湿器「Rain」を発表。ラジエーターに中空構造のアルミを使用することでヒーターの立ち上がりを早くした「SmartHeater」も開発しました。バルミューダ製品とスマートフォンなどのデバイスをつなぐテクノロジー「UniAuto」も同年の発表となりました。

 こうした開発の背景には「現状と未来を結んだところの“ギャップ”こそが新たなプロジェクトの原動力になる」というバルミューダの開発に対する基本的な考えがあります。
 あえて制約を設けることなく発想し、裏付けとなる技術の確立にそのつど挑む姿勢。「人々に必要とされ、人々の役に立つ道具」を、バルミューダのエンジニアチームは今日も探り続けています。

                (出典:Balmuda Korea youtubeより)

4.物より体験

                  (出典:BALMUDA youtubeより)

 2014年頃、寺尾氏を始めバルミューダのデザイン、エンジニアチームがこれまで以上に考えていたことがありました。
 それは、日常の道具は人々の体験のためにあり、最も大切なのは、その物を通して得られる気持よさや心地よさで、物より体験では。その物を通して得られる『よい体験』をもっと感じていただく方法はないものだろうかということでした。
  生活のなかで嬉しさを感じ、時に感動に包まれる体験のために、バルミューダのチームが着目したのは「食べる」という行為でした。五感のすべてが活かされる「食」に深く関わるキッチン家電の開発です。

 その最初の製品となったのが、「BALMUDA The Toaster」となります。
 食に関する科学書から学んだ知識を活かして、パンを焼き上げるしくみも徹底的に研究し、絶妙なパンの焼き上がりを実現するヒーター制御を始め、テクノロジーを駆使したバルミューダ独自の「スチームテクノロジー」を開発しました。
 こうして「Hello Kitchen!」のキーワードとともに発表した、バルミューダのキッチン家電は、「多くの人に必要だと思ってもらうもの」、「嬉しさをもたらす製品」となり、「食べる」行為と結びついたのです。

「BALMUDA The Toaster」のデザインは、古来パンが焼かれてきたかまどのように「おいしいパンが出てくる道具」に徹しています。
 またバルミューダでは、「よりよい体験」のために、このトースターを使った「おいしいパンのレシピ」も考えています。
 
 その後、釜を二重にした独自構造を持ち、蒸気の力で米を炊き上げる炊飯器「BALMUDA The Gohan」、容量600mlのコンパクトな電気ケトル「BALMUDA The Pot」、オープンドリップ式コーヒーメーカー「BALMUDA The Brew」、360°広がる立体的で抜けるような気持ちよいサウンドと、グルーヴを増幅させる輝きでライブステージのような臨場感をつくり出す 「BALMUDA The Speaker」など、日々用いられる道具であるだけでなく、嬉しさ、さらには感動という体験をもたらすことのできる家電の開発を続けています。

                  (出典:BALMUDA youtubeより)

5.テクノロジー分野に

                                             (出典:MTTModev Mobile Talk youtubeより)

 バルミューダは2021年8月にハイテク製品に特化した新ブランド「BALMUDA Technologies」を発表し、その第1弾製品となる5Gスマートフォン「BALMUDA Phone」を発表しました。
 今の世の中にあるスマートフォンは、画一的になってしまっている印象があり、人類が総出で使っている道具なのに、種類が用意されていないという点と、画面サイズが「すっきりと、より良い体験ができるスマートフォン」がないという点から、スマートフォンを作ったということです。

 スマートフォンは京セラを製造パートナーに迎えて開発し、4.9インチの高精細画面と美しい背面のカーブで構成された、コンパクトかつエレガントなデザインが特徴で、手に持った時の持ちやすさや、自然に手のひらに収まる形状を追求したといいます。
 スケジューラ、計算機、カメラ、メモ、時計などの基本アプリは独自開発したとのことです。
 同ブランドはスマホなどのIT機器の他、AV機器、製品に関連するアプリケーションやサービスなどの展開も予定しているといいます。

6.バルミューダ初の旗艦店

画像3

画像5

画像4

                                                                          (出典:balmuda.comより)

 11月19日、初の旗艦店となる「BALMUDA The Store Aoyama」を東京・南青山にオープンしました。 
 店舗面積は約90坪(300平米)で、同社の全ての製品をブランドの世界観の中で体験できる発信拠点の場となっています。
 建築デザインは、欧州の歴史的な建造物をモチーフにしており、クラッシックの中に新しさを融合させたデザインになっており、店内は2フロアに分かれ、BALMUDA Technologiesの第1弾製品である5Gスマートフォンのいち早い体験が可能となっています。
 1Fフロアでは、オンラインストア限定商品を含む、全製品を展示しており、専門スタッフが使い方や質問に対応しています。
 2Fフロアでは、トースターやレンジを使ったワークショップや試食会などを実施しています。
 さらに、ここでしか見ることのできない製品のデザインスケッチなども展示し、美術館で作品を見るような体験を提供しています。
また、今後は同社のキッチンチームによるイベントや、製品のワークショップなども予定しているとのことです。

7.最後に

 バルミューダが目指しているのは、20年後に世界有数の企業になるということです。
 寺尾氏は、バルミューダがしていることは、「再発明」というよりも、「Another(アナザー)の提案」をしているということで、明らかに既存の機種と違う提案をすると言っています。 
 バルミューダが大きくなる方法はイノべーションしかなく、客単価および客数が多い世界に進出していく必要があり、今回のBALMUDA Technologiesで入っていくスマートフォンの分野は、このような流れを見据えての活動ということです。

 バルミューダ製品の魅力は、機能性とデザイン性を兼ね備えたところにあるかと思います。
 バルミューダのプロジェクトはいつも「作りたい物」の発想から始まると言うので、寺尾氏の頭の中では、きっと未来に作りたい物がもうあるんだろうなと思います。
 今後もバルミューダの動向には注目していきたいと思います。

 今回も最後まで見ていただき、ありがとうございました。        よろしければスキ、フォロー、サポートのほどよろしくお願いいたします。
 




よろしければ、サポートお願いします。サポートされたものは、今後の活動費として活用させていただきます。