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J庭54新刊『そこに光あれ』裏話

裏話というか、作者の自作語りです。盛大にネタバレを含みますので、本作をこれから読む・中身はまだ知りたくないという方は、恐縮ですが、お読みになってからご覧いただけますと幸いです。


内容について

執筆の動機

本作は、私が第二の故郷とこよなく愛する「サンフランシスコ・ベイエリア」を舞台にした三部作の三作目になります。

前二作とのクロスオーバーになっていて、それぞれの主人公達がちょっとずつ出演しています。とは言え、前二作を読んでいなくても本作単体でもお楽しみいただけるように、主人公・健司と、お相手・アメリカ人エンジニアのディックの恋と成長を主軸に据えております。

『期間限定の恋』は、第一部・第二部(+番外編SS)で十万字を軽く超えています。長編あるあるだと思うのですが、脇役さえ愛しいという奇跡が起きました。読者様によっては主人公CPのお邪魔虫と思うかもしれないディックです。異国に引っ越すというと「素敵」と思われがちですが、生活立ち上げ時は知り合いもいなくて本当に心細いものです。『期間限定』第二部では、勇樹のアメリカ転勤に伴い訓志は渡米します。言葉も分からず知り合いもいない。孤独な訓志に救いの手を差し伸べて親切にしてくれたのがディック。なのに報われなかったイイ奴。「いつか彼を幸せにしてあげたいなあ」と長いこと思っていました。

また、拙作の中でも、特に字書きさんから好評を頂くことが多い『王子様はまだ恋を知らない』。同性愛差別の厳しい国で生まれ育ち志を持って生きる決意を持ち、ゲイであることを隠し抜くつもりだった冬馬。短い日本での滞在で、志を同じくする商社マンと知り合い、自らの性的指向と真剣に向き合い悩み、答えを出していく物語です。これも、ラストで主人公はアメリカに渡ります。彼らのその後は一体どうなったのか。作者は親心で気になりますし、読者様にも彼らの近況?をおつたえしたい。

一作目で幸せになれなかった脇役を幸せにし、二作目で波乱万丈の末ようやく結ばれた二人のその後を見せる。こんな壮大な?ミッションを担った主人公として、三作目『そこに光あれ』の健司は誕生しました。しかし彼は、幼馴染への失恋を拗らせるという傷はあるものの、壮大なミッションの重みを感じさせることなく、猪突猛進な行動力を見せたり肝心なところでヘタレていたり、手前味噌ですが味のある可愛いキャラ(それも、女の子っぽいんじゃなくて男の子っぽいヤンチャさがある可愛さにこだわりました)になったんじゃないかな、と思っています。

難しかったこと

書いていて難しかったのは、サンフランシスコ・ベイエリアは私がよく知っている土地(だけど直近は行ってない)であるがゆえに、逆に読者様に分かりづらい描写になってないか? という点と台詞回しでした。

これまでは舞台がアメリカでも、主人公CP同士は日本人・日本語だったのですが、本作は初めて攻めが外国人になっています。本作では割り切って「日本語」に倒しました。なので、英語では多分存在しない言い回しがあります。例えば、健司がディックにタメ口に変わる、という場面がありますが、あれ英語で正確に表現するのは難しいです。もちろん英語でも、とても丁寧な言い方と友達同士の俗語的な喋りの違いはあるんですが、日本語ほどきめ細かくない。でも、いきなりタメ口っていうのも日本人には違和感があるよな~と思いながら冒頭の台詞は書いておりました。ただ、完全に日本語だと雰囲気出ないので、「ちょっと英語っぽさもある日本語」が時々現れるという(笑)独自なものになっております。

楽しかったこと

これが完結作だ! と思っていたので、ここぞとばかりにサンフランシスコの名所を盛り込んだところです。最近ようやく「Withコロナ」になってきて海外旅行は空前の盛り上がりだそうです。もし皆様の観光のご参考になればこんなうれしいことはありません。

あとは、二人の関係が近しくなってから、健司の天然というか天真爛漫さが炸裂するところです。この二人のラブシーンは「きっとこいつら、こういうこと喋るだろうなぁ」とニヤニヤしながら書きました。そこが自然で可愛くてよかった、というご感想もいただきました。本当に楽しかったです。

感慨無量です

『期間限定の恋』13万字
『王子様はまだ恋を知らない』5万字
『そこに光あれ』5.5万字
三部作で20万字超えたんですね。いずれも、大好きで大切な子ばかりです。彼らの物語を私が書くのは終わっても、彼らの人生は続いていくような気がしてなりません。だからこそ、三部作を総括して、ラストシーンは希望と笑顔に溢れています。彼らに『光あれ』と願ってタイトルを付けました。

めちゃくちゃ思い入れ持って書いた作品なので、J庭自体の活況もあれど、これまでで一番多くの読者様に手に取っていただけたのが嬉しいです。

表紙・装丁について

デザイン

絵師様にお願いしてカスタム表紙イラストを描いていただくのは、同人誌づくりの醍醐味でもあるのですが、昼職のスケジュールや公募原稿とのバランスがキツキツだったので、フリーイラストとフリー写真の組み合わせで自作しました。

ヘッダーにあるように、表1から表4まで大胆に写真でサンフランシスコの景色を見せ、主人公の後姿を表1に配置しました。

ゴールデンゲートブリッジの構図問題

拘りとしては、ゴールデンゲートブリッジを大きく入れたかったです。やはりサンフランシスコの象徴ですので。かと言って、橋が表1(表表紙)に来てしまうと主人公とかぶってガチャつく。なので、表4(裏表紙)に橋が大きく映り込む構図の写真を探しました。そして、できればカリフォルニアらしい、抜けるような青空にしたかった。
ですが、表4側に橋が大きく映る角度で撮影しようとすると、逆光の都合で必ず夕日になってしまうことが分かりました(未練がましくGoogleマップで確認したんだよ…。)

サンフランシスコ市街地
よくあるGGBの写真。手前にばばーんと映ってて、だんだん小さくなる。こういう構図が多いのは、東から映しているから。

とはいえ、タイトルにもある「光」を表現する良い色合いの写真だと気に入っています。表紙用紙にはパール系を使っていますので、ちょっとキラキラするのもお気に入りポイントです。

まだ買えます

紙本の在庫は、あと4冊なんですよ…。いつもの庭と同じ数刷ったのですが、過去最高にお迎えいただきました。完売したら嬉しいけど、次のお庭で並べられる既刊のバリエーションがちょっと減る…かな?J庭55にて完売しました。お迎えありがとうございました!!

なお電書(PDF)もあります。お子さんがいて自宅に紙の成人向けを置きにくい方、物理本の置き場に悩んでいる方どうぞ!!


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