“幸せ” あの日見た、孫と祖父の2人のこと
忘れられない光景がある。
ずいぶん前、10年近くだろうか。近くのショッピングセンターの駐車場で車の助手席から見た、時間にすれば5秒くらいの一瞬の光景のことだ。
買い物を終えて帰宅するため、駐車位置から車が発進した。その時に、目の前のエスカレータホールに男の子と高齢の男性が現れた。孫と祖父だろう。
孫の男の子は、小学校低学年に見える。今なら幼稚園児とは違ったコミュニケーションが取れて楽しいだろうし、祖父の言うことを聞く年頃だろう。
祖父の男性の方は、60代前半くらい。小学生の元気な孫と向き合う体力がありそうだ。
その2人が目の前を歩いていく。
孫の男の子の方は子どもだからか、祖父のことはお構いなしに、どんどん先を歩いて行く。
祖父の方は先に行ってしまう孫のことを「まいったな」と、困ったような苦笑いを浮かべて早足で追いかける。
車が駐車場を出る時に見た、その一瞬の光景がずっと記憶に残っている。
お金では手に入らない光景だったからだ。
お金で買える“モノ”、“コト”はたくさんある。服や時計、車。旅行や食事。ただ、孫はそうはいかない。
そもそも自分に子どもがいるのか。その子どもは結婚して相手がいるのか。結婚して相手がいても子どもが授かれるのか。
いくつもの幸運が重なって孫を持つことができる。それはお金では買えない“幸せ”のひとつだ。
何気ない光景に見えても、いくつもの幸運の上に成り立っている幸せな光景がある。そのひとつが私が見た、1人で先にどんどん歩いていく男の子と、苦笑いを浮かべてその男の子を早足で追いかける高齢の男性の2人の姿だった。
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