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思いつくままに文楽と日常のエッセイを書いています

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“幸せ” あの日見た、孫と祖父の2人のこと

忘れられない光景がある。 ずいぶん前、10年近くだろうか。近くのショッピングセンターの駐車場で車の助手席から見た、時間にすれば5秒くらいの一瞬の光景のことだ。 買い物を終えて帰宅するため、駐車位置から車が発進した。その時に、目の前のエスカレータホールに男の子と高齢の男性が現れた。孫と祖父だろう。 孫の男の子は、小学校低学年に見える。今なら幼稚園児とは違ったコミュニケーションが取れて楽しいだろうし、祖父の言うことを聞く年頃だろう。 祖父の男性の方は、60代前半くらい。小

    • 【文楽】美しい世界

      生きているように華麗に操られる人形。 語り手の太夫の過剰と言えるほどに感情豊かな大きな声と、体にぶつかってくるような語り。 観客の体を直に震わせるかのような、低くて大きな三味線の音。 これらが一体となって迫って圧倒してくる。 自分が体験してきた映画のようなエンターテイメントとは全く違う、観劇後の強烈な余韻。 体の芯を揺さぶってくる芸。 文楽を観て「すごかった」という言葉を説明すると、こんな感じになる。 文楽のストーリーは特殊だ。 仕えている主君のためとは言え、

      • 【豊竹咲太夫】義太夫節の世界へ導いてくれた人。

        豊竹咲太夫さんの義太夫節を初めて聴いたのは、今から9年前、2015年3月。春を目の前にしながらも、まだまだ底冷えのする京都での公演だった。初めての文楽鑑賞だった。 咲太夫さんの語る義太夫節の感情豊かで、体にぶつかってくるような大きな声に圧倒された。 義太夫節と言えば、低音でハスキーなくせのある声のイメージがあった。だが咲太夫さんの声は、声楽のテノールのような高音で艶のある声で、文楽初心者には耳にすっと入ってきて聴きやすかった。 咲太夫さんらが語る義太夫節以外にも、3人で

      “幸せ” あの日見た、孫と祖父の2人のこと