【URBAN SLOW LIFE#1】千駄木・根津の街を歩きながら"旅をかたちに残す"ことを考える

まえがき

先日、世田谷の生活工房ギャラリーで開催していた、編集者・岡本仁さんの展示「岡本仁の編集とそれにまつわる何やかや。」を観に行ってきた。そこでは、彼の日常生活の中にある”旅”が、写真・テキスト・空間などの形として表現されていた。そこに強い親近感と、私も自分の旅を形に残さなければといった渇望に近い思いが湧いてきた。

私は2022年3月に東京に越してきてからは、それぞれの地区・地域に異なる顔を持つ東京の街の持つ魅力に魅せられ、時間があれば東京の街を散策している。

ただ歩いている。歩きながらさまざまなことを考えている。なんだか、歩いているときは自分の頭がスッキリして、足を進めるごとにどんどんと頭の回路が動いているような気がして楽しいのだ。

側から見たらただの歩いている人。ただ内側ではいろいろなものがぐるぐるしているのだ。このぐるぐるを少しでもめにみえるものへと残せることができればと思いこの記事を書いている。

この「URBAN SLOW LIFE」では、大都会・東京の街を歩きながら、考えたこと、偶然出会ったものたちなど、旅の記録を載せていきます。

今回は、千駄木・根津の街を歩きながら、「旅をかたちに残すこと」について考えてみた。

旅はネットでは出会えないノイズで溢れている

千駄木駅近くの、よみせ通り商店街。

どうやら僕は旅が好きらしい。

大学1年生の夏休みにベトナム・カンボジア・タイへ一人旅に出てから、国内外問わず、時間と気力が許す限りどこかに旅に出てしまう人になってしまった。旅から帰っている途中でも既に、次の旅先を探していることもある。("旅"の基準は曖昧だが、自分の足を動かして訪れればそれは自分にとってはれっきとした旅である)

なぜ旅をするかと聞かれれば、「何かを探している」という答えが一番自分の感覚に近いかもしれない。でもその何かというのは、いわゆる自分探しというようなものではなくて、もっと複雑で、根源的なものなのである。

***

批評家・東浩紀の著書の中に「弱いつながり」という本がある。私達が普段使用しているインターネット上においては、グーグルで何か調べ物をするときに、検索範囲の中、要は自分の頭の中にある検索ワードに該当するものにしか出会えないと言う。

ぼくたちはネットから離れられない。だとすれば、その統制から逸脱する方法はただひとつ。答えはシンプルです。場所を意図的に変える。それだけです。
東浩紀(2014),弱いつながり

僕がはじめてこの本を読んだ時に、ひどく感銘を受けた。なるほど。僕が旅で探していたものは、ノイズなのかもしれないと、自分の旅について言語化してもらえた気がして、すっきりしたのを憶えている。

”旅にはトラブルがつきもの”とよく言うが、これはある意味そのとおりなのだと思う。自分が予期していなかったものが、不意打ち的に、自分の人生に降りかかってくるのだ。それは、トラブルのような悪い面だけではなく、旅をしたからこそ出会う景色や人など、良いものにも同時に言える。たまたま入った喫茶店で掛かる音楽が猛烈にタイプな曲だった時とか、旅先で気がついたら知らない人と話し込んじゃっているときとか。(あとは、超ローカル感あふれるお店の看板を見つけたときとか(笑)。)

これはよみせ通り近くにあった菜園に植えられていた看板。かわいいでしょ。

すべて偶然でしか無いんだけれど、でも全部自分で選んだ道の先の出会いであって、不思議と縁を感じざるを得ない。旅をしていると、そういった自分が予期していないことが否応なしに降り掛かってくる。そんな旅のノイズに出会うと、自分の人生が動いていることを感じれる。

出会いが次の旅先へのヒントを与えてくれる

そんな他力本願的な旅ばかりしているから、自分の決断に自信が持てなくて、毎回旅先選びには迷うのだが、今回は、とあるリサイクルショップへいくために、このエリアを選んだ。

その目的のお店というのが、以前熊本の阿蘇でお世話になったリサイクルショップ「ONE PLUS ONE」を訪れた際に紹介してもらったお店で。それ以来ずっと気になっていたし、自分の部屋のインテリアも探すついでに訪れてみた。

店名は「FUN again」。リサイクルショップに相応しい名前。ピンクいロゴが特徴的。

入店するやいなや、革ジャンがよく似合う"イカした"オーナーさんが僕のカメラを見て、「好きに撮っていってくださいね」と優しく声を掛けてくれた。お言葉に甘えて、パシャリ、パシャリと店内の写真を撮らせてもらった。

生産国や時代は違うものが並ぶが、オーナーさんのモノに対するある一定の基準によってセレクトされたであろうこだわり商品たちが並ぶ。
椅子やライトなどのインテリアはもちろん、レコードや民芸品も。

あいにくオーナーさんと話すことはできなかった。ただこうして、僕がこの店に足を運ぶことになったのも、あの阿蘇での出会いがあったからこそ。人との出会いは、自分の次の旅先にヒントを与えてくれる。そんなことを考えながらお店を後にした。

***

その後も千駄木から根津駅の方へ歩きながら、街を散策した。

つるで覆われた花屋さん「花木屋」。
味のある引き戸と、その奥のお花。


セレクトショップ「クラシコ」。
洋服やタオルなど、日々の暮らしに寄り添う日用品を取り扱う。
やさしさ。


服部ゆくお事務所。

千駄木や根津は、ご高齢の方も多いが、若者や外国人観光客も多い。どうやら「HAGISO」や「カヤバ珈琲」などが率先して、昔からある雰囲気や文化を残しつつも、それを現代に馴染む形で新たな文化を醸成している街みたい。

旅の終わりに

さて、今回のテーマ「旅を形にのこす」ということだったが、
実際旅をしながら、どうまとめていこうかなと考えてはみたものの、僕の頭の中はノイズで散らかっていて、ぐちゃぐちゃ。

僕は普段、編集を生業とし(まだ一年目だが)、あらゆる原稿を直したり、整理したりしているわけだが、いざ自分のこの旅のことをまとめようとするとどうまとめていけばいいかわからない。一体どうかたちにしていけば良いの?

とにかく旅をかたちにしてみるということで、今回はある種開き直って、千駄木・根津を回りながら考えたことの回想録のようなかたちとなった。今後もこの旅をかたちにすることは続けていくつもりだが、次回どうなるかは、分からない。

今回出会ったお店たち
・リサイクルショップ「FUN again
・セレクトショップ「クラシコ
・花屋「花木屋」
・本屋「古書 OLD SCHOOL
・複合文化施設「HAGISO


社会学や文化人類学の力を借りて、世の中に生きづらさを感じている人・自殺したい人を救いたいと考えています。サポートしてくださったお金は、その目標を成し遂げるための勉強の資金にさせていただきます。