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光浦靖子『50歳になりまして』【読書5】


もう一つの人生も回収したいんです。

光浦靖子「50歳になりまして」P.5



光浦さんが数年前留学したい理由をテレビで話していて、すごく気になってたが、やっと著書を読んだ。

最近カナダから一時帰国しているようでよくテレビで見かける。やっぱりおもしろい人だなぁ。



スーさんもよく言っているけれど、女性の人生は多種多様なはずなのにロールモデルがあんまりいないんじゃないか?成功譚少ないんじゃないか?

女性の人生は、
仕事をしている、してない、結婚している、してない、子供いる、いない、で2×2×2の少なくとも8パターンに分類される。
みんな隣の芝生が青く見えるが、その8通りの生き方のどれがいいのかなんて正解なんかない。

ジェーン・スーさんあちこちで談

ということで、光浦さんを年上の私の目指すべきロールモデルとしていきたいと思う。

光浦さんが人生の一発逆転ホームランにしようと留学を目論んで、仕事をほぼ全部やめたところで世界はパンデミックになり急に梯子を外されてしまって路頭に迷っていたころの話。

家で一人でいる時間は今まで以上に増え、おかしな話ですが、緊張してリラックスしていないと、気を張って一人の時間を楽しんでいないと、気を抜いたら否が応でも自分と向き合ってしまいます。

「50歳になりまして」P.7

独身じゃなくてもこういうことありますよね。
特に近頃の在宅勤務、在宅ワークのデメリットでもある。仕事嫌だ辞めたい、なんて日々思っているけれど、職場の良いところは「自分とは向き合わなくても良い」ところ。会社や上司のおかげで自分のことを変に考えなくて済んでいる。

何か行動を起こす時って、理由は一つじゃないですよね。いろんな理由が、複雑に絡み合って、(中略)全てがそちらの方向を向いてるようになった時に、決断するんですよね。

「50歳になりまして」P.22

そう、その通り。

会社辞めたいって思う → 一生誰かに雇われてだれかの命令に従い続けると思うとゾッとする → 自由になるために学びなおしをしはじめる → スキルがつく → 副業、ダブルワークを始めて保険をつくる → 他の求人を眺めてみる → なんだかイケそうな気がするー → 会社でまた嫌なことがある → もう辞めてやるとココロに火が灯る

みたいな。

あれもこれも欲しい。過去のものも手離したくない。今欲しくないけど、いつか欲しくなるかもしれないから欲しい。

「50歳になりまして」P.95

染みる。そういう時期あったなあ。いろんなリミットが迫っていて、まわりの同世代の人と人生があきらかに違ってくる。8通りの女性の人生がもうすごい勢いで枝分かれしていき、適当な新しいロールモデルもおらず、どう生きて行ったらよいのかわからない。

私は神様にお願いしました。「いい具合に、諦めさせてください」と。

同上

あきらめて開き直るとすごくラクになれる。これでいいのだ。

大学デビューならぬ、カナダデビューをしようと思います。
大きな口を開けてケラケラ笑う自信に溢れた女に生まれ変わるのです。憧れていたけどなれなかった、なることを許されなかったキャラクターになるのです。

「50歳になりまして」P.110


その手があったか。大学デビュー的な手法が。そうやってもうひとつの人生を回収していけばよいのね。

母親は型にはめる人でした。
(中略)人生も性格も全部決められていました。

「50歳になりまして」P.123

アナウンサーの堀井美香さんは型にはまった生き方の方が楽と言っていて、確かに型があったほうが余計なことを考えなくていいし、道を踏み外すことも少ないからそれが良いこともある。それに、世の中も学校も子供を型にはめて育てるのが普通な時代だったし。

私が小学生のころ、ランドセルは赤しかゆるされなかった。今とはえらい時代が違うね。私立の小学校から転校してきた女の子が黒いランドセル背負っていて、すごくすごくうらやましかった。

全ては中道が良いですからね。それが大人。それが波風立てない生き方。

「50歳になりまして」P.152

いいこと言う。若いころは白黒思考しがちだけれど、なんでもグレーが良いのよ大人は。

なんでネガティブの方にフォーカスしてしまうんだろう。一人審査員。

「50歳になりまして」P.186

わたしもポジティブな方の感受性が鈍いタイプです。

否定することは肯定することより簡単です。やっすい作業です。誰でもできることです。だから私は肯定をしたいと思っています。(中略)そう思っているのに、何を体験しても、まず否定的なことが頭に浮かんでしまいます。こんなのやめたい。

「50歳になりまして」P.187

右に同じ。
わたしの友人は反対に肯定しまくる人です。正反対すぎて一緒にいると毎回驚きます。半面、彼女は人をあまり疑わないから、色々だまされてしまうこともあるようです。私はうまい話があれば必ず疑います。足して2で割ったらちょうどよくなります。2人でいるとグレーになれます。

私はだいぶ前からビビっています。

「50歳になりまして」P.202

人間ドックで医者に「100まで生きる」と言われた光浦さん。

怖かった。すごく怖かった。あと何十年、一人で生きてゆかなきゃいけないんだ?働き続けなきゃいけないんだ?

同上

独身じゃなくてもこの問題みんなに付きまとう。

ひとりで生まれてひとりで死んでいく、とあゆも歌っていたではないか。たくさん家族がいても最期必ずひとりになる。

今の私は全ての時間を自分だけのために使えます。
これから始まる後半の人生の中で、今が一番強いんです。無敵なんです。無敵の私が未来の私を育ててやろうと思ったんです。将来。このおばあちゃんが笑って生きてゆけるレールを、これからの5年?10年?で敷いてやろうと思ったんです。(中略)子育てならぬ、おばあちゃん育てです。

「50歳になりまして」P.203

なるほど。
もう健康寿命からすると人生の折り返し地点に来ていて、これから一体何を目指して生きて行けば良いのかわからなかったけれど、これは良い考え方。

子供のころは親や教師にレールを敷かれてそこを歩くしかなかったけれど、今は自分で自分の歩いていくレールを敷くことができる。

わたしも取り戻したい。自分で自分にすてきなレッドカーペットを敷いて最期を飾ってあげたいと思う。もちろんうちの夫にも途中まで敷いてあげようと思っているよ。笑

この打たれ弱い偏屈なおばあちゃんの得意なことってなんだ?
得意なこと伸ばしてやるか、新たなスキルを身につけさせたらいいか。どんな経験をさせて、性格をどのように修正してやればいいか。
自分のこととして考えると暗くなります。が、他人事のように考えると、楽しいです。

「50歳になりまして」P.204

客観的に他人事として考えるとすべてうまくいくかも。自分のことを子供のように育てる。やさしい言葉をかけて、お金をかけて、やりたいことをやらせてあげて、「つらいならやめちゃえば?」と言ってあげようと思う。体に良いものを食べさせてあげて、よく寝かしてあげて、機嫌よく生活させてやる、という視点で考えると自分の人生の方向が見えてきた気がする。わたしも、これからもうひとつの人生を回収していきます。


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