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【名作椅子】vol.5 NAVY Chair


こんにちは、蓮実です。

今回紹介する椅子の軽さはなんと3.18kg、しかも素材は金属だ。
この重さを知ったとき、すぐには信じられなかった。
高級なロードバイクでさえ9kg台なのにその半分以下の重さなのだから…。

ちなみに日本でもすっかり一般的になった「Yチェア」。
この木の椅子の重さは約4.5kg。この段階でもすでにだいぶ軽い椅子だ。
これよりも軽いというのだからにわかに信じがたい

本題に入る前に椅子の重さについて寄り道させてもらいたい。
「軽さと丈夫さは両立できるのか?」これは、モノづくりの世界では、
長年トライ&エラーが行なわれてきたテーマではないだろうか。

特に椅子は軽いほうが良いとされている。その中でもとくにダイニングチェアは
軽さが求められる機会が多いだろう。

ダイニングチェアは、座る際に近くまで椅子を引き、
座った後にまたテーブルまで寄せる。
そのため、他の家具よりも動かす頻度が多い。

椅子が重ければ、一回ずつ動かすことがストレスに感じて大変だ。
だから私がダイニングチェアをお勧めする際は、いつも軽いものにしている。

本体を軽くするには、部材を細くする、材質を軽いものにする等の方法がある。
そうすると今度は耐久面で気をつけなければならなくなる。
だから「軽さ」と「丈夫さ」の2つを両立するのは、本当に大変だ。

もちろん、どのくらいの耐久性を求めるかということも選ぶ際に大切だ。
おおよその椅子は、耐久試験をクリアして、問題がないことを証明しているので、
軽い椅子が日常で座るのに危険があるということではない。

そこでいよいよ主役の登場である。
名前は「NAVY Chair E1006」。一般的にはネイビーチェアと呼ばれている。
1944年にアメリカのエメコ社から発売された。
素材はすべて自社オリジナル配合のアルミニウムだ。

なんとこの椅子は、もともとアメリカ海軍の潜水艦と空母でつかうために
生み出されたものだ。
海の上という不安定な状況で、安定性と耐久性はさることながら、
海沿いの宿敵ともいえるサビへの耐性や、長時間太陽光にさらされても
熱くなりにくいという。

まるでスーパーマンのように万能で、とても強い椅子だ。
まさに【アメリカ】という感じがするのは、私だけだろうか。
個人的には、ポパイが座っていそうな椅子としての印象がある。

勝手ながら生産は、工場のラインでほぼ機械がつくっているイメージがあった。
実際は1脚ずつ熟練工の手によってつくられているという。
この工程には77もの段階があり、これは「77step」と呼ばれ、他のemeco社の
他の椅子にも受け継がれているのだとか。

とくに塗装には、8時間もかけるだけあって、やわらかなマットな質感は
とても美しく、オールメタルの椅子なのに温かみを感じる。

それで肝心の座り心地の方はといえば…、お尻のかたちにあわせて
立体的にかたちづくられた座面は、優しく受け止めてくれる。
座った第一印象は「しっくりくる」。

しかし、残念なことに東北の日本海側生まれの私は、この金属の質感に冷たさや、
無機質さを感じてしまい、少し距離を置いてしまう。椅子に腰掛けて窓の外の雪を
眺めている姿を想像すると、どうしてもしっくりこないのだ。

そんなこと言うとネイビーチェアは好きではないのかと思われるかもしれないが、
そんなことはない。置いてある場所によるのだ。

例えば都内の赤レンガが壁に貼られているようなお洒落なカフェや、
海が見渡せる、例えば尾道の古民家を改装したカフェの、
窓辺のカウンターにあったなら迷わず座りにいく。「海辺」にあり、
「古民家の木と金属の質感」が合わさるとグッとくると思うのだ。

この椅子はニクいことに、使う人だけでなく、環境への配慮も欠かせない。
材料のアルミニウムは約80~85%がリサイクルされた再生アルミニウムだ。
そのうち、60%は飲料用のアルミ缶からリサイクルされている。

金属の椅子だから重い、金属の椅子だから環境に悪い。
そんな思い込みは消えてなくなり、尊敬の念をわかずにはいられない…。

ポスターがとてもセクシーだけど、これがまたお洒落でスタイリッシュなのだ。
女性の肌の温かみ対比することで、金属のシャープさを引き立て、
男性の体型からは堅牢さが伝わっている。

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軽さと耐久性を両立させた、スーパーなイス。
ネイビーチェは、今後提案していきたい大好きな一脚になった。

というわけで長くなってしまったが、今回はとりあえずここまで。
では、また。


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