【#シロクマ文芸部4月】③刀を振り回す男
1カ月の全お題を使って一つの物語を作るチャレンジをしています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。今日はその3回目。
1回目はこちら👇
2回目はこちら👇
花吹雪が馬を走らせる男のまわりを舞います。その姿はバラ色のほほをした若者を祝福するかのように見えましたが、なんとなく様子が変です。
「前が見えない!」
馬を走らせながら男は顔にまとわりつく花びらをよけようと、手を振り回しました。早く花吹雪の中から脱出しなければ。
ヒヒーンと馬がいななき前足をあげ仁王立ちになります。目の前が見えず、馬が怯えてしまったのです。
「あ!」
と声をあげた男は馬から転がり落ちました。
花吹雪の中を走る美しい若者と馬に村人たちは見惚れていましたが、落馬したのを見て大慌てで走り寄りました。
「大丈夫ですか?」
「うーん。僕は……あれ?」
「馬から落ちたんですよ」
「そうか……」
幸い、落ちた場所は草むらだったため、怪我ひとつ負っていません。男に怪我がないことがわかり駆け寄った村人たちはホッとしました。
「あ、風車!」
落馬したところは丁度、風車のすぐそばでした。
「立派な風車でしょ?村の誇りなんです」
と村人たちが自慢します。
「あれでも自慢なのですか?」
「あれとは?」
不思議に思った村人たちが風車を良く見ると、男にまとわりついていた花びらが風車へと吸い込まれているのが見えます。
「これはいったい?」
いったん、全ての花びらが吸い込まれると、風車が動きをピタリと止めました。
「どうしたんだ。今まで一度も止まったことなんてないのに」
村人たちが驚いていると男は突然、刀を抜きブンブンと振り回し始めました。村人たちは驚いて男から離れます。
「僕から離れて!」
刀を振り回す男のそばになんていたくありません。男に言われなくても離れたいです。村人は大慌てで逃げ出しました。
村人が逃げ出したあと、風車の下では異様な光景が繰り広げられ始めます。一度吸い込まれた花びらが風車から飛び出し、すごい勢いで男めがけて襲ってきたのです。
しかし、男が先に刀をブンブンと振り回していたため花びらは男に当たることなく落とされていきます。
「いったいこれは!」
異様な光景に村人はガタガタと震え、その場に固まってしまいました。
花びらを出し切った風車が縦横にグラグラと揺れ出すと、ブルブルっと小刻みに震えだしました。
「来い!」
男は刀を構え直しました。
本日はここまで。
来週、最終回です。
シロクマ文芸部の活動は、現在私の癒しでございます😊
疲れた頭を切り替える大切な時間なのです。
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。
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