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【#シロクマ文芸部4月】②賢者のなげき

1カ月の全お題を使って一つの物語を作るチャレンジをしています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。今日はその2回目。

1回目はこちら👇

風車を目指し男は馬を走らせました。

「風車の動きを逆回転にすれば時間の流れは変わるのにのう」

賢者の言葉を聞き、男は馬に飛び乗り風車を目指したのです。谷間にひっそりとあるこの村は風車を多く有していました。

谷に流れ込む風を利用した風車により村はとても豊かでした。風車は村になくてはならないものだったのです。24時間風車が回り続けることは豊かな村であり続けるためには必要だったのです。

豊かな村に住むことに慣れきってしまった頃、異変が訪れます。それに気づいたのは賢者でした。とても小さな、たとえていうならば象の足にポチンと刺さった1mmもないトゲのような異変ですが、賢者ははっきりと感じ取りました。

以前は賢者として国中に知られていましたが年を取ったため、後進に賢者の地位を譲り豊かな村で隠居生活を送っていました。谷間の村は外からの危険もなくゆったりとした時間が流れ、隠居にぴったりの場所だったのです。

平和な時間が過ぎ賢者であることをみなが忘れた頃、小さな異変は訪れたました。賢者がいくら村民に危険を訴えようとも誰も信じません。賢者の年は200歳を超えており、ただの耄碌爺としか思われていなかったのも信じられなかった原因でしょう。

「はいはい。爺さん。後でバタービールを持って行ってあげますからね」
「ジュル。バタービ……ち、違う。危険がのう」
「はいはい。わかったわかった」

賢者は絶望しました。この豊かで平和な村が滅びてしまうことに心を痛めました。ここまで誰も信じないのは定めで、お前は家に籠りじっとしていろという天命なのかと絶望し運命を受け入れる準備をしていたのですが。

ある日、溜息をつきながら庭先のベンチに座り、

「「風車の動きを逆回転にすれば時間の流れは変わるのにのう」

と呟くと、

「おじいさん、それは本当ですか?」

と優し気な声が聞こえました。声のする方を見るとバラ色の頬をした美しい若者が立っています。

「馬に水をあげたくて、こちらにお邪魔したのですが……」

そう言いながら馬から降りた若者に年老いた賢者は再び風車のことを訴えました。

「本当ですか?」
「本当じゃ、誰もそれを信じないのじゃ」
「わかりました。僕が行きましょう」

そう言うなり、若者、いや一人の立派な男は馬に飛び乗り風車へと向かったのです。

「救世主が現れた」

賢者はポツリと言い、男の背に幸福の呪文を飛ばしました。

お題が「風車」と聞き「ドン・キホーテ」に寄せようと思ったのですが、ちょっと方向性を変えてみることにしました🙌

小牧幸助部長、創造の翼を羽ばたかせるお題をくださり、ありがとうございます!

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