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祖母的「時そば」

先日、近所の回転寿司屋の10%割引券をゲットしました。ラッキーと出かけたのですが、お皿のシステムがすっかり変わっていました。

以前は、クルクル回る寿司皿が豊富に流れてきて好きなネタを取ったり、財布と相談しながらお皿の色を決めたりしたものです。

しかし、今は回ってくる寿司皿は少なく殆どがタッチパネルでの注文が主流となっていました。

好きなネタをすぐに食べられるメリットはありますが、取る直前で他の人に「取られた!」と悔しがるスリリングさを味わえなくなったのは少し寂しい気もします。

タッチパネルで注文した寿司は値段に関係なく皿の色が同じでした。食べ終わり積み重ねると「お下げしますね」と店員さんが速やかに持ち去ります。

タッチパネルの皿は注文した瞬間自動で計算されるためもうテーブルにうず高く積み上げる必要はなくなったのですね。

回ってくる皿にも好きなネタがあったため取りましたが、そちらは値段で色が異なります。どうやって計算するのかと思っていると、食べ終わった時に色別の皿の値段を読んでタッチパネルのものと合計していました。

テーブルに積み上げられた皿を手で数えていたアナログな時代は過ぎ去ったのです。

ごちそうさまをしてうず高く積み上げられた皿を店員さんが数える時、大食いだとか安いのばかりと思われるのを恥ずかしく感じる時代は終わってしまいました。

🍣🍣🍣

私が中学生の頃、家族全員で回転寿司屋に行きました。会計となった時、祖母が急に皿を数えている店員さんに、

今何時だい?

と聞いたのです。

店員さんは「19時○○分です」と答え数える作業に戻りました。

祖母は店員さんに悪気なく声をかけるタイプでした。この時も話しかけたいという気持だけだったので、私達もなんとも思いませんでした。

帰りの車の中で家族の誰かが、

「時間を聞くから店員さんが皿を数え間違えた」

と言ったのです。

祖母は「そんなことあるかい!」と怒りました。
自分が非難されたと思ったのです。

「お母さん、おかげで安く済みました💕」
と母が大笑いしました。

皿の枚数が20枚後半を超えていたのに、店員さんは19から数え始めてしまったのだそうです。

「儲かっちゃった💕」

と母は笑い祖母は自分が手柄をたてたと威張り始めました。

父も「落語の時そばじゃねぇか😂」と大笑い。

酷い家族ですね。

「時そば」

二八蕎麦という名前の通り、江戸時代は蕎麦の値段が十六文でした。ある日、客が1枚ずつ支払いながら「今なんどきだい?」と聞くと「へえ、やつどきです」と亭主が答えました。4~5枚までしか数えていなかったのに時間を聞いたおかげで8枚から数えることになり、蕎麦を安く食べられました。それを見ていた男が自分も真似をして安く食べようとすると数えていた枚数よりも時間の方が早かったため損をするという滑稽な落語のお話です。

はそやm流うろおぼえ落語より

割引をしてくれた良いお店ということで、次の外食もその回転寿司屋へ出かけました。

なんとなく申し訳ない気もあったのでしょう。

すると、調子に乗った祖母が、

今何時だい?

とニヤリとしながら店員さんに聞くのです。

「19時○○分です」

と店員さんは答えると正確な枚数を数えました。

正規な金額をそのとき支払えなければ、その店には行きにくくなったと思います。おかげ様でその後も贔屓の店として、家族全員で利用しました。

一回しか時そばを成功できなかった祖母はちょっとだけ不満そうでしたが。

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