豆部長のお父さんという幻覚を見た話
29日からGWという方もあるでしょうし、今週の月金は仕事という方もおられるでしょう。
そこで今日はあえてGWの話題ではなく会社の思い出を紹介しようと考えました。
会社員時代は部長ばかりいる部署に在籍していたと以前、触れていますが、
部長の中でも豆部長はとにかく印象的な部長でした。
ある日、部署で今後の方針についてすり合わせをするため、
打合せを行うことになりました。
もちろんシルエットが豆っぽい豆部長も出席です。
資料の用意、お茶出しと打合せの環境を整え、部長達が入って来ましたが、豆部長が来ません。
豆部長はその体型の愛らしさと奇声から少し動くだけで笑える存在でした。
退屈な打合せにはなくてはならない人です。どうした?豆部長?
豆部長抜きで始めちゃおっかみたいな空気が流れた時、
「遅れてすみませーん!」
豆部長が勢いよくドアを開けて入って来たのです。
でもなんだか妙。私達は豆部長に違和感を覚えました。
堂々と入ってきた豆部長の口元に黒いものがついています。
イー、シシッなどと騒ぎながら座った途端、豆部長は資料を開き打合せを始めました。
入室してきた豆部長を他の部長もチラっと見ましたが、なにも言いません。
確かに口元に黒くて小さい、胡麻よりも大きくアンコひとカケラよりも小さいなにかが貼り付いています。
でも、他の部長はなにも言わないのです。
同僚とはそやmは
(つ、ついているよね?絶対ついているよね?)
とずっとアイコンタクトをし合います。
もう、笑いが喉、いや舌の先まで出ています。
1時間ほどの打合せで笑ってはいけないの状態が続きました。
打合せ終了後すぐ、茶器の片付けを口実に給湯室に駆け込みました。
「ねえ!絶対ついていたよね!」
「ついてたよ!なんで誰も指摘しないんだろう?」
「見えてないってことないよね?」
「白昼夢?普通つけないもんね?白昼夢?」
「あれ見えなきゃおかしいでしょ!なんで誰も不思議がらないのよ!」
「関わり合いたくないとか?」
「もしかして、あれ、食べ物じゃないのかな?」
「なによ?」
「例えばさ、お父さんが来社されて貼り付いているとか」
「あー。父親なら取りなさいって言えないもんね」
「…。豆だもんね。あんこみたいなのが父親でも変じゃないよね?」
「もう、帰られたかな?」
「確かめにいこう」
豆部長のお父様は終業時刻になっても帰られませんでした。
そのため、私と同僚は下を向いたまま一心不乱に仕事をするしかない状況へと追い込まれることになったのです。
どうして、口元の黒い異物を父親だと言い出したのかわかりません。
たぶん、私も同僚もとても疲れていたのだと思います。
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