【#シロクマ文芸部】天使かよ
月の耳とはだれのもの?
「はーい!私の耳で~す」
ウサギがピョコンと耳を動かし胸を張る。
「待った待った!ワシの耳じゃぁあ!」
と吠えるライオン。
「そうかなぁ。ボクの耳だと思うけれど」
ボソボソとロバが主張する。
「ワシのハサミを耳と間違えておるのじゃ」
カニが立派なハサミを持ち上げ割って入った。
「目立たないが、オレにだって耳はあるんだぜ」
とギョロギョロ目を動かすワニ。
誰の耳が相応しいかで月面は大騒ぎです。誰か騒ぎを止めてえ。お月さまは悲鳴を上げました。
ここまで本を読んだところで、そっと美月の顔を覗き込む。
美月は満月のような目をパッチリ開け、こちらを見ている。まだ寝ないのか。こっちはまぶたがくっつく寸前なのに。
少しイライラしてきたが、今夜は俺が寝かしつける番だ。ここでギブアップしたら、後でなにを言われるか。
とにかく最後まで読み切って、それでも寝なければ……
「パパァ。誰の耳でもないと思う」
「へ?」
「だって月の耳なんでしょ?」
と言うと美月は小さな指を下りながら、
ウサギの耳はウサギさん
ライオンの耳はライオンさん
ロバの耳はロバさん
カニの耳はカニさん
ワニの耳はワニさん
「で、月の耳はつぅ~き!」
と言い、俺を見てニッコリと笑った。
……天使かよ……。
「そうだね。美月ちゃんの言う通りだ。じゃあ……
続きを読もうか」
と感極まりながら、絵本を開き直す。
ZZZ……
「え?」
眠っていた。
……天使かよ……と呟きながらベッドから抜け出す。
リビングに戻ってきた俺の顔を見て妻が
「なにニヤついてるの?」
と不思議そうな顔をする。
「俺、これから毎晩、読み聞かせするわ」
ラッキーと両手を上げて喜ぶ妻。
俺の方がラッキーなのを妻は知らない。
癖になってしまったのでしょうか?
土曜の23時をすぎて、やっとアイデアが浮かびます💦
シロクマ文芸部、今回も楽しかったです😊
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