【#創作大賞2024】骨皮筋衛門「第十一章:蚊なしき野望④」(2467字)
第十一章「蚊なしき野望④」
筋衛門が潜入捜査に入った後、俺とボン・ラジは「カサブランカ」で旧交を温めた。なぜ「カサブランカ」かというと、あの店は砂沼さんや江藤さんをはじめ美しい女性が多く集ま……じゃ、じゃなくて俺の行きつけの店だからだ!それにボン・ラジも江藤さんや越前さんと仲が良く「カサブランカ」の常連でもある。
「砂沼さん、コーヒー美味しいねぇ」
一口飲み、顔をあげると彼女はいなかった。それを見てボン・ラジが笑って……い、いないと思ったが口元はゆるみ心なしか肩が震えているように見えるのは、気にしないでおく。
「デイブさんと筋衛門さんは、高校生の頃に蚊ーニバルに遭遇したんですよね?」
「俺が生徒会長、筋衛門が副会長だった時に遭遇した」
帳面高校文化祭の直前、帰り道で俺は蚊ーニバルに襲われたのだ。
「用事があった俺は1人先に下校したんだ」
すると黒服の美しい女性に声をかけられた。俺達がいた3年間、帳面高校の人気はすさまじく文化祭には客が殺到。仕方なくチケット制で入場規制したことから、チケット欲しさに生徒会役員や教員に近寄る者も現れたため、そういう人達かと思ったのだが違った。
「文化祭の「化」を「蚊」にしてくださぁぁぁい!」
そう叫びながら突然、俺に襲いかかってきた。
「女と思っていたのだが、飛びかかられて男だとわかった」
「えー!」
のけぞるボン・ラジ。
「もう少しで細長い棒から液体を注入されそうになったとき筋衛門が助けてくれた」
「液体を注入?イヤーカフではなく?」
「当時の蚊―ニバルは細長い棒を使っていたんだ」
ヒラリ・クルリ・プルン・ボスンでそいつを倒したのはいいが、当主しか使ってはいけない秘技で俺を助けた筋衛門は謹慎を言い渡される。筋衛門の父親に俺の親が「息子の恩人だから」と言ったことで勘当はなんとか免れた。
「俺のために秘技を使ってくれた。それ以来、筋衛門を一生支えると俺は誓ったのだ」
「そうなんですか……。それで美しい女性と勘違いした男が誰かわかっているのですか?」
「ああ、蚊ーニバルの蚊山ゆうぞうだ」
「えええー!」
🦟🦟🦟
「イヤー蚊フの存在がバレてしまったようですねぇ、蚊っ蚊」
「…ああ。バレるのは時間の問題だと思ってはいたが」
「あの時、デイブと筋衛門を刺しておけば」
と嫌味な目で蚊山ゆうぞうを見るのは蚊取しんご。
「あの時、お前が俺を助けに入れば良かったのに。なんでしな蚊ったんだよぉ!」
「だってぇ、筋衛門の攻撃を見ちゃった蚊ら。それに警蚊んから助けてやったじゃない蚊。蚊蚊っ!」
「笑うなぁ!蚊ぁーッと頭に血が上るだろ!」
今にもつ蚊み合いになりそうな2人をデーモン蚊っ蚊が
「ケン蚊はやめなさい!蚊ぁー!」
とたしなめる。口をすぼめる2人。
「まあまあ、バレたら次の方法を考えればいいんですよ」
とニヤニヤしているのは、イービル・フラワーのカーター。潜入捜査で苦しむボスの仇を取ろうと、蚊―ニバルを利用しているのだ。
「カーター殿、色々と助けてもらい申し訳ない」
とデーモン蚊っ蚊が礼を言う。
「しかし、どうして君は我々にここまで親切にしてくれるの蚊?」
「ふふふ。あなた方の行動に蚊ん銘を受けまして」
「そう蚊……。君はいい奴だなぁ」
と涙ぐんだデーモン蚊っ蚊はカーターを蚊―ニバルに誘う。
「これもなに蚊の縁だ。君も名前を「蚊-ター」にしない蚊?」
「いや、結構」
秒で断るカーターを恨めし気に見るデーモン蚊っ蚊。
「ところでデーモンさん、」
「デーモン蚊っ蚊と呼べっ」
と文句を言う蚊取しんごと蚊ぁーとした表情の蚊山ゆうぞう。
「し、失礼。ところで蚊っ蚊、あなた達はなぜ「蚊」にこだわりを持っているのですか、じゃなく……蚊?」
慣れない「蚊言葉」をたどたどしく使いながらカーターがたずねると、話せば長いのだが、とデーモン蚊っ蚊が「蚊ーニバル誕生秘話」を話し始めた。
「我は蚊に刺されにくい体質であった」
「へぇ~それは羨ましい」
とカーター。心底どーでもいいといった感じが蚊山と蚊取をいらだたせ、
「蚊おつきに気をつけろ!」
と怒られ慌ててカーターは謝る。
「そのため、蚊への嫌な感情が人より少な蚊った」
それよりも気づかないうちに人から血を吸いとる蚊に興味がわき、大学の専攻では迷わず蚊を選ぶ。
「蚊を専攻?」
「蚊は研究するほど工学や生理学の面で蚊つようできる身体的特徴が見つ蚊る。ますます興味がた蚊まる中、私に蚊の女ができた」
へぇ~とカーター。心底興味ないといった姿勢を示したが、今度は蚊山と蚊取は怒らない。カーターに蚊の女ができたことがないだろうという同情からきた反応だ。気の毒そうに見る2人の視線に気づき、
「蚊ぁ~!」
と怒るカーター。その自然な「蚊」の使い方に蚊っ蚊・蚊山・蚊取が
「やればできるじゃない蚊」
と拍手を送った。
「で、彼女ができたのと蚊ーニバル設立がどう関係しているのだ?」
悔しさを隠しながらカーターが先を促す。
「彼女ではない!蚊の女だ!蚊の女も熱心な研究者だった。共に研究し、ジョンストンき蚊んの素晴らしさに感動した」
楽しい日々が続くと信じていたデーモン蚊っ蚊だったが。
「ある日、蚊の女と蚊フェでお茶をしていた時のことだ」
プリンアラモードのメロンに1匹の蚊がそっと降り立ち遠慮がちにメロンの汁を吸い始めたそうだ。
「血を吸わないオスの蚊だった」
これからも秘密をいっぱい教えてくれよ、と心の中でほほ笑んだ時、パン!と蚊の女がオスをつぶしたのだ。悪いことをしていないオスの蚊を!
「蚊の女がただの彼女に変化した……」
ごっめぇ~ん、と蚊るく謝る女に俺は心底嫌気がさした。そして、優れた機能を持ちつつも蚊ん単につぶされる運命の蚊に哀れみと親近蚊んを覚えた。
「慌てる彼女をその場に残し俺は大学を去った」
「その時、ともについてきたのが俺たちだ!」
「見た目が蚊わいいからと男の娘と言われるのが嫌だった!」
「蚊ってに蚊っ蚊とのBLを噂されるのが嫌だった!」
それって全部、お前たちの顔面偏差値が高いからじゃないか、とカーターがボソリと呟くが誰もそれに気づ蚊なかった。彼らの蚊なしみはそれほど深く強蚊ったのだ。
つづく!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?