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【#シロクマ文芸部】まごころ
最後の日だけれど、コギツネは来てくれるかしら?とおばあさんは呟きました。
「もうコギツネじゃないからなぁ」
とおじいさんが寂しそうに答えます。
おしるこを食べたことでコギツネは、おじいさんとおばあさんとすっかり仲良くなりました。
春、ともだちの北風さんと雪の女王様が遠くに行き大泣きしまたが、
「一緒に次の冬まで待ちましょう」
とおばあさんにギュッと抱っこされ泣き止みました。
夏、おじいさんとおばあさんの孫が遊びに来て、コギツネは友達になりました。ある日、コギツネが遊びに行くと孫が遊べないと悲しそうにいいました。宿題が終わらず外に行けないのだそうです。
「それなら僕も一緒にシクダイをする!」
孫と一緒にいたくてコギツネはシクダイを横で眺めていました。横でシクダイを見ている姿が可愛くて孫は文字や数字を面白半分に教えると、すっかり覚えてしまい夏休みが終わる頃には知恵のある若ギツネとなりました。
秋、おじいさんの笠売りに、ついていくようになりました。若ギツネのお手伝いは絶妙でおじいさんの笠は売れ行きも好調です。
知恵があることを褒められているうち若ギツネは少し鼻が高くなり、笠を買っていく人達より自分の方が賢い気もしてきました。
「おじいさんよりも僕の方がもっと高く売れる!」
おじいさんに内緒で倍の値段で言葉巧みに笠を宣伝すると、とてもよく売れます。若ギツネは大喜びでおじいさんにお金を見せました。するとおじいさんは怒ったような悲しいような不思議な表情で、
「返してきなさい」
と言いました。
「なんで?おじいさんのためなのに」
「人をだましてお金を儲けてはいけないよ」
「おじいさんの馬鹿!」
若ギツネはパッと後ろを向き、森の方へ駆けて行ってしまいしまた。
冬、若ギツネがいない寂しい家で大晦日をおじいさんとおばあさんは迎えています。
「最後の日だけれど、コギツネは来てくれるかしら……」
おばあさんがもう一度呟いた時、玄関の方でドン!と音がしました。
「雪が落ちたかもしれない。雪かきをしてくるよ」
とおじいさんがドアを開けると、雪だるまのようになった若ギツネがコロコロンと転がってきました。
「おやまあ」
「ごめんね……」
驚いているおじいさんとおばあさんに若ギツネが謝ります。
若ギツネの手には2つの手袋。
「真っ当なお金で買ったの」
おじいさんと別れたあと、自分のしたことが間違っているとわかった若ギツネは笠を売った人達のところを回り、お金の半分を返して回りました。
全ての人にお金を返し終わった頃、秋が終わっていました。気まずさでおじいさんの顔が見れずウロウロしていると、
「そのお金でプレゼントを買ったら?」
と声がしました。声の主は北風さんでした。若ギツネはキツネの手のままで手袋を2つ買いました。手袋屋さんはもう驚きません。賢い若ギツネは町で有名になっていたからです。
クリスマスに手袋を渡しに行きましたが、気まずくて家に入れません。北風さんが何度かぴゅうぅぅ~と運んでくれましたが、最後の一歩が踏み出せないのです。
大晦日の日も北風さんが家の前まで運んできましたが、若ギツネは入れません。家の前をウロウロしている若ギツネを見て北風さんがため息をついていると、
「私に任せて」
と声がして吹雪が若ギツネを飲み込みドアにドン!とぶつけたのです。
「真心のこもった贈り物、うれしいよ」
おじいさんは若ギツネの雪を払い家の中へ招きいれました。
おばあさんは冷たいおしるこを北風さんと雪の女王様にふるまいました。
今年もおじいさんとおばあさんの住む場所はおだやかな大晦日を迎えられそうです。
今日のお話は「きつねものがたり」をベースに二次創作させていただきました。可愛らしいチェコの児童書です。漢字の「狐物語」とは違いますので、ご興味のある方はひらがなで検索してみてください。
小牧幸助部長のおかげで創作の楽しさをより感じることができました。すごく充実した一年を過ごさせていただきありがとうございました。
来年もよろしくお願いします😊
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