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デザインとAIの今後の関わり方について考察

Hasniccaで、アイデアの発想やコンセプトスケッチを主に担当をしているコクボです。


 昨今、AI(機械学習)分野の技術発展はめざましく、クリエイティブ分野への進出の勢いは記憶に新しいと思います。今回、「今後AIとデザイナーはどのような協力関係が結べるのだろうか?」ということを、デザインワークに携わる一人という観点から考察してみようと思います。


■AIの得意なこと

 今話題になっているAIは機械学習のことを指すと思います。機械学習とは大量のデータを機械(コンピュータ)が学習し、その類似点などから背景にあるルールやパターンを導き出し、その法則性から予測を立てるものであると理解しています。

ここからAIで得意なことは大量のデータから導き出される法則性や一般解の導出と、それに基づいた予測であると言えます。AIも人間も、インプットをし、そこから法則性を見つけ出すという点は一緒ですが、AIはインプット量とその法則性を見つけ出す速度で人間を圧倒すると思われます。


■デザインワークの分解と仮説

 一方でデザインワークをモデル化すると、「発散」と「収束」の繰り返しと考えることができます。デザインワークの多くが、

①達成したい目的を設定

②解決するための方法のアイデアを出す(発散)

③目的に最も合致した解決方法を検証し選択する(収束)

で、②と③を繰り返し、その結果①を見直して、よりよい解決方法を洗練させていくというのが一般的だと思います。デザインワークの初期では②、③は抽象的なことを、後期では②と③はより具体的なことがらを扱っていきます。

ここで②と③において、AIは優位でありながらも、デザイナー(人間)と協力し、ときにデザイナーにしかできないことがあると思います。

デザインワークの②のプロセスでは、アイデアは質より量と言われています。正確には量によって質を担保するといった方がいいかもしれません。ピラミッドを高くするには広い底辺が必要なように、良いアイデアは、たくさんのアイデアによって成り立ちます。このアイデアの量を出すという作業でのアウトプットの速度は圧倒的にAIが優れていると言えるでしょう。しかしながら重要なのはさまざまな視点であり多様性です。ここでAIとデザイナーは協力することができると思います。人間にとって機械学習はブラックボックスに見えます。これは人間にとって思いつきもしなかったアイデアを得ることができます。一方で、当事者である人間は人間らしいバイアスのかかったアイデアが出てくると思います。そしてこれらの異なる思考プロセスで発生したアイデアを相互でインプットすることにより、さらなるアイデアの量を出すことができるのではないかと思います。


デザインワークの③の過程では、出てきたアイデアが目的に合致しているかという点でさまざまな検証が行われます。現時点でのAIでは、この検証、つまり何が最適かという判断がAIには難しいと思われます。これはAIが法則性=解決方法を見つけたとしても、これが「人間にとって」有用であるかの判断は人間の当事者意識が重要であると考えるからです。ただしこれは現時点での話であり、「人間にとって」の有用性が変数に置き換えることができればAIでも十分に判断できるかもしれません。ただしこれも、人間にとっての有用性の変数化と評価方法を人間が行わなければならず、今は人間側にボールがある状態のように思えます。

この③の過程では、法則性=解決方法をAIが導いたとして、その方法が「人間にとって」有用であり最適であるかの判断は依然としてデザイナーが行わなければならないと思います。

最後に①ですが、私は当面このプロセスは人間にしかできないのではないかと思います。この達成したい目的の設定は、人間の欲望に紐づくものだからです。「もっと便利な生活をしたい」「もっとかっこいいものが欲しい」このような欲望が、課題を見つけより良いものづくりにつながっていくと考えています。現状に満足せず、もっとよくしたいという飽くなき探究心が人間の本質であり、AIに勝る部分であると信じています。


■実際に使用しての実感

実際に私たちもChatGPTを活用して、作品のタイトルを検討したことがあります。関連する英単語を思いつく限り上げたのですが、補完としてChatGPTに作品の概要や目的をインプットし、類似する英単語を挙げさせました。
結果として、私たちの知らない単語や、知っているが思いつかなかった単語を出力し、参考にすることができました。
上に記載した「異なる思考プロセスで発生したアイデアを相互でインプットすることにより、さらなるアイデアの量を出すことができるのではないか」という仮説は概ねうまくいきました。


■まとめ

AIの特性からデザインワークのプロセスとの親和性を考察した結果、デザインワークでの発散過程では、人間のバイアスのかかったアイデアと、機械による人間から見た時の突拍子もないアイデアを相互で交換することでアイデアの広がりはよりよくなると考えました。収束過程では、ある程度の方法に収束させることはAIにできると思われますが、その中から最適なものを選ぶ判断は当面デザイナー側に委ねられるものと考えます。そして、そもそも何をデザインするのか?という課題を見つけ出し、解決に向けて実行しようとする起点は人間にしかできないものであると思いました。

このことからもし、AIがデザインに進出した時は、デザイナーにより多くの判断と問題提起という役割がふられるようになるのかなと想像しました。


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