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2023-24ポストシーズンのチーム戦略

2023-24シーズンのMリーグは、推しの渋谷ABEMASがセミファイナルで敗退したため、それ以降はあまり見ていませんでした。しかし、先月買った『近代麻雀』2024年7月号に載っていた赤坂ドリブンズ・越山剛監督のインタビューを見て、「こっしー、すまねえ😭」という気になったので、この記事を書くことにしました。


1.燃える監督🔥

越山監督のインタビュー記事のタイトルは、「燃える監督――赤坂ドリブンズ再生の軌跡」というものでした。これはきっとダブルミーニングなんだろうな……😅

越山監督は、歯に衣着せぬ発言から、よく炎上する監督として知られています。

「燃える監督」の近代麻雀noteでの連載は、2023-24シーズンが開幕してすぐの2023年10月から始まっています。ここ2年は予選落ちだったドリブンズが、メンバーを入れ替えて見事準優勝で終わったわけですから、企画の意図どおり「ドリブンズ再生」に成功したと言えます。これはうれしいだろうなあ。

ドリブンズがドリブンズ戦略すぎた

2023-24シーズンのドリブンズを振り返ると、レギュラーシーズンの出場試合数は以下でした。

チーム再編前とは打って変わって、全選手をほぼ均等に出すこの起用を見て、私は「特定の選手の起用を極端に減らすドリブンズ戦略はもはや存在しない」と書いていました。

ところがどっこい――

ポストシーズンでは、初心を思い出したかのように、浅見真紀プロをほとんど出さないドリブンズ戦略への回帰を見せています。おいおい、話が違うじゃねーか。

ドリブンズは、セミファイナルでは、ファイナル当落線上の4位に長くとどまっており、5位・6位のチームのターゲットになる厳しい状況でした。また、ファイナル開始時には首位のPiratesに約260ptの大差をつけられており、やはり苦しい戦いを強いられました。
さらに、セミファイナルでは3着・ラス、ファイナルでは3着と浅見プロの成績がふるわなかったこともあって、園田賢プロをはじめとする他3人を主に起用することにしたのでしょう。

監督の責務とは

昨年のドラフトで、トリプル天鳳位・ダブル魂天とはいえプロ1年目の渡辺太プロを取ったことで、やっぱドリブンズすげーなあ、とは思っていました。その上で、「燃える監督」の監督の責務について述べられた箇所には、改めて感じ入るものがありました。

僕自身は選手起用については全選手を均等に出す、というルールの方が起用の駆け引きとかがあって面白いのでは、とは思いますけどね。ただ、現状のルール下においては、誰に何と言われようともより勝てる可能性が高いと思う選手をより多く出場させる責務が監督にはある、と思っています。

『近代麻雀』2024年7月号 「燃える監督」Vol.9

Mリーグの監督の多くが理念や方針を明確にはせず、傍目からはよくわからんチーム運営をしている中、多くの人の反感を買おうとも信念をつらぬく越山監督のこの態度は貴重だと思ったのでした。なんだけど、やっぱサポーター数は今もドリブンズが一番少ないのね。トホホ😭

というわけで、越山監督の言葉に、かつて『YAWARA!』で敵チームの選手に声援を送ったジゴロー監督のようなブレなさを見たのでした。

浦沢直樹『YAWARA!』第17巻(1991)

2.ポストシーズンのチーム戦略

2023-24シーズンのMリーグは、レギュラーシーズン、セミファイナル、ファイナルの全ステージでPiratesがトップの座を占める完全優勝で幕を閉じました。2ヶ月後には次シーズンの開幕を控え、「いつの話をしてんだよ」という気もしますが、ポストシーズンのチーム戦略を簡単に振り返ってみます。

■セミファイナル

セミファイナルは、風林火山の一人舞台でした。全員プラスの20戦10トップで、勝ち頭の二階堂亜樹プロは6戦4トップでした。エースの勝又健志プロをチーム最小の3戦におさえる余裕っぷりです。
風林火山が抜けたことで上位2チームが確定する一方、セミファイナル全15日間のうちの5日目が終了した時点(4/15)から、サクラナイツ・ドリブンズは当落線上の3位・4位でした。そのこともあって、両チームはエースを多用しています。
同様に5日目終了時から足切りラインにあったABEMAS・格闘倶楽部は、そこまで特定の選手に偏ってはいませんね。格闘倶楽部唯一のプラスとなった伊達朱里紗プロは、起用のされ方といい、すっかりエースの風格を見せています。

■ファイナル

ファイナルの風林火山は、一転して、湘北高校のようなボロ負け。最終盤の勝又ラッシュも実らず、16戦1トップはキツすぎでした。なお、Piratesが全メンバー4戦ずつなのとは対照的に、他のチームはどこもエースを多用しています。これもファイナルならではですね。
しかし、改めてファイナルの顔ぶれを見ると、昨シーズンから引き続きファイナルに残れたのは風林火山だけでした。勝負の厳しさというか、Mリーグにおいては、すべてのチームが運という大波の上で小舟のように揺られているのだなと思い知らされます。

3.均等ルールの世界線

TVアニメ『シュタインズ・ゲート』(2011)PVより

僕自身は選手起用については全選手を均等に出す、というルールの方が起用の駆け引きとかがあって面白いのでは、とは思いますけどね。

『近代麻雀』2024年7月号 「燃える監督」Vol.9

話は変わって、越山監督のインタビューで言及された「全選手を均等に出す」というルールが採用された世界線を見てみます。

いつもながらの大雑把な計算方法で、たとえば、レギュラーシーズンは各チーム96試合なので、4人の選手が均等に出ていれば、1人当たりの試合数は24試合になります。このとき、現実には30試合に出て300pt稼いだ選手がいるとすれば、均等ルールの世界線では、24試合に出て240pt稼いだものとして計算します。

世界は変わらなかった

結論から言うと、均等ルールの世界線から見える風景は、現実のそれとほとんど変わりありませんでした。若干順位は入れ替わるものの、やはり、BEAST、雷電、フェニックスがレギュラーシーズンを突破できず、ABEMAS、格闘倶楽部がセミファイナルで敗退し、そして、Piratesが圧倒的大差で優勝します。
ただし、均等ルールの世界線では、Piratesは、風林火山の怒濤の勢いにセミファイナルではトップを一旦明け渡すことになるので、完全優勝とはなりませんでした。

■レギュラーシーズン

■セミファイナル

■ファイナル

世界が変わらなかった大きな理由は、2023-24シーズンにおいては、レギュラーシーズン・セミファイナルのいずれも敗退チームは3桁のマイナスを抱えており、上位チームとは差がありすぎたことです。出場試合数が多少変動してもどうにもならないほど、ポイントに隔たりがあったと。ファイナルも、ポイント的にはPiratesと風林火山の一騎打ちでしたが、Piratesが一番勝ち、風林火山が一番負けてましたからね。
こうなると、少なくともレギュラーシーズンでは全選手を均等に出すチームが増えていることもあり、「均等ルールを採用してもいいのでは」という気にもなります。しかし、均等ルール下ではドラフトから何から変わってくるので、これはあくまで机上の空論になります。

均等ルール下での駆け引きとは

最後に、「全選手を均等に出す」というルールができた場合の駆け引きについて考えてみます。
レギュラーシーズン終盤にチームが予選落ちとなる7〜9位にいる場合を想定すれば、条件戦に長けたエース級の選手はなるべく温存したいはずです。

実際、レギュラーシーズン終盤はずっとボーダー上の6位だった風林火山は、最終10戦でエースの勝又プロを5戦起用しています。勝又プロは見事期待に応え、トップ4回・2着1回を取り、チームは5位に繰り上がりました。均等ルール下では、序盤・中盤でエースを多用してしまうと、こういった起用は成り立たなくなります。

「◎」はトップを取った試合
福本伸行『賭博黙示録 カイジ』第9巻(1998)

『カイジ』のEカード風に考えるなら、他チームが序盤に市民を出す中、あえて皇帝を多く出してポイントを稼ぐ戦略などもあります。しかし、麻雀では、市民が皇帝おうを撃つことなどザラなので、あまり有効とは思えません。エースは比較的温存しつつ、チームポイントを見ながら要所要所で起用するくらいでしょうか。
毎試合の対戦カード発表後に、各チームが相手選手を見て一定回数のチェンジ権を発動できるようになれば、よりカードバトルっぽくなるというか、監督の手腕がより発揮できそうですね。

Mリーグの監督は選手の起用について批判されることが多いですが、選手の所属団体のリーグ戦等の諸用もあり、そこまで自由に采配できるわけではないと思います。また、選手の採用についても、ドリブンズは越山監督が望んだ選手を取れているようですが、親会社の意向に左右されるチームもあるでしょう。野球やサッカーの監督にくらべると、試合中にはやれることがなく影響力が弱いわりに、似たようなイメージで見られて気の毒に思うことがあります。
というわけで、こっしーがんばれ!🔥

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