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2023-24シーズンのチーム戦略

Mリーグ2023-24のレギュラーシーズンが終わったので、チーム戦略について考えたことを書いていきます。


もはやドリブンズ戦略は存在しない

Mリーグのチーム戦略についての一連の記事は、「特定の選手を最低限の試合数しか出さない」というドリブンズが取った戦略について考えたことが発端となっていました。

結局、ドリブンズにおいてはドリブンズ戦略は有効ではなく、2019〜2022年の4年間で、3回のレギュラーシーズン敗退という結果に終わっています。そして、ドリブンズは今シーズンからチームメンバーを入れ替え、再スタートを切りました。

浅見プロ、ドリブンズ女性選手初の20戦達成

新生ドリブンズはどういった戦略を取ったのか?
かつてのドリブンズは、丸山奏子プロを10〜12試合の出場にとどめていましたが、今シーズンから参加した浅見真紀プロは、タイトル獲得の資格が得られる20試合に出場しています。他の3選手より少ない起用とはいえ、「ドリブンズはもはやドリブンズ戦略を取っていない」と言っていいでしょう。
ただ、浅見プロは終盤での出場が多く、チームポイントに余裕があったため、最後に帳尻を合わせたという見方もできます。また、ポイント的には活躍したとは言えず、今シーズン2位のドリブンズは、園田・たろうが強かったということになります。

その他のドリブンズ戦略採用チームはどうなったか?

「ドリブンズ戦略」とは言っても、特定の選手の起用を少なくする戦略は、他のチームも採用していました。

2019年のレギュレーション変更による女性メンバー必須化で、女性選手を追加したのは、ドリブンズ、ABEMAS、Piratesの3チームでした。また、新チームとしてサクラナイツが加入し、元々女性選手が2人いたフェニックスも和久津晶プロをさらに追加しています。
これらのチームのほとんどでは、新しく追加した選手をおっかなびっくり使っている印象があり、結果的にドリブンズ戦略に近い起用法となっていました。

ドリブンズ戦略なんか捨てて、かかってこい!

映画『コマンドー』(1985)

しかし、本家ドリブンズだけでなく、ドリブンズ戦略を取っていた他チームの多くも、現在はドリブンズ戦略を捨てています。

■サクラナイツ

今シーズン、そのことが最も顕著だったのがサクラナイツです。チーム創設から4年間、最も試合数が少なかった岡田紗佳プロが、チームで2番目に多い27試合に出場しています。MVPが狙える位置にいたことも試合数が多かった理由のひとつであり、最終的に岡田プロのポイントは200を超え、チームの稼ぎ頭となりました。

■ABEMAS

ABEMASも、ラス回避率のタイトルが狙えた昨シーズンに引き続き、今シーズンも日向藍子プロの出場が20試合を超えました。それまでの90試合から、2022年には94試合、2023年には96試合と全体の試合数が増えた影響もあるでしょうが、チーム内での存在感が増しています。
今シーズンのABEMASは、試合数・ポイント的には、松本吉弘プロの一強と言っていい状態です。MVP狙いもありましたが、元々、松本プロは2020年からABEMASでは最も多く出場している選手であり、今年で4年連続の3桁プラスを達成しています。今後のABEMASは、松本プロ中心のチームになっていくのかもしれません。

■フェニックス

フェニックスも、オリジナルメンバー3人以外の追加メンバー(和久津 → 東城)は、試合数を抑えられていました。しかし、チーム唯一のプラスとなった2022年から東城りおプロの試合数は伸びており、現在はほぼ均等になっています。

■BEAST

ただ、新規加入のBEASTだけは、中田花奈プロの出場はかなり抑えられていました。ごめん、ドリブンズ戦略、やっぱまだ存在してたわ。
つまり、BEASTは他チームの数年前と同じ状態にあるわけですが、今後、中田プロが実力や試合数をどこまで伸ばせるかは未知数です。

ファイトクラブ戦略も存在しない

ドリブンズ戦略と並んで特徴的だったのが、「エースを最大限多く出す」という初期のファイトクラブが取っていた戦略です。
ドリブンズ戦略がもはや存在しなくなったとするなら、もう一方のファイトクラブ戦略はどうなったのか?

寿人プロ、ファイトクラブ史上初、最多出場選手ではなくなる

かつては「寿人、寿人、雨、寿人」と言われた佐々木寿人プロですが、ファイトクラブの歴史上初めて、今シーズンは最多出場選手ではありませんでした。滝沢和典プロが26試合出場でトップに立っています。
「ヒサちゃん、どうしたの……?」という気にもなりますが、ファイトクラブは、2021年のチームリニューアル以降はファイトクラブ戦略をやめ、均等戦略を取っています。今シーズンも、ラス回避率のタイトル獲得のために伊達朱里紗プロの出場を抑えた以外は、他の3選手は25〜26試合と均等です。ということで、寿人プロが最多出場選手ではなくなったことに実質的な意味はありませんが、「ファイトクラブがもはやファイトクラブ戦略を取っていない」という象徴的な意味としては大きかったです。

残ったのは何か?

ドリブンズ戦略もファイトクラブ戦略も存在しないとなれば、後には何が残ったのか?

主流は均等戦略

現在は、多くのチームが、レギュラーシーズン96試合において、すべての選手を20試合以上出す均等戦略を取っています。その上で、調子のいい選手やタイトルが狙える選手の出場を増やす一方で、調子の悪い選手やタイトル獲得のためにこれ以上出したくない選手の出場を抑えています。
2019年(各チーム90試合)には、20試合未満の選手は6人いましたが、2023年(各チーム96試合)は、風林火山の二階堂瑠美プロ(19試合)とサクラナイツの内川幸太郎プロ(18試合)とBEASTの中田花奈プロ(14試合)の3人だけでした。

均等戦略と言えば雷電ですよ

Mリーグで、各選手を均等に出す傾向が最も強いのは雷電です。
2022年は、300pt超を獲得し伊達プロとMVPの座を争った本田朋広プロの試合数が大きく伸びましたが、今シーズンは元の均等戦略に戻っています。

■Pirates

Piratesは小林剛プロの一強時代もありましたが、2022年にチームをリニューアルしてからは均等戦略を取っています。今シーズンは、チーム内でMVPを争う瑞原明奈プロと鈴木優プロが、一方は出場を抑え、一方は出まくるという対照的なシーズンになりました。

DF戦略とかまだ言ってんの? そろそろアップデートしなよ…

1年前に「ドリブンズ戦略とファイトクラブ戦略を合わせたDF戦略こそが、Mリーグの最適戦略」と書いたときは、「あと10年はこのネタで戦える!😤」と息巻いていたものでした。しかし、最近はどのチームも選手を均等に出す傾向が強くなり、わずか1年で破綻、オワコン、陳腐化……😭

そんな中、朽ちかけたDF戦略の救世主となるチームがありました。

DF戦略の教科書

それが、終盤に8位から5位へ驚異のジャンプアップを果たした風林火山です。風林火山は、ここ数年は、瑠美プロの出場を抑えつつ、勝又・松ヶ瀬の調子のいい方を最も多く出すというDF戦略の教科書のような起用法を行なっています。うおおおお!🤗
2021年のデビュー以来、2年連続で200ポイント超を叩きだしたにもかかわらず、今シーズンは最下位に沈んだ松ヶ瀬隆弥プロのマイナスは大きな誤算だったはずですが、このやり方を続けるかぎり、レギュラー突破は固いのではないでしょうか。

最終20戦のチーム戦略

Mリーグ成績速報(非公式)さんのポスト(2024/02/19)を一部切り抜き

今年のレギュラーシーズンは、96戦中76戦を消化し最終20戦を残した2月19日時点で、上位5チームと下位4チームがそれぞれ3桁のプラスとマイナスにはっきり分かれる格差社会となっていました。

そこから3桁マイナスの下位4チームはどういう起用をしたかというと、風林火山は勝又・松ヶ瀬、BEASTは猿川・大介のダブルエースを多用したのに対して、雷電・フェニックスは各メンバーをほぼ均等に起用していました。選手全員を信じたとも言えますが、頼れる選手がいなかったということでもあったのかなと思いました。もっとも、雷電・フェニックスは最後の数戦は明らかに目なしだったので、なるべく多くの選手をファンの目にふれさせたかったという意図もあったと思います。

DF戦略の世界線ではどうなっていたか?

レギュラーシーズンの最低出場試合数は10試合です。そこで、「成績の悪い選手の出場を10試合に抑え、その分の試合をチームのエースが打っていたらどうなったか?」というIFの想定が「DF戦略の世界線」です。
レギュラーシーズンの場合は、「下位チームがDF戦略を取っていれば、予選落ちを免れていたか?」が焦点となります。

しかし、レギュラーシーズンで敗退した3チームでは、雷電・フェニックスは全員がマイナスであり、BEASTも猿川真寿プロが+28.4ptの微プラスである以外はやはり全員がマイナスでした。そうなると、他の選手の分を削って猿川プロに打たせたとしても、6位のABEMASとの356.6pt差を埋めることはできません。ということで、下位3チームと(風林火山が抜け出したことで)それ以外の6チームの差が大きかった今シーズンでは、DF戦略の世界線においても結果は変わりませんでした。

セミファイナルはどうなるか?

セミファイナルは、Piratesが400ポイント超を持った状態で、4/8(月)から各チームが20試合を戦います。

2021年以降にメンバーを入れ替えたチームが多いので、セミファイナルに残った6チームの2021年以降の選手起用の分散と昨年のセミファイナルの出場数を表にすると以下になります。

ぶっちぎり首位のPiratesは、昨年は鈴木優プロと仲林圭プロのUKコンビを20戦中7戦ずつと多用していましたが、今年はほぼファイナル確定なので、各選手を均等に出しそうです。2位のドリブンズも、レギュラーシーズンを見た感じでは、浅見プロが若干少ない以外は均等に出すんじゃないでしょうか。3位のサクラナイツも、近年は均等に出す傾向が強いです。
一方、4位の麻雀格闘倶楽部は、昨年、寿人プロを多めに出したように偏る可能性があります。5位の風林火山は、レギュラーシーズン終盤に見たように元々偏った起用が多く、6位のABEMASも、昨年は白鳥プロを20戦中8戦に起用していました。そこから、レギュラーシーズンではマイナスに沈んだ下位2チームは、けっこう大胆な選手起用をするのではないかと予想します。

個人的には、今までレギュラー3位以上という恵まれたポイントと(レギュラー4位以内に入ることで)セミファイナル最終日に打てるという有利な条件を生かして、ファイナルに勝ち残ってきたABEMASが、その両方を手放した状態でどこまで戦えるのか、あるいは負けて優勝チームのジンクスがどうこう言われるのか、という点に興味を持って今シーズンのセミファイナルを見ていきたいと思っています。

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