「昼間の町を一緒に歩いて欲しいんだ。なんでもなく、普通に」 「それだけ?」 「それだけ」 白濁(六十二) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/cIJODebR6g
「結衣ちゃん、ほんとうにタケシさんと付き合ってるんだね」 カウンターで隣合わせたアカリさんが、煙草をくゆらせながら言った。いつものように夏の雪を呑んでいた。 白濁(五十二) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/c6HXZTXsT6
「来週行く」「早く顔が見たい」 坂井から短いメールが届いていた。 ずっとほったらかしだったのに、こんなときにだけ何度も連絡してくる 白濁(四十四) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/bRK5o99vkA
裏駅のカレー屋に入った。お昼時なのに、奇跡的にカウンター席が一人分だけ空いていた。お店で一番辛いエスニックカリーを頼む。 白濁(六十六) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/cPaRuzPBKM
ポケットの中で携帯が震えていた。タケシさんからだ。どうにか高橋の靴を脱がせ、畳の上に横たわらせて、かけ直す。 白濁(六十) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/cFxYeOZIT6
タケシさんはなかなか帰って来なかった。 「ちょっと、見てきます」 「ああ、いっといで。タケシさんにはうまく言っとくから」 白濁(五十九) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/cCglWyYz96
「行こう」 グラスを空にすると、タケシさんは私の背中に手を添えた。 「ごちそうさま」 店主に声を掛けて店を出る。縄のれんも看板も、もう仕舞われていた。 白濁(五十八) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/cyO7XrPJfO
「じゃあ俺、行くわ」 坂井は言った。いつもより大きく見開かれた目、無理やりあざ笑うようにに歪められた口。 「俺、あんたにずっと隠してたこと、あるんだわ」 白濁(五十六) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/ctEOIEugOk
きっと、お互いに表面しか見えていなかったんだ。外見だとか、体だとか。それでもずっと恋していた。 白濁(五十五) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/cs6wbBiHsI
「三日間休みを取ったから、最後にその間だけ全部、俺のものでいて欲しい。君が作った料理を食べて、どこにも出掛けずにずっと君の部屋にいたい」 白濁(五十一) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/c4Q0vyzMJO
いやだ、という言うことさえ、ずっと忘れていた。そんなふうに言う選択肢はなかったから。 一度拒否したら、それで終わってしまうと思っていた。 白濁(六十七・最終回) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/cSJh40ALxC
「いざ離婚届ちゃんと出したら、すっげー気が抜けちゃって。さっさとけりつけてすっきりしたいって思ってたの、俺のほうなのにさ。バカみたいね」 白濁(六十五) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/cP6X5Azbr2
「もういいの? 江ノ電とか、大仏とかは?」 「うん、もう充分」 あんまりあっけなかったので訊いてしまった。高橋と並んで歩くのが心地よくなってきていた。 白濁(六十四) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/cNQSFN8aM8
「あ!」 信号を待つ人たちが指さし歓声を上げる。鳥居に並んだ白い鳩の群れが一斉に飛び立ったのだ。拍手している人までいる。ざわざわと粒のように連なる白い群れ。 白濁(六十三) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/cM0DcAyKo8v
高橋を畳に転がしたまま、私はソファーで毛布を被って寝た。 翌朝、青白い顔で目覚めた高橋に水の入ったグラスを手渡す。高橋は喉を鳴らしてひと息に飲み干した。 白濁(六十一) https://mianohara.goat.me/cH4duUClws
店を出て、恐る恐る周りを見渡す。 当然、坂井の姿は無い。 ほっとするのと同時に、胸が詰まる。胸が詰まるのと同時に、なんとも言えない解放感がある。 白濁(五十七) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/cvwp4cXQqY
「俺が仕事をしている間に、あんたはその男とよろしくやってたってわけだ」 久しぶり、とかいう挨拶もなく。昼下がりのカフェにはまったく不似合いな話題だ。 白濁(五十四) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/coJX9hXGoM
「そう。だから、もう家では会いたくない」 「あんた、ほんと最低なやつだな」 き合ってから今までで、一番早く戻って来た坂井のメールだった。皮肉なことに。 白濁(五十三) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/cn85UlK6Z2
坂井に電話をかけた。 短い呼び出し音の後、かすれた声で坂井が「はい」と言った。 「大丈夫?」 白濁(五十) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/c3bgeEqg1i
白濁(四十九) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/c1D2VAmsla
「でもさ、長かったよね。何年?」 哀れむでもなく美里は言った。 「七年」 「なんで結婚しないのかなって思ってた」 「しないよ」 白濁(四十八) - 終わらない夏 @mianohara - g.o.a.t https://mianohara.goat.me/bZSHZKiTIc