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はっきり言って、少々期待外れですらある

初めてのドームに入った透の感想はそれだけだった。

透は曖昧に返答した。

そうして2人は連れだって歩き、目的のゲートへと向かっていった。

(……なんだ、こんなものか)

「8ゲート」と書かれた入り口にたどり着くと、すでに人の流れがドーム内に向かって動き出していた。

透は決然とした面持ちで商品棚の前に立つと、買い物かごから先程投入したばかりの選手名鑑を取り出した。

「これぐらいは大したことないよ」

それに、テレビ中継で見た外野席の応援に尻込みしたという事実もある。

これが男の矜持というものだ。

だが次の瞬間、その感慨も吹き飛んだ。

だが、ここで妥協するわけにはいかなかった。

実際は想像以上に値段が高く、財布への打撃は無視できないものであった。

透は気を良くして、そのまま女神との買い物を続けた。

だがこれは現実だ。

その様子を見て、女神が微笑みかけてくる。

(……ええい、迷っていても仕方あるまい!)

「色んなところからって……」

透は思わず聞き返した。

対して透は、その中に埋もれる選手のことを、誰一人として理解していない。

「えっ、どこからって……そんなのあるの?」

その速さたるや、あたかも一陣の風のようで、透はついていくのに精一杯だった。

それを聞いて、女神はいたずらっぽく笑いながら店の一角を指差した。

「そうかもね。でも、どうせだったらさ……」

透はやや虚勢を張るようにしてそう答えた。

「ほら、早く早く!」

なんとか正気を保って、女神との会話を続けねばならない。

透は胸が一気に高鳴るのを感じた。

合計で5500円だったが、ひとまず透はそのことを考えないようにした。

どうやら、彼女の琴線に上手く触れることができたらしい。

Take Me Out to The Ball Game!! 第62週

両翼100メートル、センター120メートル、フェンスの高さは4.5メートルを誇る人工芝球場だ。

無論、探せばどこかにあるだろうが、今の透の知識でそれを突き止めるのは不可能だ。

先ほど流し見したときには気づかなかったが、この名鑑には一目で選手の格が分かる項目などないのだ。

Take Me Out to The Ball Game!! 第65週

スター選手のユニフォームなのか、ベンチ要員なのかも分からないのだ。

この数日というもの、女神とデートできるという興奮で夜もろくに眠れなかったのだが、昨日に限ってそうはいかなかった。

ユニフォームの種類と数が多すぎるのだ。

指の先にあったのは、彼女が身に着けているのと同じ服、いわゆるレプリカユニフォームの山だった。

「あっちも買わないとね!」

女神はそう答えると、バットを頭の上に水平に掲げる仕草をした。

彼がよく見る気の利かないタイプの夢なら、ここで目が覚めてしまうことだろう。

ただそれだけで、透は天にも昇る気持ちになる。

Take Me Out to The Ball Game!! 第63週

これはもう確実に買うしかないと考え、透はその本をキープし、そのまま近くから調達した買い物かごの中に入れた。

手に取って中身を見てみると、段に分かれた見開きに選手の顔写真が略歴とともに並び、それが200ページ以上に渡って続いていた。

「今日はどんな試合になるかな? 何点取って勝つのかなあ!」

透には会話の内容も、商品の良さもよく分からなかったが、取り敢えず周りをよく観察することにした。

そうして二人は、球場に隣接するグッズショップへと向かった。

正直に言って右も左も分からない今の状況では、素直に従うのが一番だ。