はっきり言って、少々期待外れですらある
初めてのドームに入った透の感想はそれだけだった。
透は曖昧に返答した。
そうして2人は連れだって歩き、目的のゲートへと向かっていった。
(……なんだ、こんなものか)
「8ゲート」と書かれた入り口にたどり着くと、すでに人の流れがドーム内に向かって動き出していた。
透は決然とした面持ちで商品棚の前に立つと、買い物かごから先程投入したばかりの選手名鑑を取り出した。
「これぐらいは大したことないよ」
それに、テレビ中継で見た外野席の応援に尻込みしたという事実もある。
これが男の矜持というものだ。
だが次の瞬間、その感慨も吹き飛んだ。
だが、ここで妥協するわけにはいかなかった。
実際は想像以上に値段が高く、財布への打撃は無視できないものであった。
透は気を良くして、そのまま女神との買い物を続けた。
だがこれは現実だ。
その様子を見て、女神が微笑みかけてくる。
(……ええい、迷っていても仕方あるまい!)
「色んなところからって……」
透は思わず聞き返した。
対して透は、その中に埋もれる選手のことを、誰一人として理解していない。