レモンの積み込みが完了した。 まもなく出港するアルゴ号の甲板上で、アッシュの視線の先には。 「勇者クワンダ。これが序の口なのは、よくご存知でしょう」 心に残る、道化人形の壊れ際の言葉。 「クワンダさん、あなたは一体…?」 「俺はただの助っ人、傭兵だ。この世界ではな」
「ようこそ、シチリアへ」 組織の者が迎えに来た。 「積み込み作業の間、ささやかな宴を用意させて頂きました」 「ご苦労でちゅ」 島内を案内される一行。名目上は、お得意様の接待。だが値踏みされているのは間違いなく。警護のクワンダは意図的にいかつい演技で、周囲に目を光らせた。
「パラディオンだ!」 古き伝承の、都市の守護神像。カラカラの住人たちはシャルロッテを女神の如く仰ぎ見る。 「お前がみんなと紡いだ絆が、街を守った」 クワンダも誇らしげに、相棒を見る。生意気なドヤ顔はいつも通り。後に、この街は「シャルロッテンブルク」の名で呼ばれるようになる。
砂漠の商人に扮し、隊商に加わった一行はバステトの街を目指す。 「あんたら、若いのに大変だね」 「彼らは孤児で、俺が面倒を見てる」 最年長のクワンダは、一行のパパ。遠くを見るのはシャルロッテ。 マリカとアッシュは、一緒のラクダに乗って。 「救世教徒に気をつけな。ヤバい連中さ」
もう滅茶苦茶。ソルフィンの過去を見てるはずだったのに。 夢の中に現れた、謎の怪物たち。 「こいつら、いくら倒してもキリがないぞ」 背中合わせで共闘するクワンダとソルフィン。呆然とするシャルロッテ。 「アッシュの二の舞は御免よ!」 マリカとおばばも駆けつけた。撤退だ。
「あら、その子のおもりかい?」 「ああ。目を離すと、どこへ飛んでくか分からん」 クワンダとシャルロッテの関係を見抜くマリエは、さすがお母さん。 「シャルロッテちゃんは、花も恥じらう15歳でちよ!」 「いや、45歳だ。エルフの血を引いてるから、見た目は幼いがな」
帰ってきたクワンダに、中庭で手合わせを申し込むアッシュ。 「僕が、シモンさんを解放してあげなくては」 火山の噴火を止める時、火口で会った骸骨の剣士。張り詰めた勇者の剣を、冷静に受け流す歴戦の傭兵。 「お前には、重荷を分かつ仲間がいる。忘れるなよ」 仲間あっての勇者だ。
謎多き傭兵クワンダが、初めて素性を明かした。 「エルフの女王が言う通り、俺たちは異世界の者だ」 シャルロッテの夢に出た道化人形が、凍りついた都市の遺跡で氷の魔物を率いて襲ってくる。迎え撃つのは、極光宿す冒険者たち。 「故郷を復興する。困難だが、次の世代に託す礎を築くさ」
筋骨隆々の盗賊ゲニンと対峙する、歴戦の傭兵クワンダ。 ゲニンが赤い宝珠付きの剣を振るうが、クワンダは余裕で回避。 「その剣は、お前を拒むか」 (畜生!振るたび重くなりやがる) 「あれは、ノートル大聖堂から盗まれたものじゃ」 「赤誠のオーブ…間違いありません」
「ずらかるぞ!」 噂の幽霊船に恐れをなし、逃げる海賊ども。 みるみる小さくなる私掠船から、火を吹く人影が飛び出た。 「シャルロッテ、帰るぞ!」 「げげ、クワンダしゃん」 たぶん、保護者なのだろう。密航してまで追ってきた。 「とりあえず、ボクの船で話さない?」