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その2:究極のラーメンAWARD 前編・選考システムについて

2021年9月2日(木)、ぴあ株式会社 中部支社より「究極のラーメン東海版2022」というムック本が発売されました。

この巻頭特集として「究極のラーメンAWARD」(以下「AWARD」)という企画があり、私はその選考委員を務めています。いや、実際には今回で引退しましたので「努めていました」が正解でしょうか。

このAWARDは今回で第10回、つまり2012年に発売された「究極のラーメン東海版2013」から始まった企画で、私は第3回から選考委員に参画、その後8年にわたって務めてまいりました。

引退だの8年間の想いだのは次回に予定している「後編」で綴るとして、前編である当記事ではストレートにそのシステムについて触れていきます。

そもそもランキングは偏るもの🍜

AWARDの選考委員は私を含む5人。先述した通り私自身が第3回からの参画ですのでお分かりかと思いますが、選考委員の面々は流動的です。前年度と全員同じ布陣だったこともあれば(第8回と第9回)、最多で11人(第4回)いたこともあります。

5人では少なすぎるという意見もあれば、多けりゃ良いってモンじゃないという意見もあるでしょう。何なら同じAWARDでも関西版は4人、呼称も選考委員ではなく四天王で、東海3県(愛知・岐阜・三重)を5人で担う我々に対して、4人で近畿6県は大変だろうと勝手に心配してしまいます(笑)。

ラーメンムックのマスターピースである「TRYラーメン大賞」も、前身「TOKYO1週間」期からメンバー・人数ともに動きがあります。もっと言えば、世の中のありとあらゆるランキング(公的機関が実施する「統計」は含みません)は主催者と審査担当の関係性は永遠でないため、流動的かつ偏りがあるのが本来当たり前なのです。

投票のシステム🍜

これは至って簡単、総合グランプリ、新店、醤油、塩…などの部門ごとに1位~6位までを選考委員各自が投票し、それを編集部が集計する、それも5人の投票の合計点数順、たったそれだけの明快なシステムです。私1人が激烈に推しても他の4人から0票であればランキング入りの可能性は皆無ですし、その点に関しては5人が平等の立場です。

但し、AWARD特有のルールとして、
・総合グランプリを獲得すると即殿堂入りになり、翌年から選考の対象から外れる
・1回のAWARDで2部門以上の重賞は不可

の2点があり、先述したTRYラーメン大賞とは異なります。

我々選考委員はこのルールに関係なく投票しますが、編集部が集計結果を整理してランキングを決定します。例えば醤油部門で1位を獲得した店舗が清湯つけ麺部門で2位を獲得していても、清湯つけ麺部門からは外す、といった具合です。既にお手元に同誌をお持ちの方は、改めて見直すと総合グランプリの連覇と部門またがりの重賞がないことがお分かり頂けると思います。

評価するポイント🍜

総合グランプリ、各部門賞のいずれも、味(商品)についてだけでなく、
・店主の情熱
・創意工夫
・業界や地域への貢献度
・他店への影響の大きさ
・今後への期待感
・手法やシステムの斬新さ
・独自性

などを考慮して、総合的に判断して欲しいとの依頼を頂いています。

上記以外にも、個人的に評価すべきと考えているパラメータとして、
・技術的革新性
・一般のお客様への理解度向上のための工夫
・伝統的食文化の掘り起こし
・他ジャンルへの影響度や吸収度
・業界内外への人的ネットワークの幅や太さ
・地産地消への取り組み

なども考慮しています。

また、冒頭で「味」と表現しましたが、ひと口に「味」といっても、
・麺の美味しさ
・麺とスープとの相性
・麺量とスープ量のバランス
(≒麺のすすり易さ)
・すすった時の香り高さ(≒麺の長さ)
・トッピングや薬味の種類とその妥当性
・各トッピングへの仕事ぶり
・包丁仕事の出来
・薬味の辛み抜きの出来
・各パーツの舌ざわりや歯ごたえ
・最後まで食べ飽きせず食べさせる仕掛け

など、パッと思い付くだけでも枚挙に暇がありません。味についての話は各項が1記事分を綴れるだけ語るべき要素が多いため、当記事では列記するのみにとどめます。

何をもって順位を決めているのか🍜

他の選考委員がこれだけのパラメータを気にしているのかどうかは知りませんが、私はこれら全てを考慮して1位~6位の店舗とその順位を決めています。また、どのパラメータを重視し、どのパラメータを重視してないかは、5人いれば5通りあると考えるのが自然でしょう。

個人的に親交のある、TRYラーメン大賞の審査員であるしらす氏まろ氏、AWARD関西版の四天王であるTAR-KUN氏とも、会う度にこういった話を必ずします。彼らも各々に評価基準があり、その基準設定の信念も各々に異なります。

私が重視しているパラメータは、上記のいずれかに該当するにはするんですが、それと併せて「他のエリアから見た時の、東海エリアとして推すべきラーメン」という軸があり、例えば「独自性」というパラメータにおいても、東海エリアの中での独自性よりは、全国的に見た時の独自性が強い方を高く評価します。

これは、私のように全国あちこちのラーメンを食べ歩きをする「同士」に、いつか東海エリアのラーメンを食べに来て欲しい、その時にはわざわざ東海エリアまで出向いた甲斐があったと思える、ココにしかない一杯と出会って欲しい、その想いからです。

さて、結構長文になってしまったのと、ちょうどその想いの部分までたどり着いたので、ここから先は後編である次回に委ねることと致します。次回はズバリ、雑誌つまり「紙媒体としての使命」についての想いを綴る予定です。

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