次世代の分散型ストレージネットワークFilecoin及び関連プロジェクトの解説
1. Protocol Labsのプロジェクト
<未来のWEBに導いたProtocol Labsのブロックチェーン技術>
2016年、IPFS(InterPlanetary File System)はブロックチェーン業界で最も人気のある技術の1つになり、何千人もの開発者から「未来のWEB」だと話題になった。同年、Protocol LabはLibp2p、IPLD、マルチフォーマット、Orbit等のプロジェクトも開始。現在、Protocol Labsでは下記に挙げる主要プロジェクトを運営している。
出典:Protocol Labsホームページ
その中に、最も重要なのはIPFSとFileCoin、及び基盤となるIPLD、LibP2P、及びMultiformatsの関連性であるので、以下では各プロジェクトとそれらの繋がりを説明する。
<各プロジェクトの詳細と関連性について>
IPFSの本質は、コンテンツアドレス可能、バージョン化可能なP2Pハイパーメディアの分散ストレージ及び転送プロトコルである。目標としては、より安全で自由なインターネットを構築するため、HTTP(ハイパーテキストメディアの転送プロトコル)が世に出てから約20年の間に使用された分散ファイルシステムを補完、または置き換えることにある。IPFSを開発する際、Protocol Labsは高度に統合されたモジュール化のアプローチを採用し、ビルディングブロック方式でプロジェクト全体を開発した。その中でIPLD、LibP2P及びMultiformatsの3つのモジュールにより、データ構造の作成やP2Pネットワークの構築、データの暗号化を行っている。一方、FileCoinは基盤になる強力で信頼性の高い分散型ストレージとして、情報の分散化や最適化を行うことで、IPFSアプリケーションのデータに価値を付与する役割を担っているIPFSのプロジェクト「系譜」は下の表に示している。
出典:Protocol Labsホームページ
Mutiformatsは、一連のハッシュ暗号化アルゴリズムと自己記述型メソッドのコレクションであり、ノードIDとフィンガープリントデータの生成を暗号化して記述するために使用されるSHA1 \ SHA256 \ SHA512 \ Blake3Bなどの6つの主流の暗号化メソッドがある。Mutiformatsは既存のプロトコルに基づいて、「値」の自己記述の変換を行う役割を持つ(「値」からそれがどのように生成されるかを知ることができる)。
Libp2pはIPFSコアであり、様々なエクスチェンジレイヤーのプロトコルと複雑なネットワークデバイスに対して、開発者は高速で費用効果の高い、使用可能なP2Pネットワーク層を迅速に確立できる。 Libp2pの主な機能には、ノードの検出と接続、データの検出と送信が含まれる。例えるならば、宅配会社がハブとして荷物を集荷し配達するように、Libp2pを起点として数千のノードとつながっており、データ配布に加えて、データ検索も担当している。
IPLDは変換用のミドルウェアである。これは、既存の異なるデータ構造をフォーマットに統合して、異なるシステム間のデータ交換と相互運用性を高める。現在IPLDは、BTC、ETH、EOSなどの主流のパブリックチェーンのブロックデータをサポートできる。IPLDミドルウェアは、さまざまなブロック構造を配信標準に統合し、パフォーマンスや安定性を心配することなく、開発者にとって高い利便性を保証できる。
IPFSは、これらのモジュール機能を適用し、コンテナ化されたアプリケーションに統合されることで、独立したノードで実行され、誰もがWebサービス形式で使用及びアクセスできるようにできる。またIPFSはオープンソースプロトコルであるため、誰もが様々な開発に無料でIPFSを使用できる。現在、IPFSネットワークのノード数は十分ではないので、IPFSを迅速に普及させ、宣伝できるようにするために、Protocol Labは、IPFSネットワークに基づいてFilecoinブロックチェーンプロジェクトを作成し、IPFSノードに参加してデータを保存するマイナーにインセンティブを与えた。Filecoinはこれらのアプリケーションのデータに価値を付与し、より多くの人々がIPFSを使用できるように、インセンティブポリシーとBitcoinと同様の経済モデルを通じてノードを作成できるようにした。
Filecoinは、IPFSのインセンティブであり、IPFSの価値の伝達を実現し、IPFSエコシステムロジーの発展を維持している。次には詳しく説明する。
2. Filecoinの紹介
Filecoin Documentsの定義によると、Filecoinはファイルを保存するピアツーピア(P2P)ネットワークであり、ファイルが長期にわたって確実に保存されるようにするための経済的インセンティブが組み込まれている。
またFilecoinは分散型ストレージネットワークであるため、それがクラウドストレージをアルゴリズムトレーディング(取引)に変えることになった。このFilecoin市場は、ネイティブプロトコルトークン(Filecoin)に基づいており、マイナーはユーザーにストレージを提供することでFilecoinを取得できる。次に、ユーザーはFilecoinを使用して、データを保存または配布するマイナーを雇うことができる。Filecoinマイナーは報酬を求めてブロックをマイニングするために競争するが、Filecoinのマイニングパワーは効果的なストレージに比例する。つまり、ブロックチェーンのコンセンサスを維持するために制限されているBitcoinマイニングとは異なり、Filecoinのサービスを直接ユーザーに提供する。この設計は、マイナーがユーザーに貸し出すために可能な限りストレージを収集するための大きなインセンティブを提供する。
Filecoinプロトコルは、これらの収集されたリソースを世界中の誰もが信頼できる自己修復機能を備えたストレージネットワークに織り込む。それによりFilecoinネットワークは、コンテンツをコピーして配布することで堅牢性を実現し、コピーの失敗を自動的に検出して修復することができる。同時に、お客様はパラメーターをコピーすることで様々な脅威から守られ、安全を担保することができる。
<高い安全性を持つFilecoinプロトコルのクラウドストレージネットワーク>
Filecoinプロトコルのクラウドストレージネットワークは高い安全性を保つ理由として、コンテンツがクライアント側にエンドツーエンドで暗号化され、ストレージプロバイダーが復号化キーにアクセスできないためである。Filecoinは、IPFS上で実行されるインセンティブレイヤーであり、あらゆるデータにストレージインフラを提供できるため、データの分散化、分散型アプリケーションの構築と実行、スマートコントラクトの実装において大きな役割を果たす。
Filecoinでは、ユーザーはファイルをストレージマイナー(ファイルを保存し、時間の経過とともにファイルが正しく保存されたことを証明するコンピューターである)に保存するために料金を支払う。ファイルを保存したい、または他のユーザーのファイルを保存するための報酬を受け取りたい人は誰でもFilecoinに参加できる。つまり、Filecoinは利用可能なストレージとそのストレージの価格は、単一の企業によって管理されていないのと同時に、誰でも参加できるファイルを保存、および取得するためのオープンマーケットを促進している。
Filecoinには、ブロックチェーンとネイティブ暗号通貨(FIL)が含まれている。ストレージマイナーは、ファイルを保存するためにFIL単位を獲得する。
3. IPFSの紹介
IPFS Documentsの定義によると、IPFSはピアツーピア(P2P)ストレージネットワークと呼ばれており、すべてのコンピューターデバイスを同じファイルシステムに接続するように設計されたポイントツーポイント(P2P)の分散ファイルシステムである。その中でストレージされたコンテンツは、世界中のどこにでもあるピアを介してアクセスでき、情報を中継したり、保存したり、あるいはその両方を行うことができる。IPFSは、ストレージ場所ではなくコンテンツアドレスを使用して、ターゲットを見つけることができる。
IPFSはWebに似ているが、Webは一元化されており、IPFSは単一のBittorrentクラスターであり、gitウェアハウスを使用した分散ストレージである。言い換えると、IPFSは、コンテンツアドレス指定可能なハイパーリンクを備えた高スループットのブロックストレージモデルである。この特徴により、一般化されたMerkle DAGデータ構造が形成され、バージョンファイルシステム、ブロックチェーン、さらには永続的なWebサイトの構築に使用できる。IPFSは、分散ハッシュテーブル、インセンティブメカニズムを使用したブロック交換、および自己認証された名前空間を組み合わせたもので、単一障害点がなく、ノードは相互に信頼する必要はない。
さらにIPFSを理解するには、次の3つの基本原則がある。
①コンテンツアドレス指定による唯一識別
②有向非巡回グラフ(DAG)を介したコンテンツのリンク
③分散ハッシュテーブル(DHT)を介したコンテンツ検出
これらの3つの原則は、IPFSエコシステムを実現するために相互に構築されている。
4. FilecoinとIPFSエコシステムの最近の動き
FileCoinネットワークは、立ち上げ当初からエコシステム指向しており、Web3分野の技術スタック、アプリケーション、エコシステム等に引き続き貢献している。2020年10月のメインネットワークのリリース以来、FileCoinの利用可能なストレージスペースは9EiB以上に拡張し、400以上のプロジェクトがFileCoinエコシステムに入った。継続的な進化と開発により、FileCoinとEthereumのエコシステムは互いに重なり合い、成長を続けている。
ストレージだけでなく、継続的なエコシステム開発に伴い、FileCoinはWeb3.0スタックでの新しい試行と成長も継続的にサポートしている。2021年8月にNEARと協力してスマートコントラクトにシンプルで許可不要のストレージを提供するための第一歩を踏み出した後、FileCoinは、Polygonと協力して開発者らに2つのエコシステム間のWeb3.0の相互運用性を加速するため、FileCoin-Polygonフリーストレージブリッジを立ち上げた。
5. まとめ
Web2.0以降、ユーザーはデータ受信者であるだけでなく、データ生産者でもある。Web3.0では、真に分散型の価値を生み出すネットワークとして、データの限界を打ち破り、データ保存と流通の問題を解決する必要がある。IPFSとFileCoinは、従来の集中型ネットワークストレージ、データセキュリティ、プライバシー、コスト等の問題を解決するだけでなく、ブロックチェーンを3.0ランディングアプリケーションのフェーズに押し上げる。Web3.0時代の継続的な構築により、IPFSとFileCoinの分散ストレージはインターネットの世界に浸透し続け、グローバルなデジタル構築のプロセスを加速している。
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