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新規事業の立ち上げに必要なもの

loftwork社主催のイベント「新規事業の成長に必要なものはなんだ?LION・ANAと考える未来をつくるプロジェクトの育て方」に参加してきました。ライオン イノベーションラボ所長宇野さん、主任藤村さんと、ANA デジタル・デザイン・ラボの梶谷ケビンさんか、多くのヒントをいただいたのでメモしておきます。タイトルにあげた通り、「成長」というより「立ち上げ」の話がメインだったと思います。

まずはライオン イノベーションラボ所長宇野さんのご講演から。コーポレートイメージビデオが提示されたのですが、日常シーンでの変革を予感させ、ワクワクするものに仕上がっているなと思いました。特に印象的なフレーズが、「人を健やかにする習慣を、さりげなく、楽しく、前向きに。」「めんどうを、らくちんに。」「わざわざを、いつの間にかに。」「やらなくちゃを、やりたいへ。」このさりげなくとか、いつの間にかとか、これらのワードから人々の日常、または、自然のあり方を崩さず、新しい価値を提示する姿勢に感じられ好感をもちました。

イノベーションラボは発足から1年経ったところで、現在24名の研究員が所属しているそうです。従来の組織と異なる特徴として、「既存事業はやらない」、「メンバーは起業家になる」があると。既存事業をやらないのは、他の事業部から頼まれる技術開発をやりたくないからで、確かにそんな頼まれ仕事を請け負っていたら、新規事業に割く時間も無くなると思う。でも、かなり勇気のある宣言だなと。請負仕事をこなしていれば、社内でのプレゼンスは保てるわけで、余力で新規事業に取り組むこともできるのに。あえて退路を断つことで、自分たちの裁量を確保しつつ、新規事業ネタを量産する、本気度が強く感じられました。

「起業家になる」も、最初はメンバーから起業家って何ですか?という反応だったそう。でも、事業開発のプロセスの中でベンチャー企業と協働すると、自然とメンバーにも起業家マインドが身についていったとのこと。OJTのいい形だなと。いくら研修や自己啓発だとかやっても決して変わらないと思われますが、必要に迫られて社外の異分野(異文化)の方と協働することで、マインドまで影響を受け変わってしまう。もっと外を知り、もっと外と組んで、もっと外から学ぼう。

イノベーションラボの取り組みはこちらのインタビューコーポレートHPでも説明されていますね。

次に、ANAについてですが、AVATAR事業の話でした。事業概要はニュースリリースに述べられてる通りです。昨年からXPRISE で賞金レースをスタートさせてるんですね。プロジェクトチームは数名とのことでしたが、動かしてる資金規模の大きさに驚かされると共に並々ならぬ本気度を感じました。

それにしても、なぜAVATARなの?ってとこですが、分かりやすく説明してくださいました。飛行機などの航空機を利用している人口は、世界人口の6%にとどまるそうです。航空機という手段では、その6%の取り合いになってしまうので、残りの94%を取りに行く手段を求めていたと。そこで最初は量子レベルでテレポーテーション可能という事実から、人体でもできるんじゃね?というアイデアが出たそうです。XPRISEに人体のテレポーテーションを提案したときには、冷ややかな反応だったようですが、面白がってくれた人が一人いて、世界中の研究者に繋いでくれたそうです。それから研究者とディスカッションするうち、原子をテレポーテーションするにもあと100年かかるそうで、さすがに人体のテレポーテーションは諦め、代替手段を考えた結果AVATARに行き着いたそうです。

ぶっ飛んだアイデアでも、臆せず提案することで道は開けるものだなと思いました。ただ提案する場も重要でしょうね。XPRISEのような思想的に多様性のある場でないと、一分の可能性もないんだろうな。

また、ANAというと飛行機という先入観をもつのですが、創業時は、ヘリコプター2機から始まっているそうです。「世界をつなぐ」という経営理念も創業から現在まで続いているそうで、経営理念に立ち返れば事業創出において、飛行機という前提を置く必要はなかったとのことです。これは、経営者にAVATAR事業を説明する際も「使える」そうで、「AVATARの方が創業者の理念に沿っていますよね」と話すと納得感を得やすいそうです。これはLIONの方も確証のない収益性を詰めるより、コンセプトをさらに上位概念に引き上げてストーリーを作る。そうすると、創業者の理念に立ち返ることがあるということで、同じ趣旨のことをおっしゃっていました。経営者と提案者、どちらが上位概念で考えていますか?という問いかけに持ち込むと。経営者心理をうまくつかんだ説明の仕方だなぁと思いましたが、後で考えると、新事業を社内提案する際の必須要素なのではと思わされました。簡単に儲けられる話なんて、もはやこの世のなかにないわけですから。

「すぐは儲からない」ということは、両社の経営者は当然了承済みであるとのことでしたが、一方で「ちゃんと進んでいるよ」はしっかり見せていく必要があるそうです。ANAの場合は、以下のリリース文から伺える通り、活動の幅と動きの量がハンパない感じです。

「大分県にある世界初のAVATARテストフィールドで、宇宙開発・農林水産業・観光・教育・ 医療など、様々な分野で実証実験を実施していきます。代表的な取り組みとして、JAXAを含む産官学と連携し、AVATARによる月面施設の遠隔建設等の地上実証を行い、宇宙開発・利用を推進していきます。」

LIONも24名の人員ですが、社内起業家としてあればあるだけアイデアを出し実行するという方針のもと、数十のアイデアを現在進行形で検証し、今年2つのアイテムについて上市するそうです。過去にプロジェクト期間もあったものの、イノベーションラボ創立1年でここまできてることに驚かされました。

イベントの終盤には、「このムーブメントをいかに続けるか」に議論の焦点が移っていきました。LIONでは、イノベーションラボの共有価値をロフトワークと共に作り上げていったそうです。ロフトワークは世界中のクリエイターとのコネクションを保有しており、ワークショップやアワードを通して様々なアイデアや気付きを得て、共有価値を磨きあげていったそうです。今では、ラボメンバーや各テーマをつなぐベースの考え方になっているそうです。こういうのって、参加メンバー同士でポジティブな方向でのアイデアの壁打ちが連鎖していくので、アウトプットそのものよりも、プロセスの効果のほうが重要なんですよね。新たな気付きや共感を積み重ねるプロセスが、自分たちの向かう先に自信を深めるというか。これも新事業創出に向けたチームアップに重要な要素だと思いました。

数十テーマも進めていると、どこでスタックするのか分かるようになったり、いろんな判断を促すことができたりして、イノベーションプロセスでの改善点が見えつつあると。また、特段のルールもないなかで、テーマの進捗状況に見合うリソースを調整できないなど、運営に課題がでてきており、そこで、メンバーに専門分野を設定し、その範囲で自分のテーマや他人のテーマに参画するルールを定めたそう。他に、イノベーション組織開発に先行しているパナソニック社とディスカッションし、インセンティブ、オーナーシップ、セーフティネットをキーワードに、自社にとって適切な落とし込みを模索しているところだそうです。

以上、ざっとメモがてら自分の考えも交えてまとめてみました。新事業のローンチにおいては、「ビジョナリー」、「手数を増やすこと」、「社外へ発信し、進んで協働すること」が、少なくとも必須要素として腹落ちしたところです。

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