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【詩】夜の砂漠は光

ずっと誰かの地獄を眺めることで生き延びてきました。
だから僕の地獄で誰かが生き延びることができるなら、少し分けてあげてもいっかなって、そう思うんです。そうやって、誰かの栄養になって巡っていくなら、あ、よかった、僕らも食物連鎖の環の中に入って、役に立って死んでいける。君の命も、新しく誰かを産むことなく、バトンをつないでいける。価値ある命だ。意味があったと、言ってもらえる。

僕の住むワンルームからドアの外へ、砂漠が侵食している。

人が死ぬことは星が滅びることの縮図。
君の中に根を張っていた山脈。君がその中に湛えていた海。砂漠。そこで暮らしていた沢山の命。息づいていた無数の人々。それらは全て、君の死に引っ張られて消え去ったんだ。
そして君の起こした超新星爆発は、しばらくの間あたりを明るく照らすだろう。君は光そのものになって、多くの人がその輝きを見るだろう。
砂漠の夜空にはいつでも星が輝いている。
でも光そのものになった君にはもう実体が無くて、もう僕たちが言葉を交わすことは無い。
僕たちが触れ合うことは、もう無い。
そんなの嫌、意味ないそれじゃ、光るのやめて降りてきて、って僕が言っても、もう僕たちが言葉を交わすことは無くて、届かない言葉は一粒の砂も揺らさず風の中に消える。
君は僕のことも自分のことも全部忘れてしまって、夜空でただ光っている。
だから僕は今日も寝転んでそれを眺めるだけだ。

君はずっとそうなりたかった。光になって、誰かの中で永遠になって、片隅を静かに照らしたいと願っていた。その夢は今、たしかに叶いつつある。

超新星爆発の光は約100日程度で消え去るらしい。
約100日。
人々が輝きを見失う時間。
約100日。
それは充分な時間なのかもしれない。
それは適切な時間なのかもしれない。
約100日。
わからないけど。

だからそれを超えて永遠に夜空で輝き続けるためにはどうしても砂漠が必要だったんだよ。
砂漠の夜空にはいつでも星が輝いている。
僕は今日も寝転んでそれを眺めるだけだ。

永遠が風に舞う。
砂になって輝く。
一緒に二度寝をした朝。
永遠だった。
深夜のコンビニ。
永遠だった。
君が貸してくれたTシャツ。
永遠だった。
砂漠にはいくつもの永遠が隠されている。
手首の傷痕とキス。
永遠だった。
帰りの電車、駅のホーム。
永遠だった。
僕がパソコンに向かう、となりで君は本を読んでいる。
僕が歌集を読む、君は黙ってそれを見て待つ。
永遠だった。
砂漠にはいくつもの永遠が隠されている。

僕の住むワンルームからドアの外へ、砂漠が侵食している。
砂漠の夜空にはいつでも星が輝いている。
僕の住むワンルームからドアの外へ、砂漠が侵食している。
砂漠にはいくつもの永遠が隠されている。
僕の住むワンルームからドアの外へ、砂漠が侵食している。
砂漠の夜空にはいつでも星が輝いている。
僕の住むワンルームからドアの外へ、砂漠が侵食している。
砂漠にはいくつもの永遠が隠されている。
僕の住むワンルームからドアの外へ、砂漠が侵食している。
砂漠の夜空にはいつでも星が輝いている。
僕の住むワンルームからドアの外へ、砂漠を侵食している。
砂漠にはいくつもの永遠が隠されている。
僕の住むワンルームからドアの外へ、砂漠が侵食している。
砂漠の夜空にはいつでも満天の星が輝いている。
いつか、
その中から君を見つけるのに苦労するようになれば良いと思う。
僕は今日も寝転んでそれを眺めるだけだ。

もう誰も、砂漠に置き去りにするな。
きっと永遠だよ、誰かの。
もう誰も、砂漠に置き去りにするな。

僕の永遠はもう終わったから。
終わったけど、それは永遠だから、ずっと残ってるんだよ。
死なないでね。

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