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『ダンキラ!!!』霧山おぼろに影響を与えたパルクールとは。己と向き合い壁を超えるために

4月28日は少年ダンサー育成ゲーム『ダンキラ!!! - Boys, be DANCING! -』に登場する霧山おぼろの誕生日。
武術ダンスを得意とするチーム・三千世界のメンバーで、蹴り技やアクロバティックな動きに定評がある。

すぐれた技術や能力を持つおぼろだが、なかなか自信が持てない性格。
それでもダンキラへの思い入れは強く、日夜練習に励んでいる。

そんなおぼろに秘められた背景を知るために、これまでも好物のおしるこなどに着目して考察をしてきた。しかしまだまだ探りたい要素は山ほどある。

たとえば、おぼろの趣味であるパルクールだ。
おぼろはダンキラ以外にも、ブラックテールを名乗りトレーサー(パルクールのパフォーマー)として活動することがある。

実はパルクールの成り立ちや精神は、知れば知るほどおぼろの性格そのもの
今回はそんなパルクールがおぼろに与えた影響を考察してみたい。

※本考察には、おぼろのキラートリック習得ストーリー、および光国とのソウルリンクストーリーの内容が一部含まれる。ネタバレを回避したい場合は、お手持ちの『ダンキラ!!!』を起動することをおすすめする。
また、『ダンキラ!!!』は現在もオフライン版が配信中。完全無料で楽しめる少年たちの熱いストーリーをぜひ楽しんでほしい(ダイマ)。

※このnoteは個人が趣味で書いたものであり、公式等とは一切関係ない。

パルクールは生き延びるための手段

パルクールは身ひとつで障害物を乗り越えていくスポーツ。
屋根、壁、段差などを軽々と飛び越えて駆け抜ける姿が話題を呼び、動画サイトや映画のアクションシーンでも注目を集めている。

危険なイメージを持たれることのあるパルクールだが、もともとは20世紀初頭にフランス軍で行われていたトレーニングが起源。無茶な動きを要求するものではない。
むしろ窮地に立たされても安全に生き延びるために心身を鍛えることが目的だった。

フランス軍のトレーニングをさらに進化させたのが、1939年にフランス領インドシナに生まれたレイモンド・ベル
幼いころに戦争で父を失ったレイモンドは、戦火の中で生き延びられる可能性を少しでも高くしようと、深夜にこっそりとフランス軍の障害物コースを使ってトレーニングを重ねていた。

終戦後フランスに帰国したレイモンドは軍で教育を受け、消防士として人々の命を守った。
少年時代から続けていた障害物コースでのトレーニングはレイモンドの糧となり、己の命を守り、他者の命を救うための手段として大いに役立ったといえよう。

レイモンドはこれまで実践したランニング・木登り・障害物などのトレーニングを「Le parcours」と呼称しており、これが「パルクール」の名前の由来となった。

息子のダヴィッドは父からトレーニング方法を教わり、友人たちとパルクールのパフォーマンスグループ「Yamakasi」を結成。エンターテインメントとしてのパルクールを世界に広めた。

1998年にチームを去ったダヴィッドたちは、自分たちのパフォーマンスを「Parkour」と呼びはじめる。
その後パルクールに焦点を当てたドキュメンタリー映画などが作られると、日本でも注目が高まり、パルクールのチームや専用のパルクールパークなどが生まれた。

より速く、より安全に、より効率的に身体を動かして危機的状況から逃れるための手段だったパルクール。
それはいつしか人々を魅了するエンターテインメントとしての側面も持ち合わせるようになった。

ここでおぼろがパルクールを始めた理由を思い出してみよう。
おぼろは周囲や自分の気持ちから逃げるための手段として、パルクールに取り組んでいた。
しかし練習を続けるうちに当初の目的は影を潜め、ときには困っている人をパルクールを活かして助けることも。
ヒーローのように高く評価されても練習を怠らず、自分のパフォーマンスを磨き続けている

そんなおぼろが歩んできた道は、パルクールの歴史にも似ているのではないだろうか。

ちなみにアクロバティックな動きを取り入れたパルクールは「フリーランニング」と呼ばれる場合もある。
おぼろはアクロバット技の練習にも頻繁に取り組んでいることから、どちらかといえばフリーランニングに近いパフォーマンスを見せているのかもしれない。

誰かに勝つことが目的ではない

パルクール最大の特徴は、対戦スポーツではないこと。
世界大会などが開かれることもあるが、それは例外的な場面だといえよう。

パルクールの根本的な理念は、安全に危機を回避する能力を向上させることや、自己の限界を知り克服することなど。
そこには他者との競い合いは含まれない。

ひたすらに自己と向き合い、恐怖心に打ち勝って前に進んでいくことが、パルクールの目的なのである。

おぼろも幼少期から光国とともに源覚心流武術の稽古に励んでいたが、大会では試合前に泣き出してしまうこともあった。
また、他者と比べては「なぜこんなこともできないのか」と親から厳しく言われることもあったという。

おぼろが抱いていた恐怖心や劣等感は、並大抵のものではなかっただろう。
そんなときに出会ったのがパルクール。
自分の心に向き合い、ひとつひとつの動きを習得していく過程は、おぼろに前を向くことを教えてくれたのかもしれない。

また、パルクールでは仲間を大切にする気持ちや、最後までトレーニングを貫くことなども理念に掲げられている。
途中であきらめそうな発言をすることの多いおぼろだが、練習は決して投げ出さない
三千世界メンバーや、趣味で育てている植物たちにもやさしさを見せている。
今のおぼろを形作るために、パルクールは欠かせない存在だったといえよう。

ちなみにおぼろのキラートリック「あすなろ合掌足」にも、パルクールの要素が含まれている。
パルクールを取り入れた新しい競技「チェイスタグ」だ。
こちらは対戦型のスポーツで、狭い敷地内にさまざまな障害物を置き、20秒間の鬼ごっこをする。
団体対抗戦だが、フィールド内に立つのは各チーム1人ずつ。1対1の白熱したバトルが見どころだ。

最後まで全力で駆け抜けるための持久力はもちろん、相手の動きを読む力や一瞬で最適なコースを判断する力なども求められる。
ダンキラに必要な能力とも似ているため、キラートリックの着想を得るきっかけとなったのもうなずけるだろう。

おまけ:キンモクセイとキラートリック

おぼろのキラートリックといえば、「キンモクセイ」も欠かせない。

キラートリックではおぼろが高く宙に飛び上がり、手を差し伸べながら降下する。
あたかもキンモクセイの花が降りそそぐような美しい光景は、オーディエンスからの評価も高い。

しかしキンモクセイの木はそれほど背が高くはない
最大20mほどにも成長するサクラに比べれば、5~6m程度と控えめ。
花が散るときも、風に乗って花びらが舞うというよりは、軸ごと地面に落下する。
ではなぜキラートリックでは、幻想的にキンモクセイが空中を舞っているのだろうか。

ここでヒントとなるのが中国の逸話である。
中国ではかつて、キンモクセイ(桂花)は月に咲く仙木(せんぼく)だと考えられていた。

ある日、月で暮らす天女の嫦娥(じょうが)は下界の湖にきらめく月光の美しさに感銘を受ける。
そこで舞を披露し、夫の呉剛(ごごう)が合いの手を入れた。このとき呉剛が打ち鳴らしたのが、桂花の幹である。
すると花や種が地上に降りそそぎ、以来桂花は地上でも芽吹くようになった。

月からキンモクセイが舞い落ちる様子は、キラートリックの光景を思い出させる。
おぼろもキラートリックを考えたとき、こうした逸話が脳裏をよぎったのかもしれない。

さらに余談ではあるが、白ワインにキンモクセイの花を浸して作る桂花酒(桂花陳酒)という飲み物もある。キンモクセイは酒と出会うことで、新たな魅力を引き出されたのだ。

おぼろのルームメイトである椿聖人の実家は酒屋で、自身も酒にちなんだ名前を持っている。
ならばゴールドハイムの106号室で過ごす時間はきっと、おぼろに大きな成長をもたらすに違いない。

参考
https://parkour.jp/about-parkour/
http://jpf-parkourfederation.jp/parkour/
https://www.redbull.com/jp-ja/difference-between-freerunning-and-parkour
https://pkm.tokyo/pages/parkour
https://parkouracademy.jp/parkour/
http://seeds-lab.jp/project/parkour/
http://wct.jp/
https://www.shuminoengei.jp/
https://tenki.jp/suppl/kous4/2020/10/09/30020.html
https://www.tsu.ac.jp/Portals/0/research/10/P041-054.pdf
https://kotobank.jp/word/%E6%A1%82%E8%8A%B1%E9%99%B3%E9%85%92-759924

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