見出し画像

『ダンキラ!!!』キャラはダンスの擬人化?考察すると見えてくる意味付け

ハマった作品の関連知識を探るのが好きだ。
もともと研究者気質なのか、沼に落ちたらとことんまで底を覗いてみたくなる。
過去にも『ヘタリア』の影響でドイツ語を始め、ドイツ留学までして現地での生活を確かめたことがあった。

そんな私が今もっともハマっている作品が『ダンキラ!!! - Boys, be DANCING! -』だ。
リズムゲーム要素のある少年ダンサー育成ゲームだが、キャラクターの設定やストーリーの奇抜さがいい。
もちろん読み進めるだけでもじゅうぶんに楽しいが、最近ダンスの歴史について調べて気づいたことがある。

――『ダンキラ!!!』のキャラクターは、ダンスそのものを擬人化しているといえるのではないか。

名前に隠されたヒント

「ダンスを題材にした作品なのだからそんなのは当たり前だろう」と思われるかもしれないが、予想以上に関連が深い。

たとえばジャズダンスを得意とするチーム・シアターベルは全員が酒にまつわる名前をしている。

八神創真はインド神話における酒もしくは神を指す・ソーマ
椿聖人清酒のたとえ(しかも実家は酒屋であり、弟の賢人は濁り酒の意味を持つ)。
そして三木望神酒(みき)。

チーム内で共通点が見つかると「なにこれエモい」と感じるのがオタクの性であるのだが、ここからさらに踏み込んでみよう。

禁酒法とジャズの関係

ジャズ、ひいてはジャズダンスが生まれた時代に目を向けてみる。

1920年代のアメリカで広まったジャズ文化は、禁酒法と密接な関係がある。
工場における労働効率など諸々を改善するため、政府は1920年にアルコールの製造・販売を禁止した。「ボルステッド法」という名前を世界史の授業で聞いたことのある人もいるだろう。

酒の価格は高騰し、簡単に飲める代物ではなくなってしまった。しかし酒好きの人間が簡単に禁酒できるはずもなく、闇市場での取引が横行する。密輸・密売を担っていたのはマフィアだ。
そのため当時のアメリカでは、マフィアが取り仕切る闇酒場が秘密裏に流行した。

酒場で欠かせないのが、酒と肴、そして雰囲気を盛り上げる音楽。ここでジャズの登場である。

多くのジャズミュージシャンが、闇酒場で音楽を披露した。次第にジャズに乗せて軽快なステップを踏む人々が表れる。
動きのルーツは黒人文化にさかのぼることができるが、ジャズ音楽と融合したことで「ジャズダンス」と呼ばれるジャンルが誕生した。
束縛の時代におけるエンターテインメントのひとつが、ジャズだったといえるだろう。

その後ジャズダンスはより広義でとらえられるようになり、音楽のジャンルに関係なく、エンターテインメント性の高いダンスに進化していく。
ミュージカルやテーマパークのショーで目にするダンスも、ジャズダンスの一種なのである。

ダンスそのものを象徴するキャラクター

ここでシアターベルについてもう一度考えてみよう。
酒にちなんだ名を冠する彼らのモットーは、非日常(エンターテインメント)を提供すること
ジャズダンスを中心に観客を魅了し、学生寮では定期的にバーを開催する(ドリンクはもちろんノンアルコール)。

しかも彼らの趣味は映画、ジャズピアノ、ミュージカルと、どれもアメリカにおける「黄金の20年代」を象徴するものばかりだ。
シアターベルはジャズダンスの歴史そのものを見事に体現しているというほかない。

ほかのチームと得意なダンスの歴史を比較してみても、なかなか興味深い事実が見えてくる。

武術ダンスを得意とする三千世界は「武と舞の関係性」から考察することができるし、ヴォーグダンスを得意とするTOXICはチームを意味する「ハウス」について調べるとメンバー3人の関係性がわかりやすくなる
これらについては解説すると長くなるので、また別の機会に。

考察するよろこびを与えてくれる作品

「『ダンキラ!!!』のキャラクターは、ダンスそのものを擬人化している」と冒頭で述べた。
あくまでも一個人の考えではあるが、この仮説はあながち間違っていないのではないだろうか。

もちろんストーリーですべてが語られるわけではない。しかしプロフィールや作中での役割など断片的な情報を手がかりに関連する文献を紐解き、考察する余地がある。

作中では椿聖人が「伝説のキラートリック」を発掘することに情熱をそそいでいる。
同じように、私たちもダンスについて調べることで、『ダンキラ!!!』におけるまだ見ぬ深淵を探求するよろこびを感じられるのだ。これはとても粋な計らいだと思う。

一見トンチキに感じる設定も、背景を探れば意味を持つかもしれない。
『ダンキラ!!!』に隠された謎について、みなさんも語り合ってみてはどうだろうか。

※この記事はあくまで個人が趣味として書いたものであり、公式とは一切関係がないことをご承知おきいただきたい。


『ダンキラ!!!』公式サイト
https://www.konami.com/games/dankira/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?