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『ダンキラ!!!』若草ゆかりが栗ご飯を好むのはなぜ?詩吟・武術・月との関係性

本日9月18日は少年ダンサー育成ゲーム『ダンキラ!!! - Boys, be DANCING! -』に登場する若草ゆかりの誕生日
詩吟の宗家に生まれ、中学1年生にしてダンキラ協会公認サウンドクリエイターとしても活躍する「音の神童」だ。

そんなゆかりが好んでいる食べ物が栗ご飯
中学生にしては渋いチョイスだと思い、関連しそうな項目を調べてみると、詩吟でも親しまれているとある作品が目に入った。
さらに栗について深堀りしていくと、寮のルームメイトである月光院ノエルとの共通点らしきものも浮かび上がってくる。

今回は栗ご飯に注目しながら、ゆかりに秘められた要素を探っていこう。

※このnoteは100%個人の趣味で書いたものであり、公式等とは一切関係ない。

栗と重陽の節句

栗ご飯といえば秋を感じられる料理のひとつ。
旧暦の9月9日、つまり重陽の節句には栗ご飯を食べる風習があった

邪気を払い不老長寿を願う重陽の節句だが、収穫祭としての意味合いも込められている。
秋は米などの農作物が収穫を迎える季節。庶民の間で行われていた秋の収穫祭は、やがて重陽の節句と結びついた
このとき好んで食べられていたのが栗ご飯。桃の節句のちらし寿司などのように、昔はお祝いのための料理だったのだ。
栗ご飯を食べる風習にちなみ、重陽の節句は「栗の節句」とも呼ばれている。

故郷を想う詩

重陽の節句にちなんだ作品は、詩吟の世界にも残されている。
たとえば王維の『九月九日憶山東兄弟』(九月九日山東の兄弟を憶う)。
唐代三大詩人のひとりに数えられる王維が17歳の頃、故郷を懐かしんで詠んだ漢詩だ。

九月九日憶山東兄弟
独在異郷為異客
毎逢佳節倍思親
遥知兄弟登高処
遍挿茱萸少一人
(王維『九月九日憶山東兄弟』)

王維は15歳のときに故郷を離れ、京で役人を志す。
科挙の試験に合格し、官吏として登用されたのは21歳の頃。長い間試験に向けて勉強に励みながらも、なかなか里帰りができない寂しさを感じていた。

そんな時期に詠んだとされている詩が『九月九日憶山東兄弟』。
重陽の節句の今日、家族はいつものように高台へと登っているだろう。私だけがその場にいないのだ」と、異郷の地で家族を想っている気持ちが伝わってくる。

いつ受かるともしれない試験に向け、ひとりで努力をし続けるのは並大抵のことではないだろう。ましてや十代の若者ならなおさらだ。
未来への不安や孤独など、17歳の若者ならではの葛藤が見事に表現されており、王維の代表作のひとつとされている。

詩吟の宗家出身であるゆかりなら、『九月九日憶山東兄弟』を知っていてもおかしくはない。不安を感じたときや、行事食である栗ご飯を口にしているときに思い返したこともあるだろう。

若くして才能を発揮し、サウンドクリエイターとして、そしてダンサーとしても成長しようとしているゆかり。
実力不足を感じ、ダンキラチーム“三千世界”の足を引っ張っているのではと、悩みをひとりで抱えこんだときもあった。
しかしゆかりのそばには、幼いころから同じ時間を過ごしてきた仲間がいる。
故郷に帰らずとも頼れる存在がいたことが、ゆかりと王維の違いだといえよう。

武術と栗と三千世界

ここまで重陽の節句について見てきたが、話を栗ご飯に戻そう。
栗ご飯に使われている栗は、武術とも関連が深い食材である。

戦国時代、栗を用いた「搗栗(かちぐり)」という兵糧があった。
栗を天日干しして水分を抜き、臼でついてから渋皮と殻を取り除いて作る。
臼でつく工程を昔は「搗(か)ち」と呼んでいたため、「搗栗」と名付けられた。

また、「勝ち」と響きが同じため縁起がいいとされ、戦国武将たちは験担ぎのために「勝ち栗」と呼んだ。

ゆかりが所属する三千世界は武術の動きを取り入れたダンスを得意とするチーム。
メンバーは全員源覚心流武術をたしなんでおり、「武」の世界を身近に感じている。
そんなゆかりが「勝ち」を招く縁起物の栗を好んでいるのは、偶然ではないのかもしれない。

栗と月の関係性

ゆかりが過ごしているのは、特待生専用寮“ゴールドハイム”の310号室。ルームメイトは中学3年生の月光院ノエルである。

日本では古来から、栗と月を結びける場合があった

月といえば月見。日本には月の形に合わせていくつもの呼称が存在しており、とくに十三夜を「栗名月」という。
十三夜の月見では栗や豆を供える風習があったことから、栗名月と呼ばれるようになった。

なじみが薄いかもしれないが、実は十三夜は十五夜と並ぶ名月
どちらか片方だけを眺めることは片見月といわれ、縁起が悪いと信じられていた。
つまり十三夜の月と十五夜の月はセットで見るよう推奨されていたのである。

ここでゆかりとノエルの年齢を思い出してみよう。

2人ともすでに誕生日を迎えているものと仮定すると、ゆかりは中学1年生なので13歳。ノエルは中学3年生であることから、15歳だ。
奇しくも十三夜や十五夜に共通する数字がぴったり当てはまる。

つまりゆかりとノエルは2人がそろって初めて完全なものになるのだと、隠れ310号室推しでもある筆者は主張しておきたい。310号室はいいぞ。

ちなみに十三夜は、時期によっては十五夜よりも満月に近くなるときもあるという。
ダンキラの実力では遥かに上を行くはずのノエルがゆかりに一目置いている理由は、使用人としての腕前だけではないのかもしれない。

仲間と切磋琢磨し合いながらダンキラの道を究めていくゆかり。
これからどんな姿を見せてくれるのか、ますます成長が楽しみだ。

参考
https://www.suzukake.co.jp/saijiki/4264
http://www.kangin.or.jp/assets/img/learning/yukyu/pdf/yukyu_008.pdf
https://www.fugetsudo-ueno.co.jp/oedo_fukei_32.html
https://www.daimaru-matsuzakaya.jp/osechi/chishiki15/
https://weathernews.jp/s/topics/201802/220075/

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