Investment Science と 金融工学

　Investment Science とは、直訳すると「投資科学」ですが、同名書籍である "Investment Science - David G. Luenberger" の邦題は「金融工学」となっています。

「金融工学入門 第2版 デービッド・G.ルーエンバーガー」 https://www.amazon.co.jp/dp/4532134587/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_B9RxFbNR5QGPJhttps://www.amazon.co.jp/dp/4532134587/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_B9RxFbNR5QGPJ

金融工学入門 第2版

もちろん、訳者は書籍の中でその理由について説明しています。投資の科学なのに、金融の工学なのは、どうしてでしょうか。しかし、私も、確かにこれは工学だと思いました。

例えば、これは Google の今日の株価チャート(図)です。

拡大してみましょう。

お解りの通り、これは直近 24時間の株価の変動を示しています。あなたはこのグラフをどのように見られるでしょうか。私は、音声などの低周波信号をオシロスコープなどで拾って、スナップショットを撮ったところによく似ていると思いました。音声などの低周波信号であれば、普通、FFT(Fast Fourier Transform: 高速フーリエ変換)などで分析します。お解り頂けるでしょうか。つまり、ひとつの信号を複数の周波数成分に分けるのです。フーリエ級数です。思い出したでしょうか。取り敢えず、話を進めましょう。ここではヒューリスティックに行きます。そう、直感的に見て下さい。そうすると、大きなひとつの波（青色で描いた線）が見えてきます。

金融工学では、このようにお金の動きを数値解析していきます。近似グラフを描いて、その近似式を作ることによって数値解析が可能になると、この先の変動を予測することができるようになります。

このグラフにはもう一つ、小さな波も見えると思います。

最初の大きな波の 1/13 程の周期の小さな波です。ですから、こう言うことができます。

プログラムで表すと分かりやすいでしょう。

double f(double x){

    double sum = 0;

    sum = sum + sin(x);
    sum = sum + sin(13*x);

    return(sum);
}

簡単ですね。グラフに出力すると以下のようになります。どうでしょうか。だいたい、いい感じではないでしょうか。もはや、これはお金ではありません。工学です。　※グラフ描画には "Wolfram Alpha" を利用すると便利です。

https://ja.wolframalpha.com/input/?i=plot%5Bsin%28x%29%2Bsin%28x*13%29%5D%2C%7Bx%2C0%2C2*PI%7D%5D

plot[sin(x)+sin(x*13)],{x,0,2*PI}] - Wolfram|Alpha

こうして近似式ができると、前述の通り、数値解析が可能となります。例えば、一階微分するとグラフの傾き、つまり、お金の増える（減る）速度が分かります。二階微分するとグラフの加速度、つまり、お金の増える（減る）加速度が分かります。すごいですね。

もう少し、この Google の株価の変動を見てみましょう。先程は直近 24時間の動きでしたが、今度は直近 5日間の動きです。

そうすると、先程よりも緩い波が見えてきます。5日間で 1回位の周期の波でしょうか。これも加えると、近似式の正確さが増しそうです。そしてお気づきのように、少しづつ下がっているように見えます。Google の株価は下がっているのでしょうか。では、10年以上の期間の変動を見てみましょう。

すると、そうです、右肩上がりです。ですから、こう言うことができます。

直近 5日間では少しづつ下がっているが、長期的に見ると一貫して上がっている。2015年には 500 USD 程だったのが、5年後の 2020年には 3倍の 1500 USD にもなっている。

最後に

　ここまでで、"Investment Science" が「金融工学」と訳されている理由を理解して頂けたことと存じます。お金と考えると興味を失うかも知れませんが、音声や低周波信号の工学的数値解析と考えると、俄然、やる気が起こってくるのではないでしょうか。しかし、先にもお伝えした通り、熱力学第二法則やニュートン力学の通用しない世界です。ある時突然、デフォルトしてしまったり、理論上は無限大になっても、上限があります。物理の世界でマイナス値は、単なる極性の変化・基準値からの相対的な値を示しているに過ぎませんが、金融工学では、マイナス値は別の意味を持ちます。

以上