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お笑い第7世代は「どつき」からの脱却なのか?──否定しない漫才の今っぽさ

M-1グランプリ2019。あぁ、これ審査員好きそう、なんて穿った目で見てたけど、もうぜんぜん笑ってだめで、とにかく面白かったミルクボーイ。チュートリアルの「チリンチリン」を見たときの腹のよじれを思い出した。ナイツ塙の99点は最後の1点に芸人の矜持を感じてしまったのもよかったな。

審査員のコメントにもあったけど「平和な漫才」ってフレーズが心に残ってる。ぺこぱは最たるものだろうけど、インディアンスやミルクボーイも、どちらかの落ち度を厳しく突っ込んで落としていくんじゃなくて、許容しながら進行させる展開に変化がある…?これは去年の霜降り明星もそうか?

でも、今回のM-1のツッコミの変化は、ここ最近に取材で聞いた平成世代の起業家や会社員たちの価値観と、ちょっと通じるところがあると思ってる。

優勝のミルクボーイはテレビと現場とで温度感ちがいそうで、現場のほうがもうミルクボーイを見るだけで面白い、みたいのがあるのかもだけど、たしかに面白かった!1本目のインパクトがあったし、中川家礼二さんの「令和にふさわしい」も象徴的。

で、ミルクボーイは「お前の母さんイカれてんな!」とは(たぶん)言わなかった。「そういう可能性もあるよね、でもそれってモナカ or コーンフレークだよね」と探り続けていった。これはぺこぱも同じ。

相手を面白い言葉で許容して否定せずに探る。そこに炎上SNS時代の面白さみたいなものを見た気がした。

今更だけど、実は「お前の母さんイカれてんな!」みたいな言葉の強さを、僕は心のどこかで悲しく思っていたんだと気付かされた(※うちの母はイカれてないです)。

そいつらがイカれてる、お前はだめだ、何を言っているかわからない、という拒絶のツッコミがつらくなっている。

サンドウィッチマンが今、人気ナンバーワンなのも、このバランス感覚の上にいると思った。ツッコミで伊達さんが怒ってるように見えるけど、それは富澤さんの失礼や勘違いを正しているだけで、相手を落としているわけじゃない(メニューは足元にございます→なんで下にあるんだよ)。

千鳥や天竺鼠くらい「幻想とのギリギリを攻めているキャラクター」なら現実世界のツッコミとして「何を言ってるかわからない」と返すのはあり得る(千鳥のすごいところは、ノブさんの現実的なたとえツッコミでうまく緩衝材を置いてくれる)。でも、なまじ「ありえる」場合のツッコミとは。

そこで、「お笑い第7世代はどつき漫才からの脱却では?」という話になり、思いつきだったけど、実は一つの観点かも。

YouTubeでネタ見直したら、例えば、納言はレッテル貼りの否定からの肯定(「口説いてくれ→危ないな」からダメ女を肯定)で、EXITは相手の間違いの軌道修正(「光×光で音だな→遅くなってんじゃん」)。…怒ってない!

すゑひろがりずとEXITの掛け合わせが見たいので、来年も楽しみです。

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