興奮のファーストシーズンを超えてしまったら問題

あわただしく日中を過ごして、夜の対談取材を終えて、編集担当のNくんとサウナに寄る。すでに時刻はてっぺん間際。ふたりとも仕事が詰め詰めで顔が暗かったのだけど、「だからこそ今はサウナで、眠くなるから酒を飲まずにやりきろう」と誓い合ってイン。

サウナ、水風呂、休憩を3セットやる基本コースを過ごしていると、多少なりとも体も気力も復活。入ったサウナが3時間コースだったので、そのままふたりとも施設で仕事の続きをする。とはいえ、ぼくは限界が来てしまい、そのうち1時間近くは寝ていた。

帰りながら、ビジネスホテルの「東横イン」が見えて、ぼくはウェブ記事で見た「東横インが好きすぎる彼氏に、東横インのジオラマをプレゼントした彼女の話」を思い出して、それを話した。

https://togetter.com/li/681841

うろ覚えだったので今思い返すと内容も異なっていたんだけど(好きすぎる彼氏がジオラマを作ったと話してしまった)、Nくんはそのエピソードを知らなかったそうで、へええ、と驚いてくれる。

「でも、それだけの熱量をかけられるものって、昔はあったよね」

と、Nくんは言う。わかる。とあるトレーディングカードが欲しくて、友達と隣町のショップまで興奮しながら自転車を飛ばした姿がよみがえってきた。

彼はある女性声優さんの大ファンだけれど、ファンイベントや、それこそ仕事の取材でお会いしてみると、それまでの興奮がひと段落したという。言葉を借りれば「興奮のファーストシーズン」が終わったのだ。

昔はあったよね、という寂しがり方をしているように、ここのところのぼくらはそれを欲していて、いかにして「セカンドシーズン」を始めるのか、あるいは始められるのかについて話した。

これと言った成果はないまま、ともすると「新しいファーストシーズン」を始めることしかできないのかもしれないとも考えた。もし、ぼくらがいま将棋を始めれば、羽生善治さんに会うだけで震えるに違いない。

じゃあ、羽生さんに会ったら?

つまり、この「興奮のファーストシーズン」には人を変えるほどの力があるが、それが過ぎた後の楽しみ方を覚えない限りは、ひたすら遊牧し続けないといけなくなるわけだ。それはなかなか、たいへん。

セカンドシーズンの過ごし方は、案外、難しい。

#日記 #コラム #エッセイ

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