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緊急時の対応は平時からしか生まれないのかな。「コロナ禍における日米のNPO」を読んで

もうすぐで1月が終わりますが、相変わらず時間が経つのが早く感じます。

先週は2020年12月に発売された柏木宏氏著「コロナ禍における日米のNPO」を読了したので、特に関心をもったところや考えたことを少しまとめていきます。

「アメリカのNPOの4割が消滅するという衝撃予測」

ニューヨークのCandidというNPOが7/15に発表した報告書では、最悪のシナリオでは、調査対象となったNPOの38%にあたる11万9517団体が消滅する可能性があるとのこと。そもそもコロナ禍出なくとも4%は減るとされているため、コロナ禍の影響が大きいことがわかる。もっともあり得るシナリオでも11%が消滅する可能性があるとのことで、7%がコロナ禍の影響となる。日本のデータは未リサーチですが、いろんな方のお話を聞いていると、それなりの数が減ってしまいそうな予感はする...
↓Candidによる報告書
How many nonprofits will shut their doors?

緊急時のNPOの役割とは。

「私たち(NPO)はいつも非常事態の解決に取り組んでいる」
本には書いていませんが、誰かがどこかでこのようなことをお話していて、NPOの活動の特性を端的に説明しているように思い、とても印象深く記憶に残っています。

2月頃から徐々に国内でもコロナの脅威が報道され始めましたが、自治体レベルで最初に武漢を支援し始めたのは大分市らしいです!というのも、1979年から武漢市と大分市は友好都市が締結されたことをきっかけにさまざまな交流を行ってきたそうです。その背景から、マスク3万枚を提供したとのこと。こんな支援が行われてたとは知る由もなく、グッと武漢を身近に感じました。(ちなみに僕は大分市には住んでいませんが隣町なので。)

コロナ禍という非日常の中でNPOがどのような役割を求められて来たのか。
終章で述べられていたこの文章が、コロナ禍、だけでなく平時におけるNPOの役割をも説明してくれていると思いました。コロナ禍では、限られた条件でいつもよりスピードが求められたのかと思います。

NPOは、ともに「公共」を担う行政と比較した場合、活動の領域の限定性や先駆性などの特徴を持つ。これに対して、行政の事業は、教育や福祉、環境など、人々の生活の多様な部分に及ぶ。法律に基づいて行動するため、新しい課題や少数者のニーズには対応しにくい。​(「コロナ禍における日米のNPO」p.195より引用)

第2章を通して、実態調査による現状把握と、いち早く支援を届けることが大事だと思いました。「NPO法人フローレンス」や「NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」、「NPO法人放課後NPOアフタースクール」などが現状調査を行っていたことが紹介されています。メディアや地方自治体が行うアンケートからは漏れてしまう状況を、支援する対象が絞られているがゆえに、団体が活動に必要な情報を集めることができる。またその結果を世の中に公表することで、アドボカシーにつながる。起きている問題を世の中に知ってもらうことが一つの大きな役割なのでしょう。狭い市場の中で、先駆性をもって活動する団体がNPOの特性でもあるため、発信することで、社会課題と認められ、法律をもうけて社会保障となっていく。

とある団体のアドボカシーの事例が紹介されていました。緊急事態宣言後、全国の子ども食堂が中止せざるえなくをなりました。「せんだいこども食堂」ではこの状況を打開するために、宮城県と県議会へ要望書を提出し、実情を訴えたそうです。その結果、再開支援や食事の配送費として県からの支援金を増やすことができました。目の前の課題を知っているからこそ、それをしっかりと社会に発信する役割が緊急時において重要な役割となるのでしょう。

考えたこと:コロナ禍において、各NPO自身も運営の危機に直面していると聞きます。そのため、支援対象者に支援を届ける以前の課題があり、解決できずに活動を中止せざるをえない団体も多いと思います。実際に会うことが憚られるコロナ禍では、団体スタッフの高齢化が進んでいる団体はオンラインに対応するのが難しいという声も聞きます。緊急時にどう支援を継続していくかも含めて、どれだけ変化に対応して活動や組織を柔軟に変えることができるのかが団体運営において一つ重要な視点かと思いました。

僕は令和2年7月豪雨の被災地を支援するために「おおいた・おカワリ プロジェクト」という非営利プロジェクトに関わっているのですが、情報発信や、ニッチなところを支援する仕組みの必要性をとても感じました。災害が起きた際に普段よりも突然困る人が増えてしまうわけですが、その情報はなかなか伝わりません。メディアは発災から1ヶ月くらい経ったら報道数はどんどん少なくなっていくし、行政を通しての支援は時間がかかってしまう(もちろん例外はあると思うが)。「災害が起きた!支援を始めよう!」ではなく、発災する前から支援の体制を整えて置く必要があると思いました。

国や地方自治体から非営利組織への支援の柔軟性がまだまだ足りていない

タイトルにもあるように日米のNPOの動向や、NPO対象の施策について紹介されていました。浅はかな疑問ですが、アメリカには調査機関が多いがゆえに現状把握とアドボカシーのパワーが大きく、NPO向け施策を国が実施する流れが起きやすいのかな?と思いました。

第6章「舞台芸術活動へのコロナ禍の影響」の中で、日本の芸術系団体が抱える資金面の課題に興味を持ちました。「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭(KEX)」のコロナ禍の影響について詳しく紹介されていました。KEXは予算の90%を助成金や補助金で賄われているそうです。助成金の多くは採択年度内に予算執行する必要があるそうなので、コロナ禍によって舞台が延期などになれば、準備期間の費用は差し引くことができるが、未実施部分の助成金は変換する必要があるとのこと。「実行委員会」形式がゆえに単年度予算で縛られている状況もあるらしい。そのため、剰余金を確保するのが難しく運営継続への影響が大きそう。(参照p.141、p.142)

また、第7章で説明されていますが、助成金にはいくつか種類があります。

* 活動助成:特定の活動に限定した助成金
* 運営助成:不特定多数の活動や組織の運営費全般に使用できる助成金
* キャパシティ・ビルディング:組織の活動や運営能力を強化するための助成金
* キャピタル・キャンペーン:建物などの不動産の購入資金に充当される助成金
(p. 180より整理)

普段でも「活動にしか助成されないから組織力をアップできないんだよね」という声を聞くからしても、活動助成がおそらく多くてとりやすいんでしょうか。アメリカでは、運営資金に使うことも認められている場合が多いらしいです。日本では持ち出しの資金で活動する地域根付く団体が多いと思うのですが、人材不足などのリソース不足がなかなか解決されない負のサイクルを断ち切れないように思います。

アメリカではフォード財団を中心に、3月中旬に助成金の制約を一時的に緩和する発表を行った。これによって、活動助成を運営助成に切り替え、助成金の支払いの前倒し、資金の払い戻しを求めないなどを決めたとのこと。
↓がその誓約。
A CALL TO ACTION: PHILANTHROPY'S COMMITMENT DURING COVID-19

どうすればリソースが非営利組織に循環するのだろうか

非営利組織は「公共」の一助となる役割と社会から求められていますが、まだまだリソースが足りていないと思います。

最近、本を読んだり、ありがたいことに中間支援を行う方々とお話をさせていただく中で、まだまだ仕組みやサービスが足りておらず、課題がなかなか解決されていない現状を垣間見ているような気がしています。

「公共」云々ではなくとも、目の前で困っている人たちや信念のために活動を継続したり、問題を解決するためにはリソースが必要なのは違いないので、自分もリソースの循環に一助できるように成長していこうと思う今日この頃です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。だらだらとして文章で申し訳ございません🙇‍♂️

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