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20周年公演へ向けて#20 ラーメンズ

まずは、僕の自己紹介をさせていただきます。僕は小学校からの幼なじみとお笑いコンビ「クレオパトラ」をしながら、劇団エンニュイを主宰し、劇場運営などもしています。相方の桑原は普段ゲーム会社でゲームクリエイターをしています。僕はこれまで、吉本新喜劇の台本を書いたり、アニメのシナリオを書いたり、参加型の推理芝居を作ったり、街を使った謎解きイベントを作ったり、QRコードで芸人のコントを展示してコントインスタレーションを作ってみたりと様々な表現をしてきました。去年は、青森の八戸のパフォーマーフェスで参加型のコントを公演したり、福島県立いわき総合高校の演劇表現系列の卒業公演の作演出を担当したりと表現の場を広げています。
コンビとしては、二人芝居をしたり、即興単独公演をしたりと表現を模索しています。
では、ここから本題に入ります。


芸人の間では、世界観のあるお洒落なライブをすると「ラーメンズ目指してんの?」ということを言われる。その言い方は、褒めではなくトゲのある感じなことが多い。

何故か芸人の間では「ラーメンズ に憧れている」というのはタブーだった。今はわからないが、僕の世代はそうだった。

僕は昔からアートワークにはこだわってきた。予算がない頃から自腹で、カメラマンさんやデザイナーさんにお願いしていた。最初は、中身で勝負しろよとか、ラーメンズ みたいとか言われた。その頃は、他の芸人がみんな手書きとか適当に後輩作家に作ってもらった白黒のコピー用紙丸出しのフライヤーを配っていた。僕らは自腹でプリントパックに頼み上質紙でフライヤーを作っていた。スタジオを借りて撮影もしていた。ヒグチユウコさんや西島大介さんなどの有名なイラストレーターの方にもお願いしたりした。今では、フライヤーに凝るのは当たり前になってきているが、あの頃は理解されづらかった。

正直言うと、僕は初単独をやるまでラーメンズさんを観たことがなかった。初単独を終えた後、ラーメンズさんぽいと言われるコントがあって、そのあとビデオを借りて観た。そこからは、ラーメンズさん、バナナマンさん、シティーボーイズさんなど東京のコント師の方々のビデオをひと通り観て勉強した。

僕はそもそもお笑いよく知らない。ずっと画家か漫画家になりたかった。そんな中、学生時代人を笑わすことが楽しくて仕方なくて笑わす為に色々なことをしていた。帰りのホームルームで、僕の考えた脚本で人気者の明るいクラスメイトとキャラがあるけど目立たないクラスメイトを混ぜて出演させ、僕が演出して出し物をしていた。その為に音を録音してきたりと、かなり時間を割いた。話題になり他のクラスの生徒も観にくるようになった。その時も、漫才とコントの違いもわからない状態だった。ボキャブラ世代だったのでボキャブラでやっていることがネタだと思っていた。

そんな僕がお笑いを本気でやりたいと思ったきっかけは、ダウンタウンの松本さんが作ったビジュアルバムを観た時だ。これだと思った。パッケージのカッコ良さ、オープニングのお洒落な感じ、音楽も良いし、映像の撮り方もカッコ良かった。その中でも「システムキッチン」と「診察室にて…」というコントが心を揺さぶった。この2つのコントはコンビのみでやっている。しかも、内容はほぼ即興だ。即興なのに、映像がカッコいい。笑い声も入っていないから、観ている側の笑う場所も誘導しない。こんな作品をいつか作りたいと思った。内容だけではなく、プロモーションの仕方にもワクワクした。甲本ヒロトや立川談志など様々なジャンルの方にコメントをもらっていたのだ。この時の感覚は、未だに僕を形成している。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/HITOSI_MATUMOTO_VISUALBUM

そんなお笑いのことをよく知らない僕が上京してNSCという吉本のお笑い養成所を卒業する時にこの雑誌が発売される。これを読んで僕は興奮した。お笑いの可能性に。

そして、この雑誌でラーメンズさんの記事を読むことになる。

デビューし、色々と模索したが吉本のピラミッドを上に上がる為にどんどんわかりやすいネタをやるようになっていった。しかし、初単独公演の時にそれまでの鬱憤を晴らすようにやりたいことを全てぶつけた。そこでスイッチが入ってしまった。アンケートには、映像を撮って欲しいという文字がたくさん書いてあった。ビジュアルバムから全ては始まったのだから当然だった。そのあと、脚本を書き始めたりと、変わったライブをたくさんしてきた。お笑いという表現の幅を広げる為に。そんな表現を売れていない人気もない僕たちが事務所で続ける限界がやってくる。そして、事務所を退社。そこからは更にどんどんやりたいことをやった。結果ファンはほとんど付いてきてはいない笑 突っ走りすぎた。

そんな僕たちは、よくラーメンズさんと比較される。確かに公演写真だけ見たらぽく見えるのかもしれない。しかし、僕はビジュアルバムのシステムキッチンのように即興なものを作りたくて作り続けている。完璧に作り込まれたラーメンズさんとは真逆だ。

共通点といえば、演劇的な手法と美しい世界観だろう。僕は劇団も主宰していて、脚本演出のお仕事もちょくちょくいただいている。そこで得た表現方法をクレオパトラでも使っている。ラーメンズさんも、演劇的な手法にマジックやパフォーミングアーツなどの手法を混ぜて独自の表現を作り上げている。照明の使い方などの美しい舞台の作り方も共通していると思う。演者の力だけではなく、音楽や照明を使って立体的に舞台を表現する。僕らも照明には力を入れているし、音楽は毎回生演奏でやっている。

そして、最大の共通点は、抽象度だと思う。小道具を使わなかったり、物語のバックボーンを語りすぎなかったりと、観客の想像力を使って作品を完成させるところが一緒だと思う。こんな無名の芸人がラーメンズさんと一緒だというのもおこがましいですが。

最初の話に戻るが、お笑い界ではラーメンズさんを目指すのは一種のタブーとなっている。しかし、ラーメンズを目指したい芸人はたくさんいる。でも、このお笑い界のシステムの中でラーメンズさんのように活動することは難しい。だから僕はそんな芸人達が胸を張って世界観をだせる表現をできる土壌を作ろうと日々模索している。そこには、コント・漫才に並ぶ新しいジャンルがあると思う。芸人には馬鹿にされるが僕はお笑いは芸術だと思ってやっている。思っていても口に出すことは粋ではないとされる芸人の世界だが、口に出して改革していかなければいけないところまで来ている気がする。

新しい世代が、演劇的な手法を取り入れたコントをしていると騒がれていてもワクワクはしない。何故ならそれは演劇的な見せ方を模倣しているだけであって、演出というものまではいけていない。やはり、ラーメンズさん以降そういう芸人は出てきていない。何故なら、みんな「コント」というものに魅了されているからだ。しかし、小林賢太郎氏が言ってる「コント」と芸人が言ってる「コント」はおそらく違う。だからみんなバナナマンさんと東京03さんを目指す。お笑いを追求したい人のコントと、芸術性/エンターテイメント を追求したい人のコントとでは違うのだ。これは趣味の違いなので、どちらを目指してもいいと思う。東京03さんは多人数でやったり生演奏を入れたりとエンターテイメントととしてのコントも追求している。コントはコントでも色々なコントがあって自由なのだ。だからこそ、ラーメンズさんを目指す人達が肩身が狭いのは良くないと思う。お笑いは、多ジャンル化するべきだ。キングオブコントでどぶろっくさんが優勝した。R-1で自作ゲームをプレイして野田君が優勝した。コントと漫才では括れなくなってきている。

ラーメンズさんをお笑いとして括らなかった時からお笑いの表現の進化は止まっている。しかし、今ある括りの中でのテキストと技術はどんどん進化している。今の若手の人達のネタはみんな凄いと思う。あと数年で漫才とコントは成熟しきるだろう。そうなった時に漫才とコントは古典となりなにか新しいジャンルができるべきだと思う。漫才とコントは普遍的で凄いものだ。メインストリームにずっとあるべきコンテンツだと思う。だからこそ、音楽や他のジャンルのように細分化されていくべきだと思う。そして、それは徐々に進んでいる。同業者同士が新しい試みを認め合い先に進めたら面白くなってくると思う。

何故こんなことを書いたかというと、ラーメンズさんのことはずっと書きたいなと思っていたというのと、ラーメンズさん好きの方々に僕らを知って欲しかったから。中身は違うので、お口に合わない方もいらっしゃるかと思うが、今現在ラーメンズさん以外でこんなに演出や表現方法にこだわっているお笑いコンビはいないと思うので一見の価値はあると思います。僕たちは、この表現の道筋をこれからの面白い若手の人達に残していかなければいけないと思っています。しかし、それにしては集客がなさすぎる。もっと知ってもらう動きをしなければいけないと思い今回この文を書きました。一人でも興味を持ってくれる方がいてくれたら嬉しいです。僕の作る世界観が好きな方は必ずたくさんいるはずです。これから出会えたらいいですね。劇場でお待ちしております。

今までの公演ギャラリー

https://clepat.amebaownd.com/pages/67738/page_201506221648#&gid=1&pid=24

クレオパトラconteLIVE#1『剥き出しな利己主義』
https://youtu.be/LC8qurB8XUo

クレオパトラ二人芝居『私ト彼』
https://youtu.be/RQnBxwuzTK4

第10回単独公演「イシツナギ」ダイジェスト https://youtu.be/I8nVNMiGB7E

単独公演「産声シャンデリア」ENDコントダイジェスト
https://youtu.be/_hFr9AfdIC8

3月21.22日に、conte LIVEがあるので是非お越し下さい。みなさんが想像するコントライブではありません。ミュージシャンのグルパリ君をゲストに招いて、3人でみなさんが見たことがない、お笑いライブでもあり、演劇でもあり、それでいて何でもない公演です。体験しにきてください。口では伝えられないものなので。

クレオパトラconte LIVE#2
『無駄な期待』
会場:HANA RE 恵比寿

3月21日
開場:17:45 開演:18:00

予約

https://tiget.net/events/85601

3月22日

●1公演目
開場:14:15 開演:14:30

●2公演目
開場:17:45 開演:18:00

●アフタートーク
開場:20:15 開演:20:30
90分ライブ予定
チケット:1000円

予約

https://tiget.net/events/85603

全公演チケット2500円
出演:クレオパトラ
ゲスト:グルパリ

台本:クレオパトラ
演出:長谷川優貴(クレオパトラ/エンニュイ)

クレオパトラの新作コントライブ!

クレオパトラwebサイト

クレオパトラ OFFICIAL WEBSITE
https://clepat.amebaownd.com/

YouTube
クレパトチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCc04F4hWxN_rYiCaJo7-eGA

Instagramクレオパトラ公式 (@clepatworks)
https://www.instagram.com/hase_0616/




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