レトロアクティブ(第2話)

 内閣総理大臣専用車中。
「総理、志木大臣が至急の面会を求めております。防衛省にお越しいただきたいとのことです」
(中国の動きに何かあったのか)。台湾が中国に併合されてから6年が過ぎていた。その間、時の首相が最も繁茂に接触したのは防衛大臣だった。閣議でも中国問題が語られない日はなかったが、首相が防衛省に出向いた時は例外なく悪い情報を聞くことになる。
「今日は予定が詰まっている。概略だけ聞かんと他の予定はキャンセルできんぞ」
「とにかく至急とのことです」
 首相の西田は一瞬逡巡した。公にはなっていない重大事などは防諜対策が万全な防衛省特殊作戦室で聞くのが通例だった。例えば航空自衛隊の最新鋭機F3が中国軍機に撃墜された件…
「分かった。午後の予定は全てキャンセルして防衛省に向かってくれ」西田たちを乗せた車は防衛省へと行き先を変更した。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?