見出し画像

当事者と支援者の認識のズレ -不登校の要因に関する児童と保護者、教員の認識調査から-


2024年3月25日の日経新聞電子版の記事「不登校の要因、認識にずれ 子ども・教員など調査」によると、文部科学省の委託調査の結果、不登校の児童生徒、保護者、そして教員間で不登校の原因についての認識に大きなズレが存在していることが明らかになっています。この調査は、大阪府吹田市、広島県府中市、宮崎県延岡市、山梨県で行われ、22年度に小学3年生から高校1年生までの不登校の児童生徒239人を対象に実施されました。

調査結果の詳細

調査によると、児童生徒や保護者は「いじめ被害」や「教職員からの叱責」を不登校の主要な原因として挙げており、その回答割合は教員のそれと比較して6〜8倍もの大きさでした。また、児童生徒と保護者の60〜70%が「体調不良」や「不安・抑うつ」といった心身の不調を要因として挙げているのに対し、教員はこれを20%弱と低く見積もっています。

一方で、学業の成績が振るわないことや宿題が完成していないという点については、三者間で認識のズレが少ないことがわかっています。

教育界の認識と対策

このような認識のズレは、児童生徒が抱える問題を学校側が十分に理解していないことを示していて、より効果的な対応策が必要であることが強調されています。文科省は、不登校の児童生徒の支援のために、公立小中学校の空き教室を活用した「校内教育支援センター」の設置を増やすことや、ICTを活用した早期対応の必要性を指摘しています。

今回の調査を行った研究所の所長は、「教員が把握できる範囲には限界があり、そのことを前提に議論する必要がある」と述べており、一人一台配備された端末を利用した健康観察などを通じて、さらなる対策の検討が進められています。

障がい当事者と支援者の認識のズレ

このような関わりの中での認識のズレはなぜ起こるのでしょうか。それぞれ年齢や経験、立場や役割が異なるため、相互がすべてを把握することはそもそも無理ですが、教育やサービスを提供する側がその受け手のニーズを把握することはとても重要なことです。

以前、ご紹介した障がい者と支援者には次のようなズレがありました。

支援者が考えるニーズのトップ3:
・社会適応
・行動技能
・社会技能
→社会性の障害と捉えている?

Bagatell, N. (2010). From cure to community: Transforming notions of autism. Ethos, 38,

当事者のニーズトップ4
・アレルギー
・意図しない体の動き
・胃腸の不調
・感覚に対する過敏
→社会との関わりより体のことが気になっている?

Bagatell, N. (2010). From cure to community: Transforming notions of autism. Ethos, 38,

このように、支援者側は当事者は社会に適応するための支援にニーズあると考えているのに対し、当事者の実際のニーズは自分の体に関することがほとんどでした。

当社の放課後等デイでも認識にズレ

当社が、当社の放課後等デイサービスに通う保護者にアンケートを行った中で、サービスのニーズについての回答で、最も多かったのは「預かり」でした。当社のスタッフは「療育」や「支援」のニーズが高いものと期待してにも関わらず、保護者は「うちの子は学校でも頑張っているので放課後デイに来ても頑張らせる必要はありません」といった趣旨の保護者が多いことが印象的でした。

「療育」や「支援」が、子どもたちを頑張らせるだけのものではいけませんし、「生きづらさ」を解消するためとか、「将来のため」といった目的を押し付けることも違います。

しかし、「預かり」がとても大切なニーズであることを理解しつつも、それだけでは放課後等デイサービスの存在価値を大きく損なうとも言えそうです。

最後に

子どもたち本人のニーズ、保護者のニーズを話し合いを基盤に十分に行って、「預かり」としてそのニーズを機能させながらも、子どもたちの負担を考慮しながら「生きづらさ」に一緒に対応していくというスタンスを取ることが必要なようです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?